2026年7月14日(火)
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電通デジタルが10種のAIエージェントを実戦投入——「マーケターの仕事の6割がAIに代替可能」時代の生存戦略

電通デジタルが「∞AI Chat」を「AI For Growth Canvas」にリブランドし、戦略立案からメディアプランニングまでをカバーするAIエージェント群を本格展開。海外ではKana AI($15M調達)やDevotionなどのスタートアップも台頭し、マーケティングAIエージェント市場は470億ドル規模に成長。一方で「マーケティング業務の65%がAI代替可能」との予測もある。本記事では、日本の3大広告グループの戦略を比較しながら、AIエージェント時代のマーケターに求められる能力の転換を論じる。

WebTech Journal 編集部

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「AIエージェント」と呼ぶからには、何かが違う

4月1日、電通デジタルは対話型AIソリューション「∞AI Chat」を「AI For Growth Canvas」にリブランドし、マーケティング業務を横断する専門AIエージェント群の本格提供を開始した。戦略立案エージェント(STP分析の支援)、メディアプランニングエージェント(予算配分からキャンペーン配信まで)、エグゼキューションエージェント(アクションプラン提案と配分最適化)など、リサーチから実行、分析・PDCAサイクルまでの全工程をカバーする構成だ。

ここで注目すべきは「エージェント」という言葉の選択だ。従来の「AIツール」が人間の指示に対して出力を返すものだったのに対し、「AIエージェント」は目標を与えられると自律的にタスクを分解し、必要な行動を計画・実行する。IABの2026年展望レポートによると、広告代理店の3分の2が広告買い付けとキャンペーン実行における「エージェンティックAI」に注力しているという。

日本の3大広告グループ、それぞれの賭け方

電通デジタルだけではない。日本の広告業界全体がAIエージェント競争に突入している。

博報堂テクノロジーズは「Branded AI Agent™」を展開。ブランドの人格を持ったAIエージェントが消費者と対話し、インサイトを獲得しながら行動変容を促す仕組みだ。また「New CX READY」プラットフォームでアプリのインターフェースを「操作型」から「対話型」に転換する取り組みも進めている。

サイバーエージェントはさらに踏み込んだ目標を掲げている。2026年中にSNS動画広告の完全AI自動生成を実現し、2028年までには要件定義から本番デプロイまでの開発プロセス全体をAIで自動化する「レベル4」の開発成熟度を全プロダクトで達成するとしている。エンジニアの50%にAI活用能力を持たせる人材育成も並行して進めている。

三社三様のアプローチだが、共通点がある。いずれもAIを「ツール」ではなく「チームメンバー」として組織に組み込もうとしていることだ。

海外スタートアップの攻め方

この波は大手だけのものではない。2026年に入り、マーケティングAIエージェント領域で注目すべき資金調達が相次いでいる。

2月にステルスから登場したKana AIは、Mayfield主導で1,500万ドルのシード資金を調達した。創業者のTom ChavezとVivek Vaidyaは、RaptをMicrosoftに、KruxをSalesforceに売却した実績を持つマーケテック分野のシリアルアントレプレナーだ。Kanaの特徴は「疎結合型エージェント」——必要に応じてオンザフライでカスタマイズ可能なAIエージェント群を、データ分析からオーディエンスターゲティング、キャンペーン管理まで柔軟に配置できる。

3月にはD2Cブランド「Parade」の創業者Cami Telzezが、元TikTok幹部のJon KroopfとともにDevotionを立ち上げた。400万ドルの調達で、AIによるクリエイター発掘から報酬処理までを自動化するインフルエンサーマーケティングプラットフォームを構築。ベータ期間中に10社以上のクライアントを獲得し、すでに7桁ドルの売上に達しているという。

「65%の業務がAI代替可能」の内訳

Adweekの分析は、マーケティング業務の65%がAI代替の影響を受ける可能性があるとしている。ただし、この数字を額面通りに受け取るべきではない。

代替されやすい領域は明確だ。データ集約とレポーティング、入札最適化、ルーティンのダッシュボード管理、ベーシックなキャンペーン設定——これらは「アナリスト業務の60〜70%」に相当し、AIが人間を上回るスピードと精度で処理できる。

しかし、戦略的なポジショニング、オーディエンス定義、ブレイクスルーキャンペーンの企画、クロスチャネルの調整、ビジネスコンテキストを踏まえた判断——これらは依然として人間の領域だ。NewtonXの調査では、多くの組織がAIによる人員削減をほとんどまたは全く行っていないと報告しており、実態としては「業務の再設計」が「人員の削減」よりも先行している。

一方で、若手マーケターへの影響は見過ごせない。22〜25歳のマーケティング・営業職では、AIの普及により約20%の純減が発生し、若年層の採用は2022年比で14%減少したというデータもある。AIが代替するのは「仕事」全体ではなく「タスク」であり、そのタスクの多くはキャリア初期のマーケターが担ってきたものだ。

「88%が毎日使う」時代の品質問題

マーケターの88%がAIツールを日常的に使い、AI活用マーケティングツールへの支出は前年比75.2%増。市場規模は470億ドルに達した。しかし、量的拡大と質的成熟は必ずしも一致していない。

70%のマーケターがAI関連の問題——ハルシネーション(事実と異なる生成)、バイアス、ブランドボイスからの逸脱——を経験している。にもかかわらず、AI固有のKPIで効果測定を行っているのは19%、AIガバナンスとブランド保全への投資を増やす予定なのは35%。ベンダー契約にAIガバナンス条項を含めているのはわずか37%だ。

Gartnerは2026年までに世界の組織の50%が「AIフリー」のスキル評価を導入すると予測している。クリティカルシンキングの萎縮リスクへの対策だ。AIが当たり前になった時代だからこそ、AIに頼らない思考力が差別化要因になるという逆説がある。

生き残るマーケターの条件

電通、博報堂、サイバーエージェントのAIエージェント戦略。Kana、Devotionなどのスタートアップの台頭。そして市場データが示す急速な普及と未成熟なガバナンス。これらを総合すると、AIエージェント時代のマーケターに求められる能力の転換が見えてくる。

オーケストレーション能力——複数のAIエージェントに適切なタスクを割り当て、出力を統合し、全体の方向性を管理する力。プロンプトリテラシー——AIに意図した結果を出させるための指示設計力。そして何より、AIの出力を批判的に評価し、ビジネス文脈に翻訳する判断力。

日本のAIエージェント市場は2026年から2033年にかけてCAGR 49.9%で成長すると予測されている。この波に乗れるかどうかは、AIを「使える」だけでなく、AIが「できないこと」を見極められるかにかかっている。

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