AIエージェントが買い物を代行する世界では、「どこで決済させるか」と「エージェントを誰として扱うか」を、事業者が先に決めておく必要が出てくる。10月上旬、GoogleとMetaがそれぞれ別の側面から、この論点に動いた。
Google:決済の置き場所を「選ばせる」段階へ
Search Engine Landの報道によると、GoogleはMerchant CenterのUCP(Universal Commerce Protocol)統合ハブを、米国の加盟店向けに段階的に展開し始めた。Googleのヘルプページでは、選べる機能として次の3つが挙げられている。
- 加盟店サイトへのカート転送
- AI ModeやGemini上の対象商品に購入ボタンを出す、Google上のネイティブチェックアウト
- アイデンティティ連携
参加には、先に技術実装を完了し、関心フォームを提出し、Googleから選定される必要がある。選ばれた加盟店にはサンドボックスが提供される。対象国は当面米国で、オーストラリアとカナダは来年とされている。日本への言及は確認できなかった。
Meta:エージェントを迎える側の「統制」を打ち出す
Social Media Todayの報道によれば、Metaは自社のAIエージェント「Muse」が企業サイトとどう関わるかを可視化するプロトコルを開発している。認証、企業側による動作の把握をうたい、「誰でも実装できる」形にするという。背景には、負荷や不正を懸念してAIエージェントをブロックするサイトが多い現状がある。ただしプロトコルの名称、公開時期、仕様は現時点で示されていない。
考察:競争軸は「売る場所」から「機械が判断できる状態」へ
ここからは筆者の見立てである。GoogleのUCPは決済経路の選択、Metaの動きはエージェントの身元と行動の可視化と、守備範囲は違う。だが重ねると、事業者が決めるべき論点は2つに絞られる。①AI経由の購買をどの経路で完結させるか、②どのエージェントを入れ、どれを断るか。本誌が先日報じたShopifyのWebMCP対応は、プラットフォーム側が「スクレイピングから契約へ」進む例だった。UCPやMetaの構想も、同じ方向の別ルートと読める。
ただし慎重な見方もある。UCPは選定制で、当面は一部の米国加盟店に限られる。Social Media Todayは、エージェント経由の取引が増えると顧客との関係が薄れる懸念も指摘している。ネイティブチェックアウトを選べば、会員化やアップセルの接点をGoogle側に委ねることになる点は、導入前に天秤にかけるべきだろう。
日本の事業者が今できること
日本展開の時期は未発表だ。豪・加が来年と予告されていることから、日本は早くても来年以降と筆者は見るが、これは推測にすぎない。それでも準備は前倒しできる。
- Merchant Centerのデータ整備:フィード、配送、返品条件を最新に保つ。UCPの前提条件でもある
- bot対策の棚卸し:WAFやbot管理が、正当なエージェントまで一律に遮断していないか確認する
- 決済経路ごとの顧客データ方針:会員ID、ポイント、代引き・コンビニ払いなど、日本固有の商習慣をどこまで外部経路で扱うか決めておく
規格が固まってから動くと、先行する海外事業者との差は広がる。小さな点検から始めたい。