発表の中身
Amazon Japanは2026年9月3日、広告事業の年次イベント「Amazon Japan Upfront 2026」で、Prime Video広告向けの新フォーマットを発表した。Web担当者ForumとMarkeZineの報道を総合すると、内容は次の3種になる。
- ロケーションベース・インタラクティブ動画広告(2026年第4四半期提供開始):地理的シグナルをもとに、視聴者を近隣の店舗(自動車販売店・飲食店・小売店など)へ誘導する
- ポーズ広告(2026年第4四半期提供開始):視聴を一時停止した画面に半透明のクリエイティブを表示し、リモコン操作でそのままカートに追加できる
- ネクストアップ広告(2027年第1四半期提供開始):エピソードの切り替わりのタイミングで表示され、カート追加やブランド詳細の確認ができる
日本のPrime Video広告は2025年4月に開始しており、Amazonの発表によれば導入後の後半6ヶ月間は前半6ヶ月間と比べて広告主の平均キャンペーン支出額が45%増加、Amazon.co.jpに未出品の広告主数も48%増加したという。業種別では通信(140%増)、旅行(83%増)、金融サービス(69%増)の伸びが目立つ。
リビングルームの画面が「即カート追加」の場になる
3フォーマットに共通するのは、視聴体験の「隙間」(一時停止・エピソード間)を、離脱させずにそのままカート追加や来店導線に変える設計だという点だ。広告接触から購買行動までの距離を縮める狙いがあり、Prime Video広告を単なる認知目的の枠から、実店舗来店やカート追加という「実行動の受け皿」へ引き上げる動きだと読める。
注目すべきは、支出増を牽引しているのがAmazon.co.jpへの出品有無を問わない広告主(48%増)である点だ。つまりPrime Video広告は、すでに「Amazonでモノを売る事業者向けの販促ツール」から、「テレビ画面を持つ一般的なブランド広告の買い付け先」へと役割を広げつつあると考えられる。これは、YouTubeやTVer、Netflix・Huluの広告付きプランが担ってきた領域と競合が重なることを意味する。
日本市場での注意点
一方で、リモコン操作による「その場でカート追加」は、対応するFire TVデバイスやスマートTVの環境に依存する。実際にどれだけの視聴者がリモコン操作でカート追加まで進むかは、日本のリビングルーム環境(スマートTV普及率、リモコン操作への慣れ)次第で欧米とは異なる結果になる可能性がある。また45%・48%といった伸び率は、Prime Video広告事業が始まってまだ日が浅く、母数が小さいなかでの成長率である点も割り引いて読む必要がある。
加えて、ロケーションベース広告の対象として自動車・飲食・小売が挙げられているのは偶然ではないだろう。これらは来店・来訪という「足を運ばせる」成果を測りやすい業種であり、Amazonがまず結果の出しやすい領域から実績づくりを進めていると考えられる。テレビ画面という有限の広告在庫を、来店計測というオンライン発の指標で売り込む手法は、YouTubeやTVerが得意としてきた認知重視の訴求とは異なる評価軸を持ち込むことになる。
広告主が今から準備すべきこと
自動車・飲食・小売など来店誘導を重視する業種は、2026年第4四半期の提供開始に向けて、ロケーションベース広告向けのクリエイティブ設計(店舗誘導導線)を検討する余地がある。CTV広告の予算配分を検討する際は、YouTube・TVerに加えてPrime Videoの「購買直結型」フォーマットを比較対象に加えることをすすめる。