Metaが5月18日、広告マネージャ周りで二つの重要なアップデートを静かに展開した。一つは「Purchaseイベントを含むカスタムオーディエンス」の保持期間を従来の最大180日から最大730日(約2年)まで拡張したこと。もう一つは、Meta Ads AIコネクタの公式サポートエージェントにPerplexityを追加したことだ。Vizupの解説が伝えるように、いずれも管理画面の通知だけで済まされており、見落としやすい。
オプトアウトしないと「自動で730日化」する
問題は保持期間の方だ。既存の180日設定オーディエンスは、5月18日以降、広告主が明示的にオプトアウトしない限り自動的に730日へ書き換わる。「最大」が伸びただけで挙動は変わらないように見えるが、実際は反対側に倒れている。
なぜこれが効くか。180日で切っていた既存オーディエンスを730日に延ばすと、過去2年分の購入者がすべて「直近の購入者」として広告配信母集団に戻ってくる。これまで「冷えた」と判断して除外していた休眠購入者が、リターゲティング対象として復活する。配信ボリュームは増えるが、CPAは確実に悪化する顧客層が混じる。
この設計は、本誌が先月報じたMetaの2,434億ドル広告売上見通し(eMarketer試算)を踏まえると、配信枠の総量を維持するための「在庫整備」という側面が見えてくる。Reels広告と並行して、リターゲティング枠の拡大もMeta側の収益基盤として効いてくるからだ。
「Perplexityコネクタ」の意味
もう一つの動きは戦略的に大きい。Madgicxが解説する手順では、Meta Ads ManagerのAIコネクタ画面から、ChatGPT・Claudeに続く3社目としてPerplexityがプルダウンで選択可能になっている。広告主は同一の認証フレームワークで、3社のAIエージェントに「キャンペーン分析」「予算配分の見直し」「クリエイティブ仮説の生成」を委ねられる。
ここで興味深いのは、Perplexity自体は2026年2月に広告事業から完全撤退している点だ。「広告は出さないが、広告主の代理人としてMeta上のキャンペーンを最適化する」という、エージェント側の立ち位置を取った。これは広告配信側と分析エージェント側のレイヤー分離が、AI時代の標準構成になりつつある証拠と読める。
一方で警戒も必要だ。「Connector」は外部AIに広告アカウントへの読み取り権限を与える設計のため、誤って書き込み権限まで付与すると、AI側が勝手に予算配分を変える事故が起こりうる。Meta側は権限を細かく区切る設計を採用しているが、初期設定の確認は必須だ。
日本の広告主が今週やること
第一に、Purchaseイベント連動のカスタムオーディエンスを総点検する。意図的に短い期間で運用していたオーディエンスがあるなら、5月18日以前にオプトアウトしていない限りすでに730日へ自動更新されている可能性が高い。CPAの目標KPIで動いているアカウントは、まず保持期間設定をスクリーンショットで現状記録すること。
第二に、730日設定は「フラッグシップ商品の購入者を長期に追う」用途では強力な武器になる。住宅・自動車・教育・高単価BtoBなど、購入サイクルが半年〜2年のカテゴリでは、これまでLook-alikeでしか追えなかった顧客行動を、本物のPurchaseオーディエンスとして使える。広告主側にとって機会でもある。
第三に、Perplexityコネクタはまず読み取り権限のみで試す。ChatGPT・Claudeとの比較で「どのエージェントがアカウント診断の精度が高いか」を1〜2週間の小規模テストで切り分けるのが現実的だ。
機能追加に見えて、実は既存設定が静かに書き換わる——これがAI時代の広告プラットフォームの標準的な進化パターンになりつつある。「自分が変更していない設定こそ、毎週確認する」運用癖を、今のうちにつけておきたい。