「AIの回答に自社ブランドが出てくるか」を測り、改善することが、日本でも有料サービスとして売られ始めた。9月28日に朝日新聞社、10月5日に大日本印刷(DNP)とDNPコミュニケーションデザイン(DCD)が相次いで発表している。三者はやっていることが違う。この違いを読み解くと、日本版GEO(生成AI向け最適化)市場の構造が見えてくる。
三つの発表を並べる
朝日新聞社「AIO/GEOタイアップ」(9月28日発表)。発表によれば、強い第三者ドメインであるasahi.comからの発信でAIからの信頼を獲得する狙いのタイアップ広告だ。記事制作時に広告主の製品・ブランドに即した「プロンプト」を提案し、公開前後の検索調査で、生成AIによる言及・引用の変化を可視化するという。
DNP/DCDのサービス(10月5日開始)。DNPの発表では、Adobe Brand Visibility(ABV)を分析基盤に、AI回答での自社ブランド・商品の言及状況を可視化する。商品情報管理(PIM)システムで「AI-Ready Data」を整え、約500人の「LLMOスペシャリスト」を育成する計画で、食品・医薬・金融・保険を対象に、関連サービスの累計500件導入を2028年度までの目標に掲げている。
Adobe Brand Visibility(6月18日発表)。アドビの発表によれば、ChatGPT、GoogleのAIモード、Microsoft Copilot、Perplexityなどでのブランド言及頻度を測り、競合とのシェア・オブ・ボイスを比較できる。約3億件の実際のAI検索プロンプトのデータを使うとしている。
三つの「層」として読む
筆者はこの三つを、メディア層・データ層・計測層の分業と見る。朝日は「AIが引用しやすい場所に情報を置く」メディア層、DNPは「AIが読みやすい形に商品情報を整える」データ層、Adobeは「結果を測る」計測層だ。DNPのサービスは、計測基盤(Adobe)の上にデータ整備と人材を載せた組み合わせになっている。
背景には、AIが検索結果の入り口を握りつつある現実がある。本誌が10月4日に取り上げたブランド検索の8割にAI Overviewが表示されるという調査のように、指名検索すら安全地帯ではなくなった。「順位」ではなく「言及」を測る需要が生まれるのは自然な流れだ。
売り手が語っていないこと
ここからは考察である。三者の発表資料には、料金が記載されていない。そして、「第三者ドメインから発信すればAIに引用されやすい」という前提も、公開資料の範囲では実証データが示されていない。仮説としては筋が通るが、効果の証明ではない。
また、AIの回答は質問の言い回しや時期で揺れる。朝日のようにプロンプトを提案して前後比較する方式では、「どのプロンプトを選ぶか」で結果が変わりうる。計測の設計自体が、成果の見え方を左右する。業界にまだ共通の指標がない中で、ベンダーごとに「言及率」の定義が違うことも想定しておくべきだろう。
発注側が今すぐできる準備
- 自社の観測プロンプトを自分で決める:商品カテゴリ・比較・悩み系など20〜50本程度を固定し、月次で同じ条件で確認する。ベンダーに任せる前に、自社の基準を持つ
- ベンダーに確認する質問を用意する:対象のAIの範囲、プロンプト数、取得頻度、結果の再現性、料金体系
- データ層から着手する:商品情報や仕様が自社サイト内で構造化・最新化されているかを点検する。これはどのサービスを選んでも必要になる土台だ
- 一過性のタイアップで終わらせない:記事を1本出して終わりでなく、公開前後で測れる設計かを条件にする
「AIに推薦されるか」は、これから広告費やSEO予算の一部が向かう先になる。まだ価格も効果も見えないからこそ、測り方を握った側が交渉で有利になる。