PhotoshopのAI生成塗りつぶしでバナーの背景を直す。Canvaで商品画像をAI拡張する——日本の制作現場で当たり前になったこれらの作業が、7月から「広告に開示ラベルが付くかどうか」を左右する要素になった。GoogleとMetaが、AI生成広告のラベル表示運用をほぼ同時に本格化させたためだ。
Googleの仕組み:「この広告の作られ方」と自己申告制
Googleは7月9日、広告主体情報画面(My Ad Center)に「How this ad was made(この広告の作られ方)」パネルを導入し、目の前の広告がAIで作成・編集されたかをユーザーが確認できるようにしたと報じられている。あわせて7月中に、AIラベルの設定機能をGoogle広告、ディスプレイ&ビデオ360、キャンペーンマネージャー360、Merchant Center、Google広告エディタの5製品へ順次展開している。
背景にあるのは規制だ。Googleはポリシーページで、EU・インド・米ニューヨーク州などでAI生成・編集素材を含む広告への開示表示を求める規制があることを明示し、対応手段としてクリエイティブへの直接表示またはラベル設定の利用を案内している。
重要なのは責任の置き場所だ。Google自社の生成AIツールで作った広告は自動的に開示される一方、サードパーティのAIツールで作った場合の開示は広告主のチェックボックス申告に委ねられ、Googleは申告の真偽を検証しないとされる。さらに「ラベル設定の利用が各規制への準拠を保証するものではない」との注記もある。つまり、開示漏れのリスクは広告主が負う設計だ。
Metaの仕組み:C2PAで自動検出、未開示は審査に響く
Metaのアプローチは対照的だ。広告マネージャ内の生成AI機能(背景生成・画像生成・アニメーション追加)を使った広告には自動で「AI情報」ラベルが付く。さらに、Photoshopの生成塗りつぶしやDALL-E、Canva AIといった外部ツールでの生成・編集も、ファイルに埋め込まれたC2PA(Content Credentials)メタデータで検出してラベルを付与すると報じられている。フォトリアルなAI生成人物を含む広告では、ラベルが「Sponsored」表記の隣という目立つ位置に表示され、未開示のAIコンテンツは広告却下の理由になり得るという。
自己申告に委ねず「ファイルの来歴データで機械的に検出する」方式は、広告主が意図しなくてもラベルが付くことを意味する。制作会社がAI編集を使ったことを広告主が把握していないケースでも、配信面にはラベルが出る。
思想は逆でも、行き先は同じ
「検出して強制するMeta」と「申告させて責任を広告主に置くGoogle」。設計思想は逆だが、方向は一致している——AI利用は開示される前提の時代に入った、ということだ。そしてMetaの実装により、C2PAメタデータが広告審査の事実上の業界標準になりつつあると筆者は見る。制作ツール側もAdobe・Canvaなど主要ベンダーがC2PA対応を進めており、「気づかないうちに来歴が記録され、気づかないうちにラベルが付く」流れは今後強まる可能性が高い。
この動きは、TikTokが広告制作にはAIを開放しつつライブ配信ではAI音声を禁じた線引きとも重なる。プラットフォーム各社は「AIをどこまで許すか」ではなく「AIをどう可視化して管理するか」の段階に入っている。
日本の広告主が今すぐ確認すべきこと
日本には現時点でAI広告のラベル表示を直接義務付ける法規制はない。だがプラットフォームのルールはグローバルに適用されるため、国内配信でも他人事ではない。確認すべきは3点ある。
第一に、制作フローの棚卸し。どの工程でどのAIツールを使っているか、制作会社を含めて把握できているか。第二に、書き出し設定の確認。使用ツールがC2PAメタデータを埋め込むか、設定で制御できるかを把握しておく。第三に、ラベルの効果検証。AIラベルがCTRやCVRに与える影響はまだ十分なデータがなく、悲観する段階ではない。ラベルが逆に透明性のシグナルとして信頼を高めるという見方もある。自社の配信で差分を計測し、事実で判断する体制を作ることが、この過渡期の最も確実な備えになる。