学齢が上がるほど利用率が下がる、日本の「AI利用曲線」
サイバーエージェント次世代生活研究所が2026年7月13日〜31日に実施した調査(有効回答1,648サンプル、小学生からゆとり世代までが対象)によれば、生成AIの日常的な利用率は学齢とともに上昇し、高校生で83.3%、大学生で82.4%とピークを迎える。ところが社会人になると一転して下落し、Z世代社会人で56.7%、ゆとり世代で54.6%と、高校生から社会人への移行だけでおよそ30ポイントの低下が見られた。
利用サービスはすべての年代でChatGPTが首位で、高校生の68.8%、大学生の67.2%がChatGPTを利用していると回答している。学生時代は複数サービスを使い分ける傾向が広がる一方、社会人になるとその探索的な使い方自体が失われていく可能性がうかがえる。
「年齢は関係ない」——海外調査が突きつける逆説
これだけを見れば「若い世代ほどAIを使いこなす」という直感的な仮説を裏付ける結果に思える。しかし米国の消費者データ企業Numeratorが実施した調査は、この前提に一石を投じている。同調査では「年齢は生成AI受容の差をほとんど説明しない」という結果が示され、利用率トップは77%のZ世代ではなく、80%のミレニアル世代だった。
さらに興味深いのは世代内の分断だ。Z世代の非利用者のうち57%がAI導入そのものを拒否しており、これはベビーブーマー世代の非利用者(32%)より高い拒否率だ。Z世代利用者の30%は「AIが役に立たない」と感じており、これは全体平均の2倍にあたる。若い世代は一枚岩の「AI推進派」ではなく、強い推進派と強い拒否派に二極化しているというのが実態に近い。
マーケター自身の「スキル停滞」問題
企業側・マーケター側のデータも見ておく必要がある。米業界メディアDigidayの調査報道によれば、マーケターのAI活用率は2022年の44%から2025年には86%まで急伸した。しかしその内実を見ると、既製のAIツールをそのまま使う層が85%を占める一方、既存の大規模言語モデルを使って自社向けにカスタムツールを構築している層は40%、独自LLMを開発している層はわずか19%にとどまる。「使ってはいるが、使いこなせてはいない」という状態が、業界標準になりつつあることを示すデータだ。
二つの調査をどう読むか
日本のデータが示す「学生高・社会人低」という世代間の落差と、米国調査が示す「年齢では説明できない」という結果は、一見矛盾するように見える。しかし考察を加えるなら、両者は別の変数を測っている可能性が高い。日本の調査は「利用しているかどうか」という参入障壁の低さを、米国の調査は「利用した上でどこまで使いこなしているか」という熟達度の差を捉えているとも解釈できる。だとすれば、日本の社会人が生成AIを使わなくなる背景には、単純な年齢要因ではなく、業務での正式な利用許可・研修機会の不足という組織的な要因が絡んでいる可能性が高い。
もっとも、この解釈は二つの異なる調査(国、対象者、設問設計が異なる)を並べた考察であり、断定はできない。今後、日本国内で「社会人がなぜAIから離れるのか」を直接尋ねる調査が待たれる。
マーケティング組織が着手すべきこと
若手採用者はAIネイティブな学生時代を経て入社してくる一方、既存社員の多くはツールを試した経験はあっても、業務プロセスに組み込むところまで至っていない。「ツールを配布して終わり」ではなく、業務フローそのものをAI前提で再設計する研修への投資が、組織の生成AI活用度を左右する分水嶺になりそうだ。Digidayの指摘通り、「新しいツールの使い方」ではなく「新しい働き方」への転換を後押しできるかどうかが、今後1年のマーケティング組織の競争力を分けるだろう。