2026年10月17日(土)
広告

P-MAXに「チャネル優先度スライダー」が現れた——可視化から16か月、Googleが返そうとしているのは制御ではなく重み付けである

Google広告のP-MAXで、Search・YouTube・ディスプレイ・Discover・Gmail・マップごとに優先度を上下できる設定がアルファテストで確認された。正の調整は、そのチャネルで許容するCPAを緩める挙動だという。2025年4月のチャネル別レポート提供から16か月。ただしこれは面をオフにする機能ではない。配置除外を撤廃するMetaと、既定オンで走らせるMicrosoftを並べると、自動化広告の潮目が見えてくる。

WebTech Journal 編集部

編集・執筆

|
|
4分で読める

スライダーが1本、増えた

8月25日、Search Marketing AdvisorのHeidi Sturrock氏が、Google広告のP-MAX(Performance Max)キャンペーンに見慣れない設定が現れたことを報告した。「Channels」という実験的な設定で、Search、YouTube、ディスプレイ、Discover、Gmail、マップの各チャネルに対して、個別にプラス方向・マイナス方向の調整を加えられる。UIはスライダーで、左が低優先度およびAuto、右へ動かすほど高優先度になる。

現時点でアルファテストとされており、一般提供の時期は示されていない。日本アカウントでの提供についても情報はない。

「優先度」の中身は、入札の緩和である

ここは正確に押さえておきたい。報じられている挙動によれば、プラス方向の調整は、そのチャネルについてシステムが許容するCPAを緩める。つまり「このチャネルから来るコンバージョンを、私はより高く評価している」という信号を送る操作であって、配信面をオン・オフする操作ではない。

「YouTubeを切りたい」という現場の要望に、この機能は直接は答えない。答えるのは「YouTubeからのCVをもっと取りにいってほしい」あるいは「YouTubeにはあまり出さないでほしい」という重み付けである。除外と重み付けは、似ているようで運用設計上まったく別物だ。レポートで「出していません」と書けるかどうかが変わる。

可視化が先、制御が後という順序

このテストが意味を持つのは、Googleが16か月前に何をしたかとセットで見たときである。

2025年4月30日、GoogleはP-MAXにチャネル別のパフォーマンスレポートを導入すると公式ブログで発表した。同時に検索語句レポートとアセットのレポートも拡充している。当時の発表によれば、P-MAXの利用広告主は100万を超え、2024年だけで90を超える品質改善が投入され、コンバージョンとコンバージョン値を10%以上押し上げたとされる。

つまり順序はこうだ——まず「どのチャネルがいくら使っているか」を見せた。次に「どのチャネルを優先するか」を触らせようとしている。

広告主が最初に求めたのは制御だった。Googleが先に返したのは可視化だった。そしていま、制御の一部が返されようとしている。この順序は偶然ではないと筆者は見る。可視化なしに制御だけ返せば、広告主は勘で面を切り、結果としてP-MAXの成績が落ちる。データを見せてから触らせるほうが、プラットフォーム側にとっても安全なのだ。裏を返せば、チャネル別レポートを見ていない広告主にとって、このスライダーは使いようがない。

業界全体では、逆向きの動きもある

ただし「自動化広告が制御を返す方向に向かっている」と一般化するのは早い。

当誌が8月29日に報じたとおり、Metaは配置除外オプションを撤廃する方向にある。面が増え続けるなかで、「この面には出さない」という指定そのものを消しにいく判断だ。8月30日に取り上げたMicrosoftのAI Maxは、新規キャンペーンで既定オンという設定で一般提供された。

3社を並べると、方向は一致していない。Googleは重み付けを返し、Metaは除外を取り上げ、Microsoftは既定で入れる。

共通しているのは、むしろ「除外」という操作が業界全体で退場しつつあることのほうかもしれない。広告主に渡されるのは、面をオフにするスイッチではなく、面の重みを動かすつまみになる。オフにできない代わりに、薄くはできる。この差は、レポートの読み方と社内の説明責任の設計に効いてくる。「出していません」とは言えず、「優先度を下げています」としか言えなくなるからだ。

もっとも、反対の見方もある。P-MAXの成果に対する広告主の不信は長く続いており、Googleが可視化と制御を小出しに返しているのは、AI Maxのような競合の攻勢に対する防御だという読み方だ。だとすれば、この流れはまだ続く。除外そのものが戻る可能性も、ゼロではない。

日本の運用担当が、今できること

アルファ段階の機能に備えて何かを仕込むのは効率が悪い。今できるのは、機能が来たときに使える判断材料を揃えておくことだ。

  1. チャネル別レポートで現状を数値化しておく。 自社のP-MAXが実際にどのチャネルにいくら使い、どこからCVが来ているか。この数字がないと、スライダーが来ても動かす根拠がない。
  2. マップとDiscoverの扱いを先に決めておく。 実店舗を持つ日本の事業者にとってマップ経由のCVは価値が高い一方、CV定義が甘いと過大評価されやすい。優先度を上げるなら、その前にCV定義を締める。
  3. 「除外できない」前提でクリエイティブを設計する。 ブランドセーフティ上どうしても出したくない面がある場合、面の指定ではなくアセットの出し分けで対応する発想に切り替える必要が出てくる。
  4. 社内・クライアントへの説明の語彙を更新する。 「除外しました」から「優先度を調整しました」へ。効果の因果を説明しにくくなる分、事前の合意形成の重みが増す。

制御が返ってくること自体は歓迎すべきだ。ただし返ってくるものは、かつて手放したものと同じ形をしていない。

関連記事

広告

Metaが「3〜24時間の枠買い」を投入——運用型広告の旗手がリーチ予約型へ寄る意味と、数字を読む前の注意点

Metaは10月15日のブランドビルディング・サミットで、時間枠を予約するAds Super Burstなど4つのブランド広告施策を示した。Search Engine LandとSocial Media Todayの報道を突き合わせ、発表内容、提供状況の食い違い、数字がすべてMeta自社調査である点、日本の広告担当者が今のうちに確認すべきことを整理する。

広告

Google広告に「チャネル優先度」と予算配分の上限——GDNとSearchパートナーを“止めずに絞る”時代、2027年2月の仕様廃止までに見直すこと

Google広告が、検索・ショッピング・P-MAX・デマンドジェンで配信面ごとに優先度(高/低)と予算比率の上限を指定できる機能を発表した。2027年2月には、GDN有効の検索キャンペーンの現行の支出配分が廃止される。公式発表の事実と、その仕組みから読み取れる運用の変化を分けて整理し、日本の運用者が今のうちに棚卸しすべき設定を示す。

広告

Google広告は「目的選択」から「文章で相談」へ——AI Maxの新レポートと自然文キャンペーン作成テストが映す、運用者の役割の変化

Google広告でAI Max向けの「検索語句と広告の組み合わせ」レポートが一部アカウントで出現し、キャンペーン作成を自然文で始めるUIのテストも確認された。自動化の中身が見える一方、入口は「質問に答えるだけ」に近づく。この二つを重ねると見える、運用者の仕事の再定義を考察する。