ChatGPT広告に、自社の顧客リストで狙う・外す機能が入った。2026年9月30日、LiveRampとOpenAIは提携を拡大し、広告主がLiveRampのRampIDを使ってChatGPT広告で第一者データのオーディエンスを活用できるようにしたとSearch Engine Journalが報じた。
何が使えるようになったのか(事実)
報道によれば、CRMやロイヤルティプログラム、サイト、アプリなどの第一者データからオーディエンスを作り、特定の顧客・見込み客に配信する、あるいは除外できる。広告グループ単位で入札を0.1倍〜10倍に調整することも可能だ。LiveRampは6月にChatGPT広告の計測パートナーになっており、今回はその拡大にあたる。
LiveRampを介さない道もある。OpenAIのヘルプによれば、Ads Managerではカスタムオーディエンスとして、メールアドレス、電話番号、SHA-256でハッシュ化したそれら、またはGoogle広告IDを含むCSV・TXT(UTF-8、最大500MB)を直接アップロードできる。条件としては、配信対象に含める場合や入札調整には「マッチしたユーザーが25,000人以上」が必要で、それ未満のリストは除外にのみ使える。100,000人以上が推奨とされる。処理は通常20〜30分、アップロードしたファイルは原則24時間以内に削除される。
日本での位置づけ
ChatGPT広告は2026年5月7日に英国、メキシコ、ブラジル、日本、韓国での試験開始が発表され、OpenAIの発表では8月11日に同5市場で本格展開が確認されている。本誌が10月1日に報じたように、日本の広告主は「小さく試す」段階にある(関連記事)。ただし、今回のLiveRamp連携やカスタムオーディエンス機能が日本でどこまで使えるかは、確認できた一次情報には明記がなく、現時点では不明だ。SEJは11市場での開始と伝えているが、市場の一覧は確認できていない。
考察:最初の一手は「除外」である
ここからは筆者の見方だ。GoogleやMetaで見慣れた顧客リスト配信が加わったことで、ChatGPT広告は「実験的な新媒体」から「既存の運用設計に載せられる媒体」へ一歩近づいた。ただ、SEJも指摘するとおりカスタムオーディエンスの成果データはまだ乏しい。リスクの低い最初の使い方は、既存顧客や直近購入者を除外し、無駄な配信を減らす用途だと考えられる。除外ならば25,000人未満のリストでも使える。
この変化の恩恵を受けやすいのは、整った顧客データを持つ中大手と、メールやLINE以外の新規獲得経路を探すD2Cだ。不利になるのは、第一者データが乏しい事業者である。AIの会話面は検索連動広告と違い意図が文脈に溶けているため、リストによる絞り込みの価値はむしろ高まりうる。
反論:データの預け先が増えるリスク
一方で、慎重な見方も要る。顧客リストを新しい媒体へ渡すことは、同意の取得範囲や委託・提供の整理を伴う。個人情報保護法や自社プライバシーポリシーとの整合は、法務確認が前提になる。OpenAIは、広告主がチャットの内容や個人情報にアクセスすることはなく、集計された成果指標のみを受け取ると説明しているが、リスト側の取り扱いは広告主の責任領域だ。
日本の広告主が準備すべきこと
- 日本でカスタムオーディエンスが利用可能か、OpenAIとLiveRampの窓口で確認する
- 顧客データの利用目的と同意文言を点検し、広告配信への利用が含まれているか確認する
- 試すなら、除外リスト(既存顧客)から始め、含める配信は25,000人以上のマッチ規模を確保できるリストに限る
- 検証期間と評価指標(新規獲得単価、除外による効率改善)を事前に決める
IDに基づく配信が新しい面にも広がる。第一者データの質が、そのまま媒体への参入資格になる流れは強まっていく。