生活者は先に動いていた——AI検索利用「頻度増」7割超の衝撃
博報堂DY ONEが展開する「ONE-AIO Lab」が2026年3月に実施した調査(全国18〜69歳の男女2,800名対象)によれば、AI検索の利用者のうち72.9%が「1年前と比べて利用頻度が増えた」と回答した。67.8%は「新しい発見が増えた」と感じ、61.8%は「目的への到達が早くなった」と実感している。
興味深いのは使い分けの実態だ。約8割がWeb検索も継続利用しており、AI検索は「情報を要約・再構成してほしい」(35.1%)、「発想を広げたい」(23.2%)という目的で選ばれる一方、Web検索は「ざっくり知りたい」(42.6%)、「最近の情報を知りたい」(36.3%)という即時性の高い用途で使われる。AI検索とWeb検索は代替関係ではなく、目的によって使い分けられる共存関係にあるというのが、この調査から読み取れる実態だ。
ブランドの「見え方」は8割が3社に集中する
一方、海外に目を向けると景色は一変する。SEOツール大手Semrushが発表した「AI Visibility Index」2026年版は、ChatGPT、Google Gemini、Google AI Mode、Google AI Overviewsの4プラットフォームにおける2026年1〜4月の検索プロンプト1億2600万件を分析したものだ。
結果は業界によって可視性の集中度が大きく異なることを示した。ニュース・メディア分野では上位3ブランドが可視性の82.9%を占め、家電分野でも76.9%が上位3社に集中する。対照的に金融(41.4%)や産業(42.2%)ではより分散している。さらに、全プラットフォームで月次トップ100入りを維持できたのはYouTube、Google、Amazon、Apple、Walmart、Disneyなどわずか36ブランドのみだった。
プラットフォームごとの引用の癖も無視できない。ChatGPTは平均15件のソースを参照し、RedditやWikipediaへの依存が高い。一方Geminiは平均3件と参照元が狭く、ブランドが「言及」されても実際に「引用」される割合が30%まで落ち込むケースもあるという。
測定できていない企業が45%——ここに本当の課題がある
Semrushの調査でもう一つ見過ごせないのが、企業側の体制だ。マーケティング責任者の45%が「AI生成回答内でのブランド可視性を正確に測定できていない」と回答し、必要な指標をすべて追跡できるツールを持つのはわずか9%にとどまる。SEOとAI戦略を統合した組織はトラフィックやリード獲得で81%の増加を報告した一方、縦割りのままの組織は36%増にとどまったという対比も示された。
これらを重ね合わせると、構図が見えてくる。生活者の行動変化(日本)は既に統計に表れているのに、企業の計測・対応体制(グローバル)はまだ追いついていない。この「ズレ」こそがGEO(Generative Engine Optimization)対応の本質的な難しさだと考えられる。従来のSEOのように順位という単一指標で測れず、プラットフォームごとに引用のされ方も参照元も異なるため、「何をもって成功とするか」の定義づけ自体が企業ごとの宿題になっている。
もっとも、この調査はSemrush自身が自社ツールの必要性を示す文脈で発表したものであり、数値の解釈にはその点を割り引く必要がある。それでも、複数の独立調査が「測定の空白地帯」を指摘している事実は軽視できない。
マーケターが今すぐ着手すべきこと
日本企業にとっての実務的な示唆は明確だ。まず自社の指名検索・カテゴリ検索がChatGPTやAI Overviewsでどう扱われているかを定点観測すること。次に、引用されやすい一次情報(公式データ、独自調査、FAQ構造化)をコンテンツに増やすこと。そして何より、「順位」ではなく「引用のされ方」を追う新しいKPI設計に着手することだ。生活者側の変化はすでに始まっている。企業側の準備期間は、思われているより短い。