「Webにエージェントが来る道は2本ある。ページを人間のように見る道と、エージェント専用のプロトコルを通る道だ」。GoogleのSundar Pichai CEOがポッドキャスト『Sources』(聞き手:Alex Heath)で語った見立ては、サイト運営者の設計思想を二重化させる示唆を含む。
Pichaiの発言:「両方が育つ」が、本命は後者
Search Engine Journalの報道によると、Pichai氏はエージェントがサイトに到達する方法として、ブラウザ操作による閲覧とエージェント向けプロトコルの両方を挙げ、「両方が発展していく」と述べた。ブラウザ操作は人間と同じ動きをするためエレガントで、ユーザーを介在させやすい。一方、プロトコルは「はるかにスケーラブル」だが、整うまでに時間がかかるという。名前が挙がったのはMCP、決済プロトコル、そしてGoogleがパートナーと策定した商取引の標準UCP(Universal Commerce Protocol)だ。同氏は今後を「混沌とした進化」になるとも述べている。
検索は「エージェント層」に溶けていく
別のSEJの記事は、同じインタビューから検索の将来像を伝えている。Pichai氏は、検索・AI Overviews・Geminiを束ねるのは「エージェント層」だとし、近い将来のビジョンを「ワンボックス」と表現した。Geminiでエージェント型(タスク指向)のクエリが着実に増えているとし、その機能を検索に「かなり深く」持ち込む方針も示した。ただし、人間の流入がどうなるのか、広告がエージェント閲覧の下でどう成立するのかについて、記事を読む限り直接の回答はない。
足跡はすでにアクセスログに残っている
「ページを読むエージェント」は理屈の話ではない。Googleは公式ドキュメントで、Google基盤上で動作し、ユーザーの依頼でWebを操作するエージェント向けに「Google-Agent」というユーザーエージェントを定義している。同ページによれば、ユーザー起点のフェッチャーは一般にrobots.txtを無視する。IPレンジは公開JSONで提供され、Web Bot Authによる認証(「https://agent.bot.goog」)も試験中だ。ユーザーエージェント文字列は偽装できるため、リクエストが本当にGoogleから来たものか検証するよう勧めている。ドキュメントの最終更新は2026年8月19日である。
考察:日本のサイトは「二重の入口」を設計する時期に入った
ここからは筆者の見解だ。第一に、ページは「人間とブラウザ型エージェントが同じものを読む」前提で見直す必要がある。フォームのラベル、在庫・価格の明示、操作を遮るポップアップといった人間向けUXの粗が、そのままエージェントの失敗率になるからだ。第二に、プロトコル対応の優先順位は、EC・予約など取引系サイトが先で、情報系メディアの当面の主戦場は引き続きページ側だろう。日本でUCPやMCPがどの程度普及するかは現時点で確認できていないが、AIエージェントの購入上限や代理購入プロファイルを巡る動きに見られるように、取引のルール作りは海外が先行している。
反対の見方もある。Pichai氏の発言は方向性の表明であって、ロードマップではない。「Webが不要になる」と読むのは早計で、同氏自身が移行期は混沌とすると認めている。
今週できる3つのこと
- アクセスログでGoogle-Agentを識別し、IP検証をかけたうえで、他のBotと分けて集計する
- 主要な申込・購入導線を、ブラウザ操作の視点(ボタン・ラベルの明確さ、必須入力の少なさ)で点検する
- ECなら商品データ(価格・在庫・配送条件)の正確性をフィードで担保する。プロトコル対応はその延長線上にある
エージェントが「訪問者」になる世界では、流入数よりも「タスクを完了できたか」が評価軸になる。計測の定義を、今のうちに見直しておきたい。
出典
- Search Engine Journal: Google CEO Says Agents Will Hit Sites Two Ways, Pages And APIs
- Search Engine Journal: Google CEO Sundar Pichai Views Search Absorbed Into Agentic Layer
- Google Search Central: List of Google user-triggered fetchers (Google-Agent)
- Alex Heath Sources podcast: Sundar Pichai interview