2026年9月2日(水)
SEO

同じ質問を2回して、Geminiが同じ店を挙げたのは7%だけ——「Grounding Drift」が壊すのは順位ではなく、AI可視性を測るという行為そのもの

Steady Demandが米50都市圏・1,487件のローカル検索クエリから14,472件の引用を分析した結果、Geminiに同じ質問を繰り返しても引用元が重なるのは約40%、同じ店舗を1位に挙げたのは約7%だった。対照実験のGoogleローカルパックは約90%。さらにGeminiとChatGPTでドメインが一致したのは8%、推薦企業が一致したのは4.2%。「AI順位チェック」という日課が成立しない理由と、代わりに何を測るべきかを整理する。

WebTech Journal 編集部

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AI検索での自社の見え方を、朝いちで一回叩いて確認していないだろうか。その一回は、ほとんど情報を持っていない。

ローカルSEO調査会社Steady Demandが8月19日に公開した分析は、米国50都市圏・1,487件のローカル検索クエリから集めた14,472件のAI引用を対象にしている。共同創業者のBen Fisher氏がこの調査で名付けた現象が「Grounding Drift」だ。

数字が示す不安定さ

同じクエリをGeminiに繰り返し投げたとき、引用されたソースが重なったのは約40%。そして推薦された1位の企業が同じだったのは、わずか約7%である。

対照実験としてGoogleのローカルパック(地図付きの店舗枠)を同じ条件で回すと、同じ最上位リスティングが返ってきたのは約90%。この差が、Grounding Driftの正体だ。従来の検索結果は「同じ質問には同じ答え」を返す前提で設計されており、だからこそ順位という尺度が意味を持った。Geminiのローカル回答にはその前提がない。

Fisher氏は、1回のAI検索はスナップショットとして扱うべきで、長期的な可視性の信頼できる指標にはならない、と述べている。

エンジンをまたぐと、ほぼ別物になる

同じ1,487クエリをChatGPTにも通した結果はさらに厳しい。両プラットフォームが同じドメインを引用したのは8%、同じ企業を1位に推薦したのは4.2%にとどまった。

引用元の性質も割れている。Geminiは主に企業自身のWebサイトを引用し、ChatGPTはRedditやディレクトリへの依存が明確に強い。つまり「AI対策」を単一の施策として語ることに、そもそも無理がある。Geminiで勝つための投資とChatGPTで勝つための投資は、同じ予算枠に入れて比較できるものではない。

60%が自社サイト——ディレクトリ前提の集客が揺れる

この調査でもう一つ目を引くのが引用元の分布だ。Geminiの引用のうち約60%が企業自身のWebサイトを指しており、これはディレクトリ、レビュープラットフォーム、フォーラムの合計を上回る。2位はReddit(13.7%)で、Angi、Thumbtack、HomeAdvisorといったローカルサービス系ディレクトリのカテゴリ全体を単独で上回った。

ここは慎重に読む必要がある。調査対象は米国50都市圏であり、日本のローカル検索環境とは構造が違う。飲食なら食べログ、美容ならホットペッパービューティー、不動産ならSUUMO——日本ではポータルの情報量と更新頻度が店舗自社サイトを圧倒しているケースが多く、Geminiが日本語で同じ比率を示す保証はない。日本語での同種の検証はまだ公開されていないため、60%という数字をそのまま日本の商談資料に持ち込むのは誤用になる。

そのうえで、筆者は方向としては日本にも来ると見ている。理由は引用の性質だ。AIが引用するのは「そのビジネスについて一次情報が構造化されて置かれている場所」であり、ポータルの掲載枠は他店と同じテンプレートに情報が丸められる。差分が出るのは自社サイト側にしかない。ポータル経由の集客を否定する話ではなく、ポータルに預けきりだと引用先として指名されない、という話である。

「時間軸のぶれ」と「試行軸のぶれ」は別問題

本誌が同日に報じたChatGPTのReddit引用が4日で86%消えた件は、時間軸のぶれだった。ある日を境に引用構成が変わる。今回のGrounding Driftはそれとは別の、試行軸のぶれである。同じ日、同じ質問、同じ条件でも答えが揃わない。

この2つが同時に成立する環境で「今日1位でした」という報告に意味はない。それは1回のサイコロの目を報告しているのに近い。

もちろん反論はある。Grounding Driftの一部は、パーソナライズや位置情報、モデルの生成上の揺らぎといった仕様由来のものであり、多数のユーザーの平均的な体験としては収束している可能性がある。また今回の調査はローカル検索という、そもそも「近ければどの店でもよい」性質の強い領域に限られる。BtoBの指名検索や製品比較で同じ7%が出るとは限らない。Steady Demand側もエンジンの内部を観測しているわけではなく、外形的な出力を数えているにすぎない。

計測を「単発チェック」から「分布」へ変える

実務で今日から変えられるのは、測り方だ。

試行回数を固定して出現率で見る。 主要クエリごとに最低でも10〜20回の試行を回し、「自社が引用された回数 ÷ 試行回数」を指標にする。1位かどうかではなく、出現率が先月比で上がったか下がったか。これなら7%の世界でも意味のある差分が取れる。

エンジン別にKPIを分ける。 ドメイン一致8%という数字は、GeminiとChatGPTを一つの「AI流入」でまとめて報告することが情報を潰すことを意味する。少なくとも引用元の分布は別々に持つ。

引用元の入れ替わりを追う。 Redditが減った分どこが増えたのか、ポータルが減った分自社サイトが増えたのか。順位ではなく構成比の移動が、いま唯一読める信号である。

レポートに再現性の注記を入れる。 社内やクライアントに「AIでの見え方」を報告するなら、何回試行のうち何回か、いつ測ったかを併記する。この一行がないレポートは、来月の自分を裏切る。

AI検索の可視性は、まだ「順位」という言葉が使える段階にない。使えるのは確率だけだ。

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