「自社名で検索すれば、自社サイトが一番上に出る」。この前提が、静かに崩れ始めている。
ブランド名検索のAI Overview表示率は9月に73.3%
Ahrefsが10月2日に公開した調査は、2026年7〜9月の米国デスクトップのGoogle検索2億3,280万件のクロールを分析した。うちブランド名を含むキーワードは9,250万件。AI Overviewが表示された割合の月間平均は、7月61.3%、8月65.1%、9月73.3%と上昇し、9月29日時点のスナップショットでは82.91%に達した。ブランド名以外のキーワード(9月平均78.3%)との差は、7月の12.2ポイントから9月には5ポイントまで縮まっている。
Ahrefsが2025年11月に出した前回調査ではブランド名検索の表示率は13.1%だった。ただし標本が異なるため、同社自身も単純比較はできないとしている点に注意したい。
100ブランドのパネルが示す「9月の急変」
Interbrandの世界ブランド100社の名前だけで検索した別パネルでは、7月1日に5/98件だったAI Overview表示が、9月9日に42件へ跳ね、9月30日には63/100件になった。表示された63件のうち48件は検索結果の1位に置かれている。Search Engine Journalの報道によれば、DemandSphereの日次計測でも9月1日の26.12%から9月27日に90.48%へ急伸しており、複数の計測が同じ時期の急変を捉えている。ただし、これが公式な展開時期だとは確認されていない。
本当の論点は「誰の言葉で語られるか」
注目すべきは表示率より引用元だ。Ahrefsが出典リストを取得できた57件のAI Overviewでは、Wikipediaが41件(71.9%)、YouTubeが22件(38.6%)、LinkedInが13件(22.8%)を占めた。競合企業のサイトが引用されたのは確認できた範囲で1件のみ、回答文が競合に言及したのは58件中2件(3.4%)にとどまる。
つまり現時点では、競合に奪われるリスクより、自社が管理していない場所の記述がブランドの「公式見解」として表示されるリスクのほうが大きい。Wikipediaの記述が古ければ、古い情報がそのまま検索結果の最上段に出る。
この数字をそのまま日本に当てはめてはいけない
筆者の見立てでは、日本でも同様の傾向が強まる可能性は高い。しかし根拠は限定的だ。第一に、データは米国・デスクトップのみで、日本語検索やモバイルは含まれない。第二に、出典分析の母数は57件と小さい。第三に、Ahrefs自身が「Googleは表示条件を頻繁に変えるため、この傾向が続く保証はない」と述べている。クリック数のデータもなく、表示が流入減に直結するかは未検証だ。
今週やるべき3つの計測
- 自社名の完全一致検索を毎週スクリーンショットで記録する。 AI Overviewの有無、文面、引用元を日付つきで残す。ツール導入より先に、これだけで変化が見える。
- 引用されているページの所有者を棚卸しする。 Wikipedia、YouTube、LinkedInなど、自社が編集・運営できる面があるかを確認し、誤りや古い記述は訂正手順を調べる。
- Search Consoleのブランドクエリ絞り込みで指名流入の推移を見る。 SEJによれば同機能は2026年3月から対象サイトに開放されている。ただしGoogle独自の定義で、カスタマイズはできない。
計測の前提が揺らいでいる点は、本誌が先に報じた順位計測が持たなくなる日に備えるとも地続きだ。指名検索は「守るもの」から「監視するもの」へ変わりつつある。