AIに学習させたくないが、AI検索には載りたい。この矛盾する要望に、業界がようやく共通の物差しを出し始めた。
4社が足並みをそろえた中身
Thurrottの報道(10月30日)によると、Anthropic、Google、Microsoft、OpenAIは、サイトがAI学習へのオプトアウトを共通の形で表明できる仕組みを支持した。IETFのワーキンググループが作った仕組みで、検索インデックスやアーカイブとは切り離して扱われる。実装時期は、Anthropicが実装済み、Google・Microsoft・OpenAIが2027年とされる。記事の筆者は、各社がこれまで大規模に収集してきた経緯から、効果は象徴的にとどまるとの見方を示している。
背景として、IETFのAIPREFワーキンググループの草案解説は、用途を「基盤モデルの学習」「AIの出力への利用」「検索(出典へのリンクと原文抜粋が条件)」の3種類に分けて考える方針を示している。ただし同ブログはこれを合意のない提案段階と明記しており、最終仕様ではない。
Microsoftは「学習」と「グラウンディング」を分ける
実務で最も具体的なのが、Bing公式ブログの発表だ。設定は2つに分かれ、どちらも初期値は許可となる。
- 学習: robots.txtで
User-Agent: usage_ai-trainingにDisallowを指定する。メタタグやX-Robots-Tagヘッダーでページ単位の指定も可能で、ページ単位が優先される - グラウンディング(回答の根拠としての利用): ページ単位のメタタグまたはヘッダー(
ai-grounding:)のみ。Allow、DisallowExtended(Copilotなど自社サービスのみ許可)、Disallowの3段階
スケジュールは次のとおり。
- 2026年12月15日: Bing Webmaster Toolsで一時的なグラウンディング設定を受け付け開始(
NoArchiveまたはNoCache利用サイト向け) - 2027年2月1日: 新しい設定がクロールに応じて反映開始
- 2027年3月1日: 準備期限。
NoArchive/NoCacheは学習に対しては無効になる。両者を使うサイトで一時設定を登録しないと、そのページのグラウンディングは許可扱いになる - 2027年9月30日: 一時的なグラウンディング設定が失効
Bingは、これらの設定でBing検索への掲載資格は変わらないとする一方、グラウンディングを禁止すればCopilotなどAI体験での露出が減ると明記している。掲載や流入を保証するものでもない。
考察: 「出す・出さない」から「どこまで使わせるか」へ
3つの含意が見える。
第一に、AI対策の指標が分かれる。 学習拒否はブランド保護や権利の問題、グラウンディング許可は露出の問題だ。両者を同じ「AIをブロックするか」で議論すると、判断を誤りやすい。
第二に、2027年3月1日は、NoArchiveを長く使ってきたサイトの地雷になりうる。 従来の意図が学習拒否だった場合、期限後は効かなくなる。ここは今のうちに洗い出したい。
第三に、日本のメディア・EC・制作会社の対応は割れる。 記事や商品情報を資産と考える媒体は学習を拒否しつつ検索系への露出は維持したいはずだ。一方、露出を最優先する中小サイトは許可のままで合理的だ。どちらが正解かは事業モデル次第であり、Google側の具体的な実装が出るまで全体の判断は確定しない。
運営者の棚卸しリスト
- 自社サイトで
NoArchive/NoCacheを使っているページを洗い出し、意図が「学習拒否」か「キャッシュ表示の制御」かを分けて記録する - robots.txtの現行ルールを確認する。クロールをブロックしていると、許可設定をしても読まれない
- 会員限定・有料コンテンツと、集客用の公開コンテンツで方針を分ける
- 2026年12月15日以降のWebmaster Toolsの運用担当を決め、2027年3月1日までに設定を完了する
制度はまだ過渡期で、今回の合意も各社の実装待ちだ。ただ、設定の棚卸しは実装を待たずに始められる。