日本のZ世代に「商品・サービスを調べるとき、最初に使うサービスを1つ」選ばせると、Google・Yahoo!などの検索エンジンが33.6%で単独首位に立つ。だがInstagram 15.4%、TikTok 12.7%、X 9.9%、YouTube 7.2%を足し上げると45.2%。検索エンジンを11.6ポイント上回る。TaTapが8月18日に公開した「Z世代のSNS購買行動調査」の結果だ。
同じ8月、北米で別の数字が出ている。調査会社Rival Technologiesが米国・カナダのZ世代903人に14種類の組織への信頼を聞いたところ、SNSプラットフォームを信頼すると答えたのは33%。インフルエンサー31%、AI企業24%と並んで、14種類の最下位3つを占めた。医療機関79%、ホスピタリティ企業65%、政府機関64%とは対照的だ。SNSはZ世代のニュース入手源の首位(62%)でありながら、信頼の最下層に沈んでいる。
買い物の起点として最も使われるチャネルが、最も信頼されていないチャネルでもある。この矛盾をどう読むか。
信頼されていないのは「配管」であって「水」ではない
TaTap調査のもう一つの設問が、答えのヒントになる。購入のきっかけになった投稿の種類を聞くと、最多は「一般ユーザーの口コミ・レビュー投稿」42.9%。以下、インフルエンサーの通常投稿39.6%、同PR投稿37.3%、ブランド公式アカウントの投稿24.4%、SNS広告14.3%と続く。
つまりZ世代は、SNSという器を信じていないのに、そこに流れてくる個々の投稿では動いている。信頼されていないのはプラットフォームという配管であって、そこを流れる水──誰が何を言っているか──は別枠で評価されている。「SNSの信頼度が低いからSNS施策を弱める」は、この2つを混同した判断になると筆者は見る。
「#PRは嫌われる」という業界の通説も、この調査では支持されなかった。#PR表記のある投稿について「参考にしない」は13.2%にとどまり、最多は「投稿の内容や投稿者によって決める」27.0%。参考にする側の合計は68.3%に達する。判断軸は「PRかどうか」ではなく「誰が、何を言っているか」に移っている。
ただし同じ設問で「#PR表記に気づいたことがない」が17.9%あった。これはステマ規制対応の視点では別の問題を示している。表記があっても認知されていないなら、法令遵守と実質的な透明性の間に隙間が残る。
「保存」は購買の待機列だった
実務上いちばん使える数字はここだ。SNSで「保存」「いいね」した商品をあとから購入した経験は56.9%(「よくある」18.2%+「たまにある」38.7%)。そして購入までの期間は「3日以内」50.7%、「1週間以内」76.0%に集中していた。
保存は、エンゲージメント指標の一種として片づけられがちだった。だがこの数字が正しければ、保存は数日以内に購買が起きる予備軍のリストとして機能している。リターゲティングの配信窓、クーポンの投下タイミング、在庫の引き当て──いずれも「保存から1週間」を基準に組み直す余地がある。
この数字を鵜呑みにしない理由
留保も明示しておく。TaTap調査の有効回答数は363名(15〜19歳141名/20〜29歳222名)で、決して大きくない。また「最初に使うサービス」は単一回答で聞かれており、SNS4媒体を合計する操作は分析側の設計だ。単一の選択肢としては検索エンジンが依然トップである事実は動かない。Rival調査は米国・カナダが対象で、設問も期間も別物だから、2つを直接足し引きすることはできない。
それでもこの2本を並べる意味はある。「SNSが購買の入口になっている」と「SNSが信頼されている」は、同時に成り立たなくてよいという前提を、日本のマーケターも持っておいたほうがいい。Rival調査ではカナダのZ世代がSNSを信頼する割合は23%で、米国の43%の半分近くだった。信頼水準は市場ごとに大きく振れる変数であり、日本の数値は誰も測っていない。
明日から動かせる3つ
- 保存数をKPIの表に載せる。 現状、保存はレポートの片隅にあるか、そもそも取っていない企業が多い。1週間の購買窓を前提に、保存起点の後追い施策を設計する。
- 公式アカウント偏重を見直す。 購入きっかけとしてブランド公式は24.4%、SNS広告は14.3%。予算配分がこの比率と逆になっていないか確認する価値がある。
- #PRを恐れる前に、#PRが見えているかを確認する。 忌避されるより、気づかれないことのほうが規制対応上のリスクになる。
Z世代は、企業が話しかけてくる場所を信じていない。それでもその場所で買っている。この二重性を前提に設計できるかどうかが、次の1年の差になる。