2026年9月2日(水)
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「もっと見る」を押す前に、答えは全部出ている——AI Overviewの既定展開で、10本の青リンクはどこまで沈むのか

8月27日、AI Overviewが「もっと見る」を経ずに全文展開し、AIモードの入力欄まで既定で開く挙動が確認された。Googleは「一部のクエリで動的に展開する」と公式に認めている。同じ週、AIモードではサインイン要求のテストとホテル予約機能の投入も進んだ。3つの動きを重ねると、Googleが検索を「回答・対話・取引」の一体型に組み替えつつあることが見える。計測側で何が壊れるかも含めて整理する。

WebTech Journal 編集部

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検索結果を開いた瞬間、AIの回答が最後まで表示され、その下に「何でも聞いてください」の入力欄が開いている。あなたが見慣れた10本の青いリンクは、スクロールしないと視界に入らない。8月27日から一部のクエリで起きているのは、そういうことだ。

「Show more」が消えたのではない、押す必要がなくなった

この挙動を最初に指摘したのはNectivのChris Long氏で、8月27日にXへ投稿した。Search Engine RoundtableのBarry Schwartz氏が翌28日に再現を確認している。

従来のAI Overviewは、回答の冒頭だけを表示し、続きを読むには「もっと見る(Show more)」をクリックする必要があった。新しい挙動では、そのクリックが不要になる。展開後の表示はAIモードで得られる回答に近く、追加質問の入力欄まで最初から開いた状態になる。

Googleはこれを否定していない。広報担当者はSearch Engine Roundtableに対し、システムが有用と判断したトピックについてAI Overviewが動的に展開する場合があり、この体験によってユーザーは検索をより有用だと感じ、追加の探索により深く関与している、と回答した。検索プロダクト担当VPのRobby Stein氏も28日にXで補足し、すでにスクロールを始めているユーザーには展開が中止される(読んでいる位置を失わせないため)と説明している。

つまり、UI上の偶然や不具合ではない。意図された仕様だ。

同じ週に起きた、あと2つのこと

この変更を単体で読むと「またゼロクリックが進んだ」で終わってしまう。だが同じ週、AIモード周辺では別の動きが2つ走っていた。

ひとつは、AIモードの回答内でサインインを促すテストだ。大きなGoogleロゴと「Sign in to save your...」というボタンが表示される。もうひとつは、AIモードへの旅行機能の追加で、航空券の価格追跡、マイル・ポイントレートの表示、そしてホテル予約が対話の中で完結するようになった。

本誌が8月27日に報じたAIモードの回答内リンクカルーセルとあわせて並べると、輪郭がはっきりする。回答(AI Overview)、対話(AIモードの入力欄)、取引(ホテル予約)、そして本人確認(サインイン)。これらが1枚のページの中に積み上がっている。

ここからは筆者の見立てである。 Googleがやろうとしているのは「検索結果ページの改良」ではなく、検索を対話型アシスタントへ置き換える移行工程の前倒しだと考えられる。青リンクを下げるのは目的ではなく、AIモードを既定の入口にした結果として起きている副作用に近い。副作用のほうが痛いのは、リンク先にいる側だけだ。

「全クエリで起きる」と読むのは早い

一方で、慎重に見るべき点もある。Googleは「一部のクエリ」「システムが有用と判断したトピック」と明確に限定している。すべての検索でこれが起きているわけではなく、現時点で対象クエリの範囲は公開されていない。スクロール中は展開が中止される仕様も、体感的な影響を弱める方向に働く。

また、AI Overviewの展開がクリックにどう影響するかを示す公開データは、この件についてはまだ存在しない。「壊滅的な打撃」と断じるのも、「大した話ではない」と切り捨てるのも、現時点では等しく根拠が薄い。

計測が追いつかないという、もうひとつの問題

実務でより厄介なのは、この変化を自分のデータで観測できないことだ。

Googleは6月、Search Consoleに生成AI機能のパフォーマンスレポートを導入すると発表した。AI OverviewやAIモードを含む生成AI機能でのインプレッションを、独立したビューで確認できるようになる。ただしこのレポートで取得できるのはインプレッションのみで、クリック、CTR、クエリは含まれない。展開仕様が変わって表示位置が変わっても、その差分をレポート上で切り分けることは現状できない。

しかも本誌が8月27日に報じたとおり、Googleは検索結果のリンクをgoogle.com/goto経由のリダイレクトに切り替えている。参照元の見え方も、順位計測ツールの前提も、同時に動いている。「AI検索の影響を測る」という仕事は、測定対象と測定手段が同時に変化している状態に置かれている。

日本のマーケターが今週やること

日本でこの挙動が広く出ているという確認は、本稿執筆時点では取れていない。ただし過去のAI Overview関連の展開を見るかぎり、米国での動きが日本語検索に降りてくるまでのラグは短くなり続けている。準備は前倒しでよい。

  1. 自社の主要クエリを、ログインした状態としていない状態の両方で目視する。 サインイン要求のテストが進むということは、体験がアカウント単位で分岐しはじめるということだ。順位計測ツールの数値は、ログアウト状態の世界を見ている。
  2. AI OverviewやAIモードで自社が引用されているかを、手作業でよいので記録に残す。 Search Consoleのインプレッションだけでは、どんな文脈で引用されたかがわからない。
  3. 「検索順位」から「回答内での言及」へ、レポートの主語を切り替える準備をする。 順位1位でも、青リンクが折りたたみの下にあれば意味が変わる。
  4. 予約・購入がプラットフォーム内で完結する領域では、自社サイトへの流入を前提にしないKPIを用意する。 旅行が先行しているだけで、次に来るのは飲食、美容、チケットあたりだろう。

青リンクが消えるわけではない。ただ、青リンクにたどり着く前に判断が終わる割合が上がっていく。備えるべきはその一点だ。

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