予算はもう動いている
Search Engine Landが8月24日に取り上げたFractlの調査は、米国でAI可視化を担当するマーケティング意思決定者343人を対象にしたものだ(調査自体の公表は7月21日)。PPC Landが詳報した数字を並べると、業界の重心はすでに移っている。
- AI可視化に振り向けている予算は、検索・コンテンツ予算の平均24%
- 何らかの予算を配分しているのは82%、20%超を投じているのは43%。ゼロは18%
- 業種別では金融サービスが39%と突出。メディア・出版24%、B2C/EC 19%
- 職種別ではパフォーマンスマーケティング32%、SEO 31%に対し、コンテンツ20%、ブランド21%
一方で、呼び方は驚くほど動いていない。81%が社内では今も「SEO」と呼んでいる。GEOは19%、LLM最適化15%、AEO 10%。中間に立つ「AI search optimization」が48%で、外部を検索するときも46%がこの語、24%が素の「SEO」を使う。GEOで検索するのは12%、AEOは3%だ。
その予算が向かう先の地面は、週単位で動く
8月19日、Search Engine LandがPromptwatchの計測を報じた。RedditのChatGPT Search引用シェアが、7月18日〜8月7日の平均3.83%から、8月14日に1%を割り、8月17日までの平均0.52%まで落ちた。4日で86.4%減である。
先行する動きもあった。ChatGPT Searchのクエリfan-out挙動が変わったとされる8月8日、Redditのシェアは3%台後半から2%台半ばへ落ちている。そこから6日後に、二段目の崖が来た。同じ現象はGoogle側では観測されていない。AI Overviewsでは7月初旬の約2.5%から8月の約2.1%へ緩やかに下がっただけだ。
重要な留保として、Promptwatch自身が「このデータが示すのはいつ起きたかであってなぜではない」「知見は暫定的で、データ収集上の問題も排除できない」と明言している。一社のトラッカーの数字だけを根拠に戦略を変えるべきではない。
交差させると見えるもの:買うべきは順位ではなく検知
この2つを並べると、業界がいま置かれている状況が見える。予算の4分の1が、週単位で地面が動く場所に投じられている。しかもRedditは、長らくAIプラットフォームから最も引用されてきたソースだ。その巨大な既得ポジションですら、4日で1桁パーセント台から小数点以下へ落ちる。個社サイトのAI可視性が「積み上がるストック資産」ではないことは、これでほぼ確定した。
Fractlの調査で、最大の運用課題として最も多く挙がったのが「変化のスピードについていくこと」(28%)だったのは偶然ではない。効果測定(17%)、どのプラットフォームを優先するか(15%)、業界標準の不在(13%)を上回っている。現場は、測れないことよりも追いつけないことに困っている。
だとすれば、AI可視化予算で買うべきものは「今のポジション」ではない。変化を検知する仕組みだ。順位レポートは、翌週にはただの記録になる。PPC Landが同じ文脈で引くデータもこれを裏づける。プラットフォーム間の引用セットは月あたり約50%入れ替わり、プラットフォーム同士の重複は11%しかない。「AI検索で1位」という表現がどの程度の耐用年数を持つかがわかる。
反論:AI検索は本当にトラフィックを奪っているのか
もっとも、悲観一色でもない。Fractlの回答者のうち、過去1年でAI検索機能から中程度以上のトラフィック増を報告したのは29%、減少は19%だった。3対2で増加が上回っている。「AI Overviewsがオーガニックトラフィックを破壊した」という語り口は、少なくともこの調査では支持されない。
ただし規模による差はある。従業員5,001人超の組織では26%が減少を報告し、1〜50人の小規模事業者(17%)より高い。大きいサイトほど失うものが多い、という直感的な結論だ。
Google側は一貫して「良いSEOは良いGEOである」という立場を取っている。AI OverviewsもAI Modeも既存のランキングシステムの上に構築されており、根本的に異なる最適化の作法は不要だ、と。Fractlの回答者の79%がAI検索を「SEOの進化」と捉えていることは、この主張と整合する。
日本のマーケターへの示唆
日本語圏では、海外以上に「GEO」「AEO」という語が流通している印象がある。提案書のタイトルにも、セミナーの告知にも並ぶ。だがFractlのデータが示すのは、用語の流暢さで信頼を買えるのは初級の意思決定者だけだという冷たい事実だ。
信頼シグナルの1位は「測定可能で検証可能なケーススタディ」(34%)。用語の流暢さは9%で、4分の1以下である。しかも用語重視は個人貢献者で17%、マネージャー6%、ディレクター6%、Cレベル3%と、役職が上がるほど価値を失う。逆にレッドフラグの1位は「説明のないバズワードの多用」(36%)。Cレベルに限れば1位は「AIブランディングで包み直しただけの従来型SEO」が33%で、他の層の14〜15%の倍以上になる。決裁者が見ているのは、去年の提案書を置換で作り直したかどうかだ。
実務としてはこうなる。
- ベンダーは用語ではなくケーススタディで選ぶ。 「GEO対応」と書いてあるかではなく、検証可能な結果があるか。
- AI可視性はKPIではなくモニタリング項目に置く。 月次の順位報告ではなく、週次の変化検知。GA4でAI経由のリファラルを分離しておく。
- プラットフォームの優先順位は自社データで決める。 調査での注力先はChatGPT Search 34%、AI Overviews 23%、Gemini 16%、Perplexityはわずか1%。業界の話題量と、実際に予算が向かう場所は一致しない。
最後に出どころも明示しておく。Fractlは自らAIワークフロー構築サービスを手がけており、調査対象市場の利害関係者である。サンプルは米国343人で、日本市場の数字ではない。それでも「用語で売る側と、結果で買う側」のズレという構造は、そのまま輸入できる。
出典
- Search Engine Land — AI search is here, but marketers still call it SEO
- PPC Land — Marketers still call it SEO as 81% reject GEO pitch, Fractl finds(調査詳報)
- Fractl(一次ソース)— AI Search Optimization Language 調査
- Search Engine Land — Reddit's ChatGPT Search citations fell 86% in four days: Report
- Promptwatch(一次ソース)— Reddit citations are dropping in ChatGPT