「AIエージェントに記事の投稿やサイトの更新を任せる」。その入口が、WordPressで公式の形をとり始めた。Search Engine Journalの報道によると、WordPressは10月7日までに、AIとサイトをつなぐ公式プラグイン「MCP Adapter」をWordPress.orgのディレクトリに載せた。これまではGitHub経由の配布で、すでに4万以上のサイトに入っていた。
MCP Adapterとは何か
MCP(Model Context Protocol)は、Anthropicが開発した、AIが外部のアプリやデータ、ツールとつながるためのオープン標準だ。WordPress.orgのプラグインページによれば、MCP Adapterは、WordPress 6.9でコアに入った「Abilities API」(サイトやプラグインが「できること」を登録する仕組み)の機能を、MCPのツール、リソース、プロンプトとして外部のAIに見せる橋渡し役である。現在の版は0.7.0で、WordPress 6.9以上とPHP 7.4以上が必要だ。
GitHubのREADMEで確認できる要点は次のとおり。
- 接続方式はHTTPと、WP-CLI経由のSTDIOがある。HTTPでは、AIクライアントはWordPressのユーザーとして認証し、アプリケーションパスワードも使える。
- アダプタ自身はAI機能を持たない。コアやほかのプラグインが「できること」を登録して初めて、AIから使える。
- 権限確認は実行前に走る。既定の確認はログイン済みかどうかで、各機能は固有の権限判定も持てる。
Automattic のAI担当エンジニアリングディレクターであるJason Adams氏は、これを後方互換性を保てる「標準のMCPプラグイン」と位置づけたとSEJは伝えている。
「公開フラグ」という見落としやすい設定
ここは筆者が最も注意を促したい点だ。READMEによれば、機能に「meta.public: true」が付いていると、既定のサーバー経由で、一覧を探す・詳細を見る・実行する、の3つの窓口から呼び出せる。MCPだけで除外したい場合は「meta.mcp.public」をfalseにする。公式ページの更新履歴にも、公開フラグ付きの機能が既定で見える点への注記がある。
つまり「入れただけで何でもAIに開放される」わけではなく、権限確認も働く。一方で、どの機能が公開フラグ付きで登録されているかは、サイト運営者が自分のサイトで確かめるしかない。プラグインを増やすほど、AIから届く範囲は見えにくくなる。
楽観と慎重、両方の見方
楽観的に見れば、WordPressが標準の入口を用意したことで、プラグインごとにバラバラな連携を作る手間が減り、運用の自動化は進めやすくなる。制作会社が多くのサイトを抱える日本でも、定型の更新作業をAIに任せる流れは強まるだろう(筆者の見立て)。
慎重に見れば、権限の設計ミスが即座に「AIが実行できる操作」になる。本誌が先に報じたAnthropicの「意図しない挙動」報告は、AIエージェントが本物のフォームを送信した事例だった。エージェントが意図せず越権する可能性を踏まえ、「任せられる範囲」を先に決める発想が欠かせない。なお、今回のMCP Adapterがそうした事態を招くという報道は確認していない。
導入前に確認したい4点
- ステージングで先に試す。 本番サイトに直接入れず、検証環境で、どの機能がAIから見えるかを一覧で確認する。
- 専用ユーザーを作り、権限を絞る。 AI用のWordPressユーザーとアプリケーションパスワードを別に発行し、投稿の下書きなど必要最小限の権限だけを与える。
- 公開フラグ付きの機能を棚卸しする。 使っているプラグインのうち、「meta.public」や「meta.mcp.public」を設定しているものを確認する。
- 公開前の承認を残す。 AIの作業は下書き止まりとし、公開は人が承認する運用にする。
AIに任せる範囲を決めるのは、技術ではなく運用設計だ。入口が標準化された今こそ、その線引きを先に決めておきたい。