「AIに買い物を手伝わせる」ことへの日本の消費者の距離感が、数字で見えてきた。Shopify Japanが発表した調査(プレスリリース)によれば、日本の消費者の61%は、最終的な購入手続きを自分で行うなら、AIが商品をカートに入れ必要情報を入力することに抵抗がない。この割合は調査対象9市場で最も高い。一方、購入そのものをAIに任せられる人は23%にとどまる。
調査の中身と読み方
調査はSapio Researchが実施した。日本の消費者2,000人(2026年7月)と、事業者の意思決定者500人(同8月)が回答している。主な数字は次の通り。
- 今年のホリデーの買い物でAIを使う可能性がある:52%
- 買い物でAIツールを「時々」以上使う:24%(25〜34歳は44%)
- 事業者のうち、商品情報を詳細・正確・最新に保てている:36%
- 事業者のうち、類似商品と比較しやすくできている:31%
ただし、これはプラットフォーム事業者自身の調査であり、抽出方法や誤差範囲は記事に記載がない。プレスリリースにはグローバルのQ2データとして、AI経由の訪問者のコンバージョン率がオーガニック検索より約80%高いという記述もあるが、これは同社の集計値で、第三者による検証は確認できない。数字は方向を示す材料として扱うのが妥当だ。
「許容」と「委任」のあいだに、設計の余地がある
筆者が注目するのは61%と23%の間にある38ポイントの差だ。消費者は、AIが探し、比較し、カートまで運ぶことは受け入れる。決済の最終操作は手元に残したい。つまり当面の主戦場は「自動購入」ではなく、AIによる商品探索と比較の段階になると考えられる。この段階で選ばれるかは、商品情報の質で決まる。事業者側で商品情報を十分に整えられているのが36%という数字は、ここに伸びしろがあることを示している。
Metaが描く「エージェントと店舗の接点」
供給側の動きも出ている。Social Media Todayによれば、Metaは小売・決済・CX分野のパートナーやSierraと、AIエージェントと企業の連携に関するプロトコルを設計しており、「誰でも実装できるよう公開する」としている。認証、消費者のコントロール、エージェントの行動の可視化を扱うという。背景には、セキュリティや負荷への懸念から、サイト側がAIエージェントを遮断する動きがあるとされる。同記事は、ボットが取引を担うほどブランドが顧客接点やアップセル、ディスプレイ広告収益を失う可能性にも触れている。詳細な仕様や提供時期は、現時点で示されていない。
年末商戦までにできる準備
反論も添えておく。AI経由の購買が伸びても、全体の売上が増える保証はなく、プラットフォーム側に集客の主導権が移るリスクもある。それでも、次の三つは仮にAI経由が伸びなくても無駄にならない。
- 商品情報(仕様、在庫、価格、配送条件)を、人にもAIにも一意に読める形に整える
- 競合と比べた違いを、商品ページで文章として明示する
- 流入元の分析で、AIチャットボット経由の訪問を分けて見られるようにする
「AIが選ぶ」前提のECでは、広告やデザインより先に、商品データの正確さが売上を左右する可能性がある。年末商戦の前に、まず自社の商品情報を見直したい。