コンテンツの成果が落ちている。それは多くの担当者が体感していることだろう。問題は原因の特定だ。「AIのせいだ」と言えば話は早い。だが1,042人分のデータは、まったく別の犯人を指している。
12年間守られてきた帯が、今年割れた
Orbit Mediaが毎年実施しているブログ実態調査の2026年版が公開された。1,042人のコンテンツマーケターに24の質問をする、12年続く定点調査である。
最後の質問はシンプルだ。「あなたのコンテンツは成果を出していますか」。
この12年間、「強い成果が出ている」と答える割合は20〜30%の帯の中で動いてきた。上下はあっても、帯から出ることはなかった。
今年、その数字は13.9%まで落ちた。過去12年の最低値をさらに6ポイント下回る、調査開始以来の最悪値である。
もう1つ、見過ごせない数字がある。「ブログが成果を出しているかわからない」と答えた人が18%に達した。この項目は10年間、9〜14%の範囲に収まっていた。いま、およそ5人に1人のコンテンツマーケターが、自分の仕事が機能しているかどうかを説明できない状態にある。
AI利用率92.4%——そして、成果との相関はゼロだった
犯人探しの第一候補は当然AIだ。調査でも92.4%がブログ制作にAIを使っていると回答している。ほぼ全員である。
そしてAIは、確かに効いている。制作時間に対して。
1本あたりの平均執筆時間は3時間20分。2022年のピークだった4時間10分から短縮された。平均文字数も1,312ワードで、2023年のピーク1,427ワードから減っている。Search Engine Landの報道によれば、Orbitはこの短縮が典型的なマーケターにとって年間およそ50時間の節約に相当すると試算している。
だが調査の結論はこうだ。AIの利用有無は、成果の強さと相関していない。使っている人が成果を出しているわけでも、使っていない人が出しているわけでもない。Orbitの表現を借りれば、92.4%という数字は「何とも相関していない」。
つまり、AIは時間を減らしたが成果は動かさなかった。成果を落としたのは別の何かである。
本当の原因:「効く施策」が、静かに消えていた
Orbitが特定した原因は、拍子抜けするほど地味だ。成果と強い相関があることがわかっている施策を、マーケターがこの1年でやめた。
減っていたのは以下のような取り組みだった。
- 専門家・インフルエンサーとの協働
- オリジナル調査(独自データの制作)
- キーワードリサーチ
- コンテンツの有料プロモーション
- 人間による正式な編集
- アナリティクスの継続的な確認
とりわけ象徴的なのがインフルエンサー協働だ。Search Engine Landの整理では、専門家と定期的に協働しているマーケターは、ベンチマークと比べて強い成果を報告する確率が2.6倍高い。調査対象の中で最も成果との相関が強い施策である。ところが実施率は2017年の25%から、今年はわずか7%まで落ちた。最も効く施策が、最も捨てられている。
キーワードリサーチも同様だ。「AI時代にSEOはもう関係ない」という言説が広がる一方で、データはキーワードリサーチを行うマーケターのほうが強い成果を報告しやすいことを示している。それでも実施率は下がっている。
MarketingProfsのAnn Handley氏はこの結果を「警鐘」と呼び、「どの取り組みを削り、どれを残すかについて、我々はもっと(もっと!)目が肥えている必要がある」と述べている。
考察:これは「AIによる効率化」ではなく「AIを口実にした手抜き」の統計
ここからは筆者の解釈である。
この調査が描いているのは、AIが仕事を奪う物語ではない。AIが「早く終わる」という感覚を与えた結果、丁寧さを支えていた工程が正当化なしに消えた物語だ。
なぜそうなるのか。AIが最も得意なのは「書く」という工程である。そして今回リストアップされた消えた施策は、AIが代替できない工程ばかりだ。専門家に時間をもらう。自分たちでデータを取る。検索需要を調べる。配信に金を払う。人間が読んで直す。数字を見に行く。どれも外部との交渉か、地道な手間か、判断を要する作業である。
執筆工程だけが50分速くなったとき、組織は「じゃあ全体を圧縮できるはずだ」と考える。しかし圧縮の対象になるのは、速くなった工程ではなく、測りにくく、面倒で、担当者以外には価値が見えにくい工程だ。結果として、AIで削減したはずの50時間は、成果を生んでいた工程からも削られた。
年間50時間を節約して、成果は12年で最低になった。これは効率化の失敗ではなく、何を効率化したかを間違えたということだ。
反論も置いておく
この読み方には留保が必要だ。
第一に、この調査は自己申告である。「強い成果」の定義は回答者ごとに異なり、成果の基準そのものがAI検索時代に厳しくなった可能性は否定できない。同じ流入でも、以前なら満足していた水準に今は満足していない、ということは十分ありうる。
第二に、Orbit自身も指摘しているとおり、トラフィックという指標の意味が変わった。AI検索が情報発見のあり方を変えつつある中で、PVを成果とみなす人は成果が落ちたと答えやすい。実際、調査では有望リードや商談・売上を測っているマーケターのほうが、強い成果を報告する傾向が見られた。悪化しているのは成果ではなく、測り方かもしれない。
第三に、相関は因果ではない。成果が出ている組織だからこそ専門家に払う予算があり、独自調査を回せる、という逆向きの説明も成立する。
それでも、「AIのせいでコンテンツが効かなくなった」という説明よりは、「効く施策をやめたから効かなくなった」という説明のほうが、データとの整合性は高い。少なくとも前者を支持する証拠は、この調査の中には見当たらない。
日本のコンテンツ担当者が、今週やるべきこと
この調査は米国のデータだが、示唆は日本でもほぼそのまま使える。むしろ日本では「AIで記事量産」の文脈がより強く語られているぶん、当てはまりやすいかもしれない。
- この1年でやめた工程を書き出す。 編集レビュー、キーワード調査、公開後の効果確認、社内の専門家への取材。「AIが書けるから」を理由に省略したものがあれば、それが成果低下の候補である。削ったこと自体が悪いのではなく、削った判断の根拠がなかったことが問題だ。
- 社内の専門家に話を聞く工程を復活させる。 実施率7%まで落ちた施策が、最も成果と相関している。裏を返せば、ここは競合が最も手薄な差別化ポイントでもある。外部インフルエンサーが難しければ、自社のエンジニア、営業、カスタマーサポートでいい。AIが生成できない一次情報はそこにある。
- 成果指標をトラフィックから移す。 商談、リード品質、受注への寄与。18%が「わからない」と答えている状況は、測る対象を間違えていることの反映でもある。測れないものは守れない。
コンテンツは効かなくなったのではない。効く作り方をやめた人が増えただけだ。そしてそれは、やり直せる。