「AIに引用されるための施策」が事業になり始めた矢先に、AI側の規約が線を引き始めた。AIの回答源を操作する行為は、Anthropicの利用規約で明文の禁止事項になる。
何が変わるのか:新設の章に「回答源の操作」が入った
Anthropicは10月8日、利用規約(AUP)の更新を発表し、施行日は2026年11月12日とした。これまで選挙、詐欺、プライバシー、偽情報の各章に散らばっていた規定を、「Do Not Engage in Deceptive Campaigns or Artificial Activity」の章に集約した。政治に限らず商業目的の欺瞞も対象に含まれる。
同章の現行規約ページには、検索エンジンやAIが回答を引き出す情報源の操作を禁じる項目がある。出所・著者・独立性を偽ったコンテンツを仕込むことを指し、例として、無関係な第三者を装った複数サイトが同じ主張を裏づける構図が挙げられている。
背景にある実例:約70の偽ローカルニュースサイト
Anthropicの2026年9月の脅威インテリジェンスレポートには、関連する事例が載っている。フランスの広告代理店LKM Companyに関連する約70の偽ニュースサイトのネットワークで、少なくとも8,913本の記事が約20言語で公開されていた。AnthropicはClaudeのアカウントと組織をBANし、検知ルールを整備した。Search Engine Journalの解説によると、記事は検索順位を高める目的で作られていたが、多くは閲覧がほとんどなく、順位やAI回答への効果は報告書で示されていない。
Googleは先に同じ線を引いていた
Googleのスパムポリシーも、生成AIの回答を操作しようとする行為をスパムに含めている。SEJは6月のスパムアップデートの記事で、コーネル工科大の査読前論文を紹介した。コミュニティページに約13語の文章を仕込むだけで、AIが作る調査レポートの38〜51%に攻撃者の指定した名称が入ったという。ただし、Googleは執行方法を明らかにしていない。
筆者の見方:線は「効果」ではなく「出所の偽装」にある
ここからは考察だ。両社の規定が問題にしているのは、AIに引用されること自体ではなく、出所・著者・独立性を偽ることだと読める。広告・提携と明示した記事や、自社の公式情報を機械可読にする施策は、出所を偽っていないので別物と考えられる。一方、第三者を装った多数のサイトで同じ主張を循環させる運用は、日本の景品表示法のステマ規制(2023年10月施行)の趣旨とも相性が悪い。
日本では、新聞社の提携広告やAI可視性の測定サービスが売られ始めている(本誌の整理)。そうした施策は引用元になる媒体の信頼性に依存するので、出所偽装型の手法とは持続性で差が出るだろう。反論として、検知が難しい以上、規約が抑止力を持つかは疑わしいという見方もある。実際、効果の有無は公開データで確認されていない。
今のうちにやること
- GEO・LLMO支援の委託先に、記事の出所表記と、第三者サイトへの出稿の有無を確認する
- 生成AIで量産した記事を複数ドメインで公開していないか、自社の運用を棚卸しする(スパムアップデートの記事も参照)
- 11月12日までに、AI利用ガイドラインの記述とAnthropic側の規定のずれを点検する
AIに推薦される競争は、これから「何を仕込んだか」より「何を偽らなかったか」で評価される局面に入るのかもしれない。