順位計測ツール「SERPrecon」の開発者であるRyan Jones氏が、「近い将来、誰も順位計測を提供できなくなるのではないか」という趣旨の懸念をXで示した。Search Engine Journalが10月5日に取り上げたこの発言は、あくまで一人のツール開発者の見方だ。ただ、その背景にある数字は無視できない。
背景にある3つの事実
第一に、Cloudflareは9月30日のブログで、AIエージェントによる1日あたりのリクエストが過去1年で1,700%以上増え、2026年に初めて、通信の半分以上が人間によるものではなくなったと報告した。同社ネットワーク内の数字である点には注意が要る。
第二に、AI検索は従来の検索より計算コストが重い。1つの質問から複数の関連検索を走らせて回答を合成するためだ。Googleのピチャイ氏は2026年Q2決算に際し、AI Modeの回答コストが開始以来の最低水準まで下がったと述べている。下がったとはいえ、大量の自動アクセスが検索結果を取りに来れば負荷は増える。
第三に、SEJは、Googleが蒸留(distillation)、つまり検索結果のデータを使って順位付けの出力を模倣する試みを警戒している可能性を指摘している。これはSEJの推測であり、Googleが公式に認めたわけではない。
考察:トラッカーは「エージェントと同じ形」をしている
ここからは筆者の見立てである。順位計測ツールは、検索結果を大量に取得するという点で、AIエージェントやスクレイパーと外形が似ている。Googleが自動アクセスへの対策を強めるほど、正当な計測ツールも巻き込まれやすくなる構造だ。Googleが順位計測ツールを狙い撃ちにしたと示す公式情報は、現時点では見当たらない。
もう一つ見落とせないのは、順位という指標そのものの価値低下である。AI OverviewやAI Modeが上に出る画面で、「3位」の意味は以前と違う。本誌が先日報じたとおり、ブランド検索でのAI Overview表示率は計測上26%から80%超に跳ね上がった。順位が取れなくなる前に、順位が語る内容が薄れている。
反対の見方もある。順位はもともとパーソナライズや地域で揺れる近似値であり、計測が難しくなっても、事業判断が根本から変わるわけではないという意見は成り立つ。
日本の運用者が今週やること
- 順位をKPIの主役から外す準備をする。 報告書の中心を、Search Consoleの表示回数・クリック数・クリック率に寄せる。これはGoogleが直接出す一次データだ。
- ツールベンダーに確認する。 取得方法、取得失敗が増えたときの補完手段、データ欠損時の説明方針を聞いておく。
- 「順位」以外の可視性を測る。 主要クエリでAI回答に自社が引用されているかを、手動サンプリングでも定点観測する。流入側は、GeminiのUTM付与のような動きを手がかりにGA4で見る。
- 関係者に事前説明する。 順位データが欠けても施策が止まらないよう、評価の軸が変わりうることを今のうちに共有しておく。
順位計測が突然使えなくなる日が来るとは限らない。だが、その日を想定した報告設計は、今から作れる。