ベータ卒業と「9月強制移行」の衝撃
Googleは2026年4月15日、Google Ads公式ブログでAI Max for Searchのベータ卒業を発表した。記事の署名はGoogle AdsのDirector of Product Management、Brandon Ervin氏。発表は2点に集約される。第一に、Dynamic Search Ads(DSA)、Automatically Created Assets(ACA)、キャンペーン単位の部分一致設定(campaign-level broad match)の3つは、9月から順次AI Maxへ自動アップグレードされる。第二に、9月以降はGoogle Ads・Google Ads Editor・Google Ads APIのいずれからも、新規DSAキャンペーンを作成できなくなる。
DSAは商品点数の多いECサイトや非構造化コンテンツを抱えるメディアが「キーワード一覧の管理コストを下げる」ために使ってきた、いわば運用の保険のような存在だった。それを2026年中に廃止する形となるため、影響は小さくない。
Google公式は「+7%」、独立調査は「小売で-35%」
GoogleはAI Maxの効果として、検索ターム拡張・テキストカスタマイズ・最終URL拡張のフル機能利用時に、平均7%のコンバージョンまたはコンバージョン価値が同水準のCPA/ROASで増加すると公表している(注: search term matching単体との比較)。
しかし、独立検証側の数字は楽観論を抑える。米国のPPCメディアが2026年に公開した250以上の小売キャンペーンを対象とした分析では、AI Maxの自動化機能をフル活用した条件下でROASが従来のマッチタイプ運用より3割前後下がった事例が報告されている。AI Maxは検索クエリのマッチング範囲を広げるトレードオフとして、ブランドキーワードや非購買意図のクエリも取り込んでしまう傾向があり、Google公式の7%はあくまで「フル機能利用 vs search term matching単体」の比較値で、小売単体への適用効果を保証する数字ではない点を見落としてはならない。
「9月までの猶予」は短い
4月15日の発表から9月の自動アップグレード完了までは約5か月。この期間にDSAやACAを使う広告主が決めるべきことは3点に絞られる。
第一に、自主アップグレードを使ってAI Maxの挙動を本番手前で観察すること。Googleは「設定とデータをそのまま移行する移行ツール」を週単位でロールアウトしている。9月の自動移行ではURLコントロールや既存設定が「ミラーリング」される設計とはいえ、3機能(検索タームマッチング、テキストカスタマイズ、最終URL拡張)はDSAユーザー向けにすべてオン状態で開始される。レビューなしに本番が動き始める前に、ワンクリック実験で挙動を把握しておく価値はある。
第二に、ブランドコントロールと除外語の設計をいま見直すこと。AI Maxは「ブランド・地域・テキストガイドライン」という新しい統制レイヤーを提供する。マニュアル運用に近い精度を保てるかは、ここの設計で決まる。
第三に、小売・EC案件はAI Max一択にしないこと。検証データが整理されるまでは、従来のマッチタイプとAI Maxを並走させ、商品カテゴリ別にROAS差を測る運用が現実解だ。
マイクロソフトも同月に「AI Max」を投入
見落とせないのは、6日後の4月21日にMicrosoftが同名の「AI Max for Search」を発表した点だ。CopilotとBingに広告配信面を拡張し、5月にオープンパイロットを開始する。同じ「AI Max」というブランドを、検索広告の二大プレイヤーが同月に立ち上げた。これは偶然ではない。AIエージェント経由の検索が始まる前提で、両社が「キーワード単位の運用を諦めさせる」ロードマップに揃って踏み出したと読むべき変化である。
9月、日本の代理店現場で何が起きるかは、夏前のテスト運用にかかっている。