Googleが、AI Overviews・AI Mode・Geminiの回答に貢献したサイトへ報酬を支払う試験運用を進めている。The Informationの報道を引いたPPC Landによれば、対象は約100の事業者。数字を見ると、期待と落胆が同居している。
確認できた事実:最高は年100万ドル超、多くは0.1%未満
報じられた金額の幅は大きい。早期に参加した1社は年100万ドル超、後発の1社は累計5万〜6万ドル。一方、小規模サイトの中には数か月で1,000ドル未満というケースがあり、中小規模の多くは広告収益の0.1%未満とされる。The Next Webは、アニメやゲームなど専門性の高い分野ほど受取額が大きい傾向も伝えている。
支払いの条件は「回答の生成段階で大きく貢献したか」。生成後にリンクとして添えられただけ、あるいは事実確認に使われただけのページは対象外とされる。報酬はSearch Console内の専用パネルで確認する仕組みで、9to5Googleは、Googleが6月に「生成AI回答の鮮度と事実性に貢献するサイトと提携する新しい方法を試す」と説明していたことも伝えている。
見えない算定式という最大の論点
最大の問題は不透明さだ。PPC Landによると、何が「大きな貢献」にあたるのか、月ごとの変動理由は参加者に説明されていない。AIパフォーマンスのレポートにはクリックデータも含まれず、受取額を独立して検証する手段がない。大手の一部は、より良い条件を引き出すために参加を見送っているという。
ここから先は筆者の考察になる。この制度が示すのは、検索の評価軸が「クリックされたか」から「回答の材料になったか」へ移りつつあるという構造変化だ。本誌が先日取り上げたとおり、AI Modeは外部クリックを減らしている。クリックで稼げなくなった分を貢献度で補填する発想だが、算定式が非公開のままでは、事業者は自社の価値を自分で測れない。「0.1%」という水準は、減った流入の穴埋めとしては小さいと見るのが妥当だろう。
異論:これは補償か、それとも囲い込みか
一方で、別の見方もある。算定の主導権をGoogleが握ったままなら、報酬は規制当局への「対応している」というアピールとして機能しうる。TNWは、英国の競争当局がAI機能からのオプトアウトを求めていること、欧州委員会が流入への影響を調べていることを背景として挙げる。報酬を受け取ることで、後の交渉や訴訟で不利にならないか。この点は現時点で確認できる材料がなく、判断を保留すべきだ。
日本のサイト運営者は何をすべきか
参加地域の詳細は報道からは確認できず、日本のサイトが対象かどうかは不明だ。ただ、日本でも日本新聞協会がAI検索について国に制度整備を求める声明を4月に公表している(時事通信)など、論点は共有されている。今できる準備は三つある。
- Search Consoleに新しいパネルが出ていないか、毎月確認する。
- 自社が「生成段階の素材」になりうる一次情報(独自調査、専門解説)に投資を寄せる。
- サーバーログでAIボットの取得頻度を把握し、貢献度の議論に備えて自社データを持つ。
報酬を前提にした事業計画は時期尚早だが、「貢献度」が新しい通貨になる流れは、すでに動き始めている。
出典
- Google pays about 100 publishers for AI answers, some under $1,000(PPC Land)
- AI contribution pilot: Google pays 100 publishers, some under $1,000(The Next Web)
- Google AI contribution pilot tests paying websites(9to5Google)
- Daily Search Forum Recap(Search Engine Roundtable)
- AI検索、国は制度整備を 新聞協会が声明公表(時事通信)