2026年11月7日(土)
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「予算による制限」のCPCが中央値で15.8%上昇——Googleが8月に終わらせた「入札抑制」の正体と、今すぐ見るべき3つの数字

目標CPA・目標ROASで「予算による制限」が出ているキャンペーンのCPCが、8月17日を境に上がっている。Googleは公式ヘルプで同日からの入札挙動変更と8月27日の完了を認めた。Smarter Ecommerceの分析では予算制限キャンペーンのCPC中央値が15.8%上昇する一方、非制限キャンペーンは13%下落している。安いオークション在庫が予算に余裕のある広告主へ移動している可能性がある。何を測り直すべきかを整理した。

WebTech Journal 編集部

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Google広告の管理画面を開いて、「予算による制限」と表示されているキャンペーンのCPCを8月17日の前後で並べてみてほしい。上がっているなら、それは運用の失敗ではない。Googleが入札の前提そのものを書き換えた結果だ。

公式ヘルプが認めた「8月17日開始・8月27日完了」

Googleはヘルプドキュメントに、目標ベースの入札戦略(目標CPA・目標ROAS)を使う「予算による制限」状態のキャンペーンについて、2026年8月17日にグローバル展開を開始し、8月27日に完了したと明記した。新しい入札挙動はすでに対象アカウント全体で有効になっている、とも書かれている(Search Engine Roundtableが9月15日に確認)。

変更の中身は単純だ。従来、予算に制約のあるキャンペーンでは、Smart Biddingが「最も勝ちやすいオークション」に絞って保守的に入札する傾向があった。目標CPA 50ドルのキャンペーンが実績35ドルで着地する、といったことが日常的に起きていた理由のひとつがこれだ。Googleはこの挙動を意図したものではないとし、今後は広告主が設定したターゲットにより近い成果を出すよう最適化すると説明している。

Search Engine Journalが7月に報じたGoogleの補足によれば、予算が自動で増えることはなく、目標値が勝手に書き換わることもない。ただしGoogleは「現在の成果水準を維持したい広告主は、展開前にターゲットを下げる必要があるかもしれない」と明言し、影響範囲を特定するためのBid Target Adjustment Toolと管理画面通知を用意した。つまり「成果が変わる」ことをGoogle自身が事前に認めていた変更である。

数字は「安い在庫の移動」を示している

Smarter Ecommerce(smec)のHead of Ecommerce Insights、Mike Ryan氏による更新後データの分析が、Search Engine Landで9月17日に報じられた。数字は以下の通り。

  • 予算制限のある目標ROASキャンペーンのCPC中央値:0.38ユーロ → 0.44ユーロ(+15.8%)
  • 予算制限が一度もなかったキャンペーンのCPC:同期間に13%下落し0.33ユーロ
  • 予算制限キャンペーンのインプレッションシェア中央値:40% → 31%
  • 掲載順位による損失:約45% → 約30%
  • 予算による損失:約4% → 約33%

更新前は、予算制限キャンペーンの半数超がROASターゲットを上回っていた。非制限キャンペーンで超過していたのは30%にとどまり、57%はターゲット通りに着地していた。この非対称が、今回の更新でほぼ解消された形になる。

注目すべきは3つ目以降だ。「順位で負けていた」が「予算で止まった」に置き換わっている。これは、Smart Biddingが以前のように入札を絞って参加機会を引き延ばすのをやめ、設定通りの強さで入札して予算を使い切るようになったことを意味する。

恩恵を受けるのは、予算に余裕のある広告主だ

Ryan氏は、これまで予算制約のあるキャンペーンが拾っていた安価なオークション機会が、予算制限のない広告主へ移っている可能性を指摘している。非制限キャンペーンのCPCが13%下がったという数字は、その見立てと整合する。

ここからは筆者の考察になるが、この変更は「予算額そのものが競争力になる」方向への一歩だと見ている。従来のSmart Biddingは、予算が小さい広告主に対して一種の緩衝材として働いていた。安いところだけを拾って効率を演出する、という挙動がそれだ。その緩衝材が外れれば、予算規模の差がそのままオークションの結果に出やすくなる。日本の中小規模アカウント——日予算数千円から数万円で回している大量のキャンペーン——ほど、影響は体感しやすいはずだ。

「わざと賢くなくなるのか」という批判と、Googleの理屈

この変更には発表時点から強い異論が出ていた。PPC業界で知られるKirk Williams氏はLinkedInで、なぜシステムが可能な限り効率を追うのをやめるのか、予算制限時に「より良いオークションを探さなくなる」のなら、それは予算制限下でわざと賢くない挙動を選ぶシステムを作っているということではないか、と問いかけている。

一方でGoogleの言い分にも筋はある。ターゲットを50ドルに設定しているのに35ドルで着地するということは、広告主が許容していたはずの15ドル分のコンバージョン機会を取り逃していた、とも読める。予算を増やしたときに成果がどう動くか読めないという予測不能性は、スケールさせたい広告主にとっては実害だ。「効率の良さ」と「設定通りに動くこと」は、実は同じものではない。

どちらが正しいかは広告主の状況によって変わる。予算を増やす予定がないなら前者の批判が刺さるし、増やす前提で運用しているなら後者の理屈が効く。

今週やるべき3つのこと

  1. 8月17日前後の比較を作る。 「予算による制限」が出ているキャンペーンについて、8月上旬(8/1〜8/16)と9月上旬で、CPC・インプレッションシェア・「予算による損失率」「ランクによる損失率」を並べる。予算損失率が跳ねていれば今回の影響を受けている。
  2. ターゲット値を実績ベースで再設定する。 更新前に目標を大きく上回っていたキャンペーンは、その実績値が本来の実力だった可能性がある。目標CPAを従来の実績付近まで下げるか、予算を上げる。放置すると「設定通りの悪い数字」に収束していく。
  3. 他の変更との交絡を切り分ける。 同じ時期にGoogleはAI Maxの自動移行やデマンドジェネレーションへの片道移行を進めている。CPCの変動を全部この入札更新のせいにすると、打ち手を間違える。キャンペーンタイプ別に分けて見ること。

数字が動いたときに「アルゴリズムが変わった」で止まるか、どの数字がどう動いたかまで分解できるかで、次の一手の精度は変わる。今回は幸い、Googleが日付を公式に出している。切り分けができる珍しいケースだ。

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