「ChatGPTの検索規模はGoogleの約2割」。OpenAI幹部の発言が、検索業界の議論を呼んでいる。
事実:何が語られたか
Search Engine Roundtableによると、OpenAIのAdam Fry氏(ChatGPT消費者向け製品責任者とされる)は、Alex Kantrowitz氏のインタビューで、ChatGPTの検索に近いクエリ量はGoogleの約5分の1だと述べた。同氏は、週間アクティブユーザーが直近約2か月で10億人から12億人に増え、30日ごとに約1億人ずつ増えていると説明している。音声機能の週間利用者は2億5,000万人とされる。
検索の数え方について、同氏は、ユーザーが質問してウェブ検索が実行されるたびに検索とカウントする趣旨で説明した。用途は人物・場所・出来事の最新情報や、金融・健康の事実確認などに広がったという。一方、会話内の1プロンプトを1回の検索と数えるかという記者の質問への回答は、有料部分にあるため確認できなかった。
考察:「20%」は読み方次第で意味が変わる
ここからは筆者の分析だ。
第一に、これは企業側の自己申告であり、Googleの具体的な検索量も、比較の計算式も示されていない。Googleは検索量が過去最高だと説明してきており、Search Engine Roundtableも今回の数字を意外としている。独立した第三者の測定は現時点で見当たらない。
第二に、「検索」の定義が異なる点が重要だ。Googleの1検索はユーザーが入力した1クエリだが、ChatGPTでは、1回の質問から内部的に複数のウェブ検索が走る可能性がある。仮にそうなら、単純な比較は過大評価になりうる(確認できていない仮説)。
第三に、それでも意味のある数字だという見方もできる。Kantrowitz氏はBingの検索シェアを約5%とし、ChatGPTがBingを上回るのかと問うたが、Fry氏は直接答えていない。ここは慎重に見るべき点だ。ただ、ユーザー増が事実なら、「調べ物の入り口が分散する」流れ自体は否定しにくい。
この数字と同時期の動きを重ねる。Search Engine Roundtableは、AI Modeで1クエリに最大4件の広告が出る事例も確認した。検索の入り口が分かれ、広告もAI回答の中へ入っていく構造が進んでいる。本誌が先に報じたGoogleの外部アプリ連携(GoogleのAIモードに外部アプリが入る)も、「ページ」ではなく「機能」で選ばれる世界への布石と読める。
日本市場への翻訳
今回の数字は世界全体の自己申告で、日本のChatGPT検索比率は示されていない。日本は、LINEやYahoo!、Googleマップなど独自の検索行動が強く、同じ比率になると考える根拠はない。ただし、成長が速い海外サービスは、過去の例では半年〜1年のずれで日本の実務にも影響が及ぶことが多い(筆者の経験則であり、データによる裏づけはない)。
今週できる準備
- GA4でchatgpt.comなどからの参照流入を抽出し、自社サイトでの実数と成約率をまず把握する(比率は業種で大きく違う)
- 「ChatGPTで自社の商品・サービスについて聞いたら何と答えるか」を、主要な質問10本で確認し、誤りがあれば公式情報を更新する
- 指名検索とChatGPT経由の流入を分けて評価できるよう、レポートの流入区分を見直す
20%という数字の真偽より、「自社の顧客が実際にどこで調べているか」を自社データで確かめることが先だ。