2026年7月14日(火)
業界動向

Gartner予測、マーケ業務のAI自動化が2年で「16%→36%」に倍化——「AI Curious」で止まる組織と「AI Confident」になる組織を分ける3つの分岐点

Gartnerが5月11日のMarketing Symposium/Xpoで発表した最新CMO調査は、マーケティング業務に占めるAIによる自動化の割合が2026年の16%から2028年に36%へと2.25倍化すると予測している。同社は組織を「AI Curious」「AI Competent」「AI Confident」の3段階に整理し、初期段階で停滞する『AI Competency Trap(AI能力の罠)』を強く警告する。本記事は本誌が既に報じた「CMOのAI予算15.3%/準備できているのは30%」の数字と並べて、日本企業がどう段階を昇るかを考える。

WebTech Journal 編集部

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Gartnerが5月11日からロンドンで開催したMarketing Symposium/Xpo 2026の基調講演で発表した最新調査結果は、マーケティング業界が抱える「AI導入後の次の壁」を数字で示している。マーケ業務に占めるAI自動化比率は2026年時点で16%だが、CMOたちは2028年までに36%へと2.25倍化すると予測している。

Gartnerが2025年8月から10月にかけて402名のCMOを対象に実施した同調査は、本誌が5月11日に既報した「CMOのAI予算は15.3%、準備できている組織は30%だけ」と同じMarketing Symposium週次で公表されたもので、両者を重ねて読むと業界の構造が立体的に見えてくる。

「予算は伸びたが、自動化はまだ16%」というギャップ

Gartnerの2026年CMO調査では、マーケティング予算に占めるAI関連支出は15.3%に達した。これは1年前の水準から大きく伸びている。にもかかわらず、実際に業務を自動化できている比率は16%にとどまる。

この「予算と実装のギャップ」が意味するのは、AIへの支出がツール導入と人材獲得に消え、実際の業務オペレーションに統合されきっていない現状である。GartnerのCMO調査プレスリリースは、AI能力をスケールする準備ができているCMOがわずか30%だと報告しており、過半が「導入は始めたが運用に乗っていない」状態にある。

「AI Competency Trap」——投資が止まらないのに成果が出ない罠

Gartnerが今回の発表で繰り返し強調したキーワードが「AI Competency Trap(AI能力の罠)」だ。同社は組織のAI成熟度を3段階に整理する。「AI Curious」は生産性改善のためのパイロット段階、「AI Competent」は複数ユースケースをスケールするが画一化と収穫逓減のリスクを抱える段階、「AI Confident」は人間の判断とAIを組み合わせてオペレーティングモデル自体を再設計する段階。

罠が発生するのは中間の「AI Competent」だ。複数のAIツールを使いこなせるようになると、組織は「次にどう使うか」より「もっと多くの場所で使うか」に意識が向きがちになる。コピーライティング、レポーティング、メール配信、広告クリエイティブ……あらゆる業務に同じパターンのAI活用を横展開する結果、競合との差別化が失われ、ROIが頭打ちになる。これがCompetency Trapの構造だ。

ここでGartnerが警告するのは、AI投資の規模ではなく、AI投資の質と方向性が組織の成長を分けるという点である。同じ15%の予算をかけても、「AI Competent」の罠に留まる組織と「AI Confident」へ抜けられる組織で、2028年の業績は別物になる、というのがGartnerの主張だ。

なぜ多くの組織は「AI Competent」で止まるのか

ここからは本誌の考察になるが、罠の原因は3つの構造的要因にあると見ている。

第一に、KPI設計がAI導入と整合していない。多くのマーケ組織は今もCTR、CPA、ROASといった戦術指標で評価されているが、AI Confidentが目指すのは「オペレーティングモデルの再設計」である。指標が同じままで業務だけAIに置き換えると、「人間がやっていた仕事を、より速く・安く」する状態に陥り、市場形成型CMOには到達しない。

第二に、人材ポートフォリオの再構築が後回しになっている。自動化が増えるなら人間に求められるスキルは「実行」から「判断と設計」にシフトするはずだが、多くの組織は既存チームのままAIツールを上乗せしているだけで、ジョブディスクリプションも採用基準も更新できていない。

第三に、経営層がAIの判断境界を握りきれていない。AI Confidentは「人間とAIの判断境界を再設計する」段階だが、これには経営層がAIの意思決定範囲を明確に切り分ける覚悟が必要だ。日本企業ではこの議論が現場任せになり、AI活用が現場裁量で局所最適化されがちである。

もっとも、これらは慎重に運用すれば回避できる罠であり、AI Confidentへ移行している先進ブランドも実在する。問われているのは「AIを使うかどうか」ではなく「組織設計を変える覚悟があるかどうか」だ。

日本市場で起こる連鎖反応

2026年16%が2028年36%に達した場合、日本のマーケ組織にも具体的な変化が起こる。

まず外部代理店との関係性が変わる。運用業務の3分の1がAI自動化される世界では、レポーティング・クリエイティブ制作・運用最適化の相当部分が内製可能になる。代理店側は「実行代行」から「戦略パートナー」への転換を迫られる。

次にマーケ組織の規模ではなく構成が問われる。人員を減らすのではなく、ジュニア層の比率を下げ、シニア戦略家とAI運用エンジニアを増やす構成変更が必要になる。

最後にROI指標の再定義である。AI投資のリターンを「コスト削減」ではなく「成長創出」で測れる経営指標を、CMOがCFOと合意形成する必要が出てくる。これができないCMOは、AI投資の正当化が難しくなり予算圧縮の対象になりやすい。

「AI Curious」のうちに組織を「AI Confident」へ向ける

2028年36%という数字は平均値である。実態としては、AI自動化比率が60〜70%に達する先進企業と、20%にすら届かない停滞企業の二極化が進む可能性が高い。本誌は、この差を生む最大の変数は「経営トップがAIをオペレーティングモデルの中核に据える意思決定をできるかどうか」だと考えている。

ツール選定や人材採用は重要だが、それは戦術である。戦略は、組織のオペレーティングモデルそのものを再設計することにある。Gartnerの今回の発表は、その戦略課題が「2年以内に意思決定すべき期限つきテーマ」になったことを告げている。

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