2026年9月20日(日)
SEO

電話は12%減り、ルート検索は21%増えた——「ローカルSEOは死んだ」を撤回した実測データが示す、KPIの置き換え

Googleビジネスプロフィールの順位は動いていないのに、電話とサイトクリックだけが落ちる。この現象を4月に「ローカルSEOの死」と表現した分析チームが、Q1データの誤りを認めたうえでQ2の数字を公開した。米国では電話が11.9%減、サイトクリックが12.5%減、一方でルート検索は21.1%増。減少の正体は消滅ではなく、Googleマップ内での完結だった。数字の分解と、日本のMEO運用が今すぐ変えるべき計測設計を示す。

WebTech Journal 編集部

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「順位は落ちていないのに、電話が鳴らない」。ローカル検索に関わる人なら、この1年で必ず聞いた相談だろう。この現象について、4月のBrightonSEOで「ローカルSEOは死んだ」と壇上で宣言したチームが、8月31日に自らその主張を修正した。Search Engine Landに掲載されたGMBapiのMichel van Luijtelaar氏の分析である。

訂正の理由が興味深い。Q1のデータが後から遡及的に修正され、当初「米国ポートフォリオ全体でアクションとインプレッションがおよそ半減した」と読めた数字が、実際にはそこまでの落ち込みではなかった。同氏は「規模について我々は間違っていた」と率直に書き、一部の代理店クライアントに検索広告への投資を勧めたことまで明かしている。分析者が自分の警告を撤回する記事は珍しい。だからこそ、修正後の数字は信用に値する。

修正後のQ1と、Q2が示した「減速」

修正後のQ1(前年同期比、米国)は、ウェブサイトクリックと電話がそれぞれ15.8%減、ルート検索が31.3%増。デスクトップ検索インプレッションは12.3%増、モバイル検索は20.6%減だった。

Q2はこうなる。電話が11.9%減、ウェブサイトクリックが12.5%減、ルート検索が21.1%増。3つとも、Q1より変化が緩やかになっている。崩壊ではなく、移行の途中というのが正しい読み方だ。

もっとも注目すべきはデスクトップMapsの反転だ。Q1の17.9%減から、Q2は3.2%増。同氏はこれを米国固有の明確な反転と位置づけている。モバイルMapsは30.4%増、デスクトップ検索は13.9%増。一方でモバイル検索は20.1%減で、これ単独で他の伸びを打ち消してしまう規模だ。

つまり全体像はこうなる。ユーザーは検索結果ページを起点にするのをやめ、Googleマップの中で行動を完結させ始めている。電話とサイトクリックの減少は需要の消滅ではなく、Google内部での経路変更だ。そしてこの移動は、もはやモバイルだけの話ではない。

なぜ電話ボタンが押されないのか

計測の話に入る前に、供給側の変化を押さえておく必要がある。Sterling SkyとJeptoによる179件のGoogleビジネスプロフィールの分析によれば、AIローカルパックは3件ではなく2件しか事業者を表示しないことが多く、しばしばclick-to-callボタンを持たない。表示されるユニーク事業者数は、従来のマップパックの32%にとどまる。Places Scoutの集計では、AIローカルパックが5,943社を表示したのに対し、通常の3パックは18,330社。調査した322市場のうち88%で、AIローカルパックのほうがユニーク事業者が少なかった。

さらにSterling Skyは、Googleが一部業種で電話ボタンを画像に置き換えていること、ローカルパック広告の表示率が2025年初の1%から同年12月には約22%へ、Local Services Adsが11%から31%へ拡大したことを報告している。電話クリックが減ったのは、ユーザーが電話をかけなくなったからではなく、押すボタンが画面から消えたからだ。そしてほとんどの順位計測ツールは、この変化を検知できない。

ランキングは2系統に分かれた

ここから構造の話になる。従来のMapsランキングは、近接性・関連性・エンゲージメント・著名性で決まる。だがAI ModeやGeminiが参照する信号は別で、ウェブ上の文脈、エンティティの照合、ブランドの権威性、そしてレビューのセンチメントがビジネスプロフィールの上に重ねられる。

一方は「地図に載るか」を決め、もう一方は「GoogleのAIが、クリックさせずに直接答えてよいと判断するほどあなたの事業を信頼しているか」を決める。接着剤になっているのがレビューだ。Googleは自由記述だけに頼らず、雰囲気・価格・清潔さといった構造化タグでレビュアーを誘導し、訪問済みの店舗へのレビュー投稿を促している。AIが答えるためのクリーンなデータを作りにいっている、と読むのが自然だ。ルート検索だけが伸び、電話とクリックが落ちる理由の説明としても筋が通る。

SOCiの2026年版Local Visibility Indexは別角度から裏づけを与える。AIプラットフォームがローカル拠点を推薦する率は、ChatGPTで1.2%、Perplexityで7.4%、Googleで35.9%。理由の一つがプロフィール精度で、ChatGPTとPerplexityが平均68%なのに対し、GeminiはGoogleマップから直接引くため100%だという。推薦された拠点の平均評価はChatGPTで4.3、Perplexityで4.2。レビュー品質はランキング要因を超えて、AI推薦の「入場条件」になりつつある。

EUとUKは、米国の遅れた姿ではない

海外事例を日本に持ち込むときに最も危険なのが「米国が先行し、他国が追う」という思い込みだ。今回のデータはそれを否定している。EUではデスクトップMapsインプレッションがQ1の16.5%減からQ2は34.7%減へと悪化が加速し、ルート検索の伸びは21.7%から13.1%へ鈍化した。UKはサンプルが小さいものの逆方向で、モバイルMapsが22.4%増から70.8%減へ振れる一方、ルート検索とサイトクリックは伸び続けている。同氏の結論は明快だ——どちらの市場も米国を追いかけてはおらず、別の道を歩んでいる。

日本も同じだと考えるべきだ。AIローカルパックは現時点で米国のモバイルでしか確認されていない。日本にそのまま来る保証はないし、来るとしても形が変わる可能性が高い。重要なのは結果を先取りすることではなく、結果が出たときに気づける計測を持っておくことだ。

日本のMEO運用が今週やるべきこと

電話件数を主KPIの座から降ろす。ルート検索を同等の重みで扱う。来店型ビジネスにおいて、ルート検索は電話より購買に近い行動である可能性が高い。順位とレビュー数だけを並べた月次レポートは、もう顧客の意思決定に役立たない。

プロフィールの完全性を数値管理する。SOCiのデータが示すとおり、AI推薦の可否はプロフィール精度で分岐する。営業時間、属性、カテゴリ、写真の欠損を放置している拠点は、AI経由の露出から静かに外れていく。

レビューを「評価点」ではなく「データ」として運用する。Googleが構造化タグを導入している以上、どのタグが付いているかが影響し始める。星の数だけを追う運用は、すでに一世代前のものだ。

ローカルSEOは死んでいない。ただ、成果の出口が電話からルート検索へ、クリックからAIの回答内へと移っただけだ。移動先を測っていない事業者にだけ、それは死んで見える。

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