Ahrefsが2025年12月に発表したAIオーバービュー(AIO)の追加分析で、1位ページのCTR下落幅が-58%にまで拡大したことが示された。同社が2025年3月に公開した最初の分析では-34.5%だったため、わずか9か月で影響度が2倍近くに増した計算になる。
データの読み方——順位が下がったのではない、クリックが消えた
300,000キーワード(AIO表示あり15万、なし15万)をGoogle Search Consoleの集計データで照合した今回の調査では、情報系キーワードの1位ページのCTRが2023年12月の0.076から、2025年12月には0.039に低下している。順位の維持はできているのに、クリック数だけが半減しているという構造だ。
同じ期間、AIOの表示率は急拡大した。2025年1月時点では全クエリの6.49%でしか表示されていなかったAIOは、3月には13.14%まで倍増し、米国ではすでに約半数のクエリで何らかのAIOが返るとされる。検索結果のレイアウト変化が、ユーザーのクリック行動そのものを書き換えているわけだ。
矛盾しているように見える「Semrushの逆説」
もっとも、データを並べると一見矛盾する結果も出てくる。Semrushの大規模調査では、同一キーワードをAIO表示前後で追跡すると、ゼロクリック率は33.75%から31.53%へとむしろ低下していた。AIOが「ゼロクリックを増やしている」とは断言しがたい、というのが同社の見立てだ。
この矛盾の正体は、計測の単位の違いにある。Ahrefsは「AIOが出るクエリ」と「出ないクエリ」を比較したスナップショット分析であり、AIOが出やすいクエリの特性(情報系・長文)そのものがCTR低下を引き起こしている可能性が混ざる。一方Semrushは時系列で同一クエリを追っているため、レイアウト変化の純粋影響を見ている。両者は矛盾ではなく、別の問いに答えている——「AIOが出るページのCTRは構造的に低い」(Ahrefs)と、「AIOが導入されてもクエリのクリック性は思ったほど変わらない」(Semrush)は同時に真でありうる。
ここから引き出せる実務的な含意は明快だ。「順位が落ちたかどうか」と「CTRが落ちたかどうか」を、もはや同じKPIで管理できない。順位は維持できているのに、トラフィックが減っている状況を「SEO施策の失敗」と誤読する企業が増えるはずだ。
ブランド検索で89%という数字の重み
goodfirmsの集約データによれば、AIOはブランド検索結果の89%に表示されるという。自社名を検索したユーザーが、自社サイトに着地する前にAIO内で要約された情報を読み終える——これがすでに業界のデフォルトになっている。指名検索の流入数が前年比で下落しているEC・サービス事業者は、まずこの構造を疑うべきだ。
日本のSEO担当者が即座に切り替えるべき3つの測定軸
第一に、「順位 × CTR × 表示形態」の3次元での追跡。順位を維持していてもAIOが表示されたタイミングでCTRが構造的に下がる以上、SERPのレイアウトを記録しないSEOツールでは現状を説明しきれない。AIO・People Also Ask・動画ボックスといったSERP機能の出現有無を、レポートの第一面に置く必要がある。
第二に、「クリックの代わりに何を取るか」のKPI再設計。AIO内で自社が引用されているか(=サイテーション)、ブランド指名検索の伸び、AIアシスタント(ChatGPT、Perplexity、Geminiなど)からの参照流入の絶対数——これらを並行して追えるダッシュボードに移行する作業が必要だ。GEO(Generative Engine Optimization)・AEO(Answer Engine Optimization)という新しい呼称が業界に広がりつつあるが、本質は「ランキングから可視性への転換」である。
第三に、コンテンツの粒度の再設計。AIOに引用されやすいコンテンツは、長文の網羅型より、明確な定義・短く端的な回答・構造化マークアップが揃ったページに偏る傾向が複数の調査で確認されている。社内のSEOガイドラインから「3000文字以上の包括的記事を量産する」というルールを外すところから始めるのが現実的だろう。
検索の常識が崩れている事実を、まず認める
Googleの検索広告売上はAIOの拡大下でも増えているため、Googleがクリックを減らす方向にコミットしたとは言いにくい。しかし結果として、SEOチームが取得できるクリック数は減っている。この変化を「順位を守れていない」と誤読し続けると、施策が空回りする。順位ではなく可視性、トラフィックではなくサイテーションを追う転換が、2026年後半のSEO組織には不可欠だ。