「AI概要やAIモードに引用されるとクリックが奪われる」という通説に、逆方向の小さなデータが出てきた。SEO専門家Cyrus Shepard氏が自サイトで実施した検証では、AI機能への露出を止めたところ、通常のオーガニッククリックまで減ったという。ただし、この結果は1サイト・短期間の事例で、解釈には慎重さがいる。
検証の概要と、報じられている数字
Search Engine Roundtableの報道によると、Shepard氏は1つのサイトでAI概要・AIモードへの表示をオプトアウトし、期間中のインプレッション、クリック、CTRを前後で比較した。報じられている内容は次のとおりだ。
- 当該サイトでAI関連のインプレッションはサイト全体の約8%だった
- AI経由のCTRは推定0.9%。これは全体のCTRとインプレッションから、既知のAIインプレッションを差し引いて算出した推計値で、直接計測した値ではない
- オプトアウト期間中はAIインプレッションがゼロになり、通常のオーガニッククリックも減少した
- Shepard氏は「SERPハロー効果」、つまり検索結果の複数の場所に出ることで全体のクリックが増える可能性を仮説として挙げている
原典のLinkedIn投稿は本誌では取得できておらず、使用したオプトアウトの具体的な設定も確認できていない。数値はSearch Engine Roundtableの記述に依拠している点をお断りしておく。
この結果を一般化できない理由
同記事自体が複数の留保を挙げている。比較対象は1サイトのみで、サイト全体の平均掲載順位は新規記事やブランド検索の影響で上がっていた。全体のインプレッションも減っている。AI概要は画面に残ったまま、自サイトの引用だけが外れた状態であり、「AI概要がある検索」と「ない検索」でのクリックを比べたものでもない。因果関係を示す実験ではなく、前後比較の観察だ。
加えて、GoogleのAI機能に関するヘルプは、AI概要・AIモードでの表示はSearch Consoleのパフォーマンスレポートで「ウェブ」検索タイプの一部として集計されると説明している。つまり公式のレポートではAI経由のクリックを切り出して見られない。0.9%という推計が出てくるのは、まさにこの計測の空白があるからだ。
筆者の見立て:「引用を避ける」より「測れる状態にする」
ここから先は考察だ。この事例が示唆するのは「AIに引用されたほうが得」という結論ではなく、AI露出の損得を、多くのサイトが検証できていないという事実である。日本語のAIモードは2025年9月に提供が始まった。国内サイトのデータはまだ薄く、海外の1事例を日本の自社サイトにそのまま当てはめるのは危うい。
対立する見方も当然ある。引用されても、回答内で用が済んでクリックされなければ、露出はブランド認知にとどまる。逆に、引用がブランド想起を高めて指名検索を増やすなら、ハロー効果は存在し得る。どちらが優勢かはサイトの性格、たとえば情報提供型か購買直結型かで変わるはずだ。
実務で押さえたい3点
- オプトアウトを急がない:スニペット制限やnoindexはAI機能だけでなく通常検索の表示にも影響し得る。ヘルプ上、AI専用の独立した解除手段は確認できなかった。
- 自社データで検証する:AI概要が出やすいクエリ群と出にくいクエリ群を分け、指名検索の推移も含めて前後比較する。施策や記事公開の時期は必ずメモする。
- KPIを組み替える:クリック数だけでなく、指名検索インプレッションと、引用有無の目視モニタリングを併走させる。
AIモードのリンク増加を巡る動きは本誌の過去記事で整理した。今回の事例は、その「測るべき指標」の議論を補強する材料と言える。