「指名検索は、AI Overviewの影響を受けにくい」。SEO・広告運用の現場で長く共有されてきたこの前提が、9月に揺らいだ。
事実:9月下旬、ブランド検索のAI Overview表示率が急伸
Search Engine Landの報道によると、SEO計測ツールのDemandSphereは、ブランド名を含むキーワードでのAI Overview表示率が9月初旬の約26%から、月末には80%超へ上昇したと報告している。同社の公開レポートの日次推移は次のとおりだ。
- 9月初旬:約27%
- 9月18日:57.43%
- 9月27日:90.48%(ピーク)
- 9月28〜29日:80.23〜82.06%で推移
別の検証として、Nectivの共同創業者Chris Long氏はSerpApiで企業ブランド100社を調べ、93社でAI Overviewが表示されたとしている。
分かっていないこと:クリックへの影響と原因
ここは冷静に読む必要がある。DemandSphereの計測は「AI Overviewが出たか」であり、そのブランド自身が引用されたかは問わない。クリック率の変化は両者とも測定していない。調査対象キーワード数も公開レポートには明記がなく、Googleからの公式発表も確認できない。つまり現時点で言えるのは「表示が増えた」までで、「指名流入が減った」とは言えない。
考察:指名検索は「守りの資産」から「測るべきリスク」へ
以下は筆者の見立てだ。指名検索は広告でもSEOでもCVRが高く、多くの企業が成果の土台にしてきた。ここにAI Overviewが差し込まれると、公式サイトより先にAIが要約したブランド像(口コミ、価格、競合比較)をユーザーが読む場面が増える可能性がある。本誌が先に報じたGoogleが約100サイトにAI回答の“出演料”を払い始めた件が示すように、Googleは回答面へのコンテンツ供給を制度化しつつあり、回答面の拡大は一過性の実験とは考えにくい。
一方で、反対の見方もある。ブランド名での検索は、ユーザーが公式サイトに行く意図が明確で、要約を見ても結局クリックする層が多いかもしれない。実際、表示率の上昇とクリック減少の因果は未検証だ。楽観も悲観も、データが出るまでは仮説にとどまる。
日本のマーケターが今週やること
日本語検索への波及時期は未確認だが、米国の変化が日本に届くまでの時間差は、過去のAI Overview展開でも数か月程度だった例が多い(筆者の観測であり、公式な統計ではない)。準備は今からできる。
- Search Consoleで指名クエリのクリック数・CTR・平均掲載順位を週次で記録する。9月下旬を境にした変化を後から検証できるようにする
- 自社ブランド名を自分で検索し、AI Overviewの内容を確認する。誤情報や古い価格、競合との比較表現が含まれていないかを見る
- 公式サイトに、AIが引用しやすい一次情報(料金、仕様、FAQ、会社概要)を整理して置く
指名検索が減るかどうかは、まだ誰も証明していない。だからこそ、先に自社のベースラインを取った企業だけが、変化が本物かどうかを判断できる。