Googleの採用ページに、Discoverの将来像を示す求人が並んでいる。Search Engine Journalの報道によると、そのひとつ「Principal, UX, Search Discover」は、Discoverを「proactive, hyper-personalized concierge experience」、つまり先回りして個々の目標達成を助ける体験へ作り替える役職だ。求人票そのものにも、その記述がある。記事を並べて読ませるフィードから、ユーザーの課題解決を手伝う面へ。Discover流入に頼るメディアにとって、無視できない話だ。
求人票から確認できること、できないこと
事実として確認できる範囲は限られる。
- Principal UXの求人は、YouTube、Shopping、Chrome、Androidとの連携を前提とし、「人の声や情報源を中心に据える」ことも求めている。クリエイターやパブリッシャーとの価値交換の経験は「歓迎要件」の扱いだ。
- SEJの別記事によれば、Discoverのフィード推薦チームのエンジニア求人には、AI生成コンテンツ(AIGC)を推薦する業務が含まれる。DiscoverやNotificationsなどの「proactive surfaces」向けにコンテンツを生成するエージェント的な処理と、事実性・鮮度・一貫性・トーンの確認が挙げられている。
- 同記事は、別のデータサイエンティスト求人がDiscoverを「5億人超の日次アクティブユーザーを持つフィード製品」と説明していることも伝えている。
一方で、どの求人にも時期の記載はなく、AI生成コンテンツがフィードのどれだけを占めるのかも書かれていない。求人票は採用側の期待を含む文書であり、製品の発売計画ではない。ここは切り分けて読みたい。
点をつなぐと見える重心の移動(筆者の考察)
SEJの整理では、Googleは2025年10月にDiscoverでトレンドトピックのAIプレビューを米国・韓国・インドで開始し、今年8月には「増やしたい/減らしたい話題」を言葉で指定できる調整機能を発表、9月18日にはSearch担当VPのRobby Stein氏が、トピックの概要と関連リンクを開く「Dive deeper」ボタンのテストを明かした。順に見ると、記事を選んで出す面から、話題をまとめて掘り下げさせる面へ、段階的に重心が動いている。今回の求人は、その延長線上にあると読むのが自然だろう。
本誌が先に報じたUGC Fresh Data Programは、Googleが新鮮で信頼できる「人の声」を承認制の専用レーンで取り込む動きだった。求人票の「人の声を引き上げる」という記述と重ねると、体験に根ざした一次的な情報への需要は高まる一方、恩恵を受けられる事業者は選別されていく構造が浮かぶ。
もちろん異論もある。要約が強まれば元記事へのクリックは減る、という懸念は当然だが、現時点でその減少を示す公開データはない。人の声を重視する記述は、パブリッシャーに追い風となる可能性もある。結論を急ぐ段階ではない。
日本の運営者が今週できること
AIプレビューの対象は2025年10月時点で米国・韓国・インドで、日本への展開時期は公表されていない。過去の機能展開の例から、米国での定着後に日本語対応が来る可能性はあるが、時期は読めない。だからこそ、数字が見える今のうちに足場を固めたい。
- Search ConsoleでDiscoverの実績を棚卸しする。 Googleのヘルプによれば、DiscoverのAI機能での表示回数を示す新レポートが順次提供されている。ただし指標は表示回数のみで、規模が小さいサイトでは表示されず、集計は正規URL単位だ。まず、Discover流入がどのページ・テーマに偏っているかを把握する。
- 掲載制御の影響を理解する。 Googleの「Search generative AI control」は、AI OverviewsやAI Modeと並んでDiscoverのAI機能への掲載も左右する。除外すると、自社のリンクとコンテンツはこれらの機能に出なくなる。流入を守るのか、利用を拒むのか、方針を決めておく。
- 自社にしか出せない情報の比率を上げる。 独自取材、実測データ、体験談といった「人の声」は、AI要約の時代に代替されにくい。量産記事より、数本の一次情報記事に投資する価値が高まると筆者は見る。
Discoverは検索から切り離された「おまけ」の流入面ではなくなりつつある。変化の兆しを、確認できた事実の範囲で冷静に追い続けたい。