AIエージェントが「検索する」とき、その裏側にはどの検索エンジンがいるのか。この問いに、もう一つ新しい選択肢が加わった。DeepSeekは10月17日、自社の検索エンジンに基づくSearch APIとFetch APIを全ユーザーに開放した。
発表された内容:確認できる事実
DeepSeekの公式アナウンスによれば、両APIは同社の自社検索エンジンで動き、同社は1日あたり数億件のリクエストを処理していると説明している。料金はSearchとFetchがそれぞれ1,000回あたり0.75ドルだ。DeepSeek Harness、Claude Code、Codexのサーバー側ツール経由の呼び出しは、課金開始の10月31日16:00(UTC)まで無料となる。
Search Engine Journalの検証がドキュメントから読み取った仕様は、マーケターにとって示唆が大きい。各検索結果には0〜4の「権威性」フィールド(3以上が高権威)と、関連性・権威性・鮮度を合成した0〜3の再ランクスコアが付く。モデル向けに600〜800字程度の要約も返し、site:指定ならドメインごとに最大50ページを取得できる。Fetch APIは1ページをMarkdownで返す。変更履歴には、SEOスパム、GEO操作、低品質なAI生成コンテンツを除去するとも書かれている。
分かっていないこと
ここが重要だ。SEJは、「GEO manipulation」が何を指すのか、どう検出するのかが定義されていないと指摘する。権威性や再ランクスコアがどう決まるのかも、ガイドとAPIリファレンスには書かれていない。結果が出ない理由を診断する手段もない。
クロールの扱いも曖昧だ。アクセスログに現れるクローラー名や、Fetch APIのユーザーエージェントは、発表ページでは特定されていない。Known Agentsは「DeepSeekBot」をAI学習用クローラーとして掲載しているが、これをブロックした場合に検索インデックスへの掲載へ影響するかは不明だとSEJは述べる。さらに、プライバシーポリシー(2月10日改定)は検索で第三者APIを使いキーワードを共有すると記しており、中国の検索API事業者Bochaが公式の検索サプライヤーを名乗るGitHubの記載も見つかったが、DeepSeekの発表には出てこない。現在も第三者に検索が流れているのかは確認できない。
考察:なぜこれが日本のマーケターに関係するのか
ここからは筆者の見立てだ。まず、AIエージェントが使える検索の「バックエンド」が増えるほど、Google順位とAI上の露出が一致しない場面が増える。先に本誌が取り上げたAIモードのリンク強化はGoogle内の話だが、DeepSeekのAPIは外部アプリやエージェントが自由に組み込める。自社サイトが、Googleでは上位でもこの入口では拾われない、あるいはその逆、という非対称が起きうる。
次に、スコアを返す設計は「権威性を機械が採点する」流れの明示でもある。ただし採点基準が非公開である以上、特定の施策で上げられると断言はできない。一方で、先にGEO操作が短期間で通りうることを示した研究が出たばかりで、各社が除去を競う局面に入ったとも読める。
なお、日本企業が社内エージェントにこのAPIを採用する場合は、検索キーワードの共有先という情報管理上の論点を事前に確認すべきだ。
今のうちにできる準備
- サーバーログでAI系UAを確認する。DeepSeekBotを含め、未知のクローラーの訪問頻度と対象ページを週次で見る。
- robots.txtの方針を決める。学習用と検索用の区別が不明な現状では、ブロックの影響が読めない。方針を決めるまで急がず、ログ観測を優先したい。
- 主要ページの「要約適性」を点検する。APIは本文の要約を返す。結論が冒頭にあり、固有名詞と数字が明確なページは、どの検索経由でも扱われやすい。
- 社内利用は条件を確認する。社内エージェントで使う場合は、検索クエリの送信先と契約条件を先に確認する。
選択肢が増えることは、どれか一つの順位に依存しない運用を迫る。当面は、観測を始めることが最も安い備えになる。