半年で4倍──AI Overviews出現率「9%→32%」の意味
博報堂DY ONEの次世代検索研究所piONEerが3月2日に公開した「AI検索白書2026」は、AI検索の日本における浸透を、独自のキーワード調査と生活者調査の2軸で押さえている。最も衝撃的なのは、グループ内のONE-AIO LabがGoogle検索結果上のAI Overviews出現率を継続観測した数字だ。2025年5月時点で観測キーワード全体の9%だったAI Overviewsの出現率は、同年11月には32%まで上昇している。半年で約4倍、しかも観測対象は英語圏の話ではなく日本語Google検索でのデータだ。
セッション数の比較も劇的に動いた。同白書は2025年12月時点でGoogleが約70.9億セッション、ChatGPTが約16.2億セッションと整理しており、ChatGPTはGoogleの約4分の1の規模に達している。半年前との比較ではChatGPTのセッション数の伸びが顕著で、検索AIサービスは「補助的な存在」から「日常的な情報収集チャネル」へ移った段階にあると評価できる。
ゼロクリック23.9%、購買行動への影響7.4%
2025年11月の独自調査(「AI検索白書2026」第3章)は、生活者の検索行動がすでにWebサイト遷移の前提を崩していることを示した。
- 生成AIの回答だけで検索行動を完結する「ゼロクリックサーチ」を実行する人は23.9%
- 生成AIの回答に加えて検索エンジンで追加検索する人は32.8%
- 「URLをクリックしてWebサイトで情報収集をする機会は減少した」と回答した人は約22%(半年前から+4.3pt)
- 生成AIの回答を信用している層のうち7.4%が、生成AIの回答をきっかけに商品購入や来店行動に踏み出した
23.9%のゼロクリック率は、サイト流入数・ユニークユーザー数・リターゲティング母数のすべてに直接効いてくる。リターゲティング配信を主軸にしたディスプレイ/SNS広告のCPA設計は、母数縮小の前提でROI試算を組み替えなければ、2026年下半期の予算で齟齬が出る恐れが大きい。
「SEOは不要」ではなく「SEOの役割が変わった」
ここで早合点してはならない。生成AIの回答に加えて検索エンジンで追加検索を行う人が32.8%いる事実が示しているのは、AIが提示した情報を「裏取り」し意思決定する層が一定規模で存在し続けることだ。SEOで求められる成果物は変わる。Googleの検索結果1位を取るためのコンテンツから、AIが引用したくなり、ユーザーが追加検索したときに最終確認の決め手になるコンテンツへ。求められる粒度や情報密度が変わるのであって、SEOそのものの価値が消えるわけではない。
AEO(Answer Engine Optimization)あるいはAIO(AI Optimization)という呼称は2026年に入って急速に定着しつつあるが、それらはSEOの後継ではなくSEOの拡張として捉える方が、現場の運用設計には合う。
広告主が今期に打つ手、3点
第一に、自社ブランドが日本語AI回答で何回・どのキーワードに対して引用されているかを計測すること。Microsoft Clarityの「Expanded AI Visibility」など、引用観測ツールが揃いつつある(Search Engine Landの解説)。
第二に、AI Overviewsが32%出現する想定でCPAモデルを引き直すこと。AI Overviews表示時にはCTRが下がる(白書および海外調査)。指名検索とインフォーマル検索でAI Overviewsの効きが違うため、コンバージョン経路をクエリ群別に再評価することが急務だ。
第三に、白書が予告する「日本でのAI検索広告解禁」を前提に、広告クリエイティブとフィードを準備すること。同白書は「日本への導入も近いと予想される」と明記している。Ads in AI OverviewsやAIモード広告が日本語で立ち上がった瞬間に、対応広告主と未対応広告主の差が開く局面が来る。
半年で4倍の伸びは「これから起きる変化」ではない。すでに起きてしまっている変化である。