GEOの外注を検討している担当者に、まず知ってほしい動きがある。中国が、GEOサービスの業界標準を世界に先駆けて発行した。Search Engine Journalの解説によると、きっかけは国営テレビの消費者保護番組だった。
発端は「存在しない製品」がAIに推奨された事件
同記事によれば、2026年3月15日の番組で、業界関係者が存在しないスマートリストバンドの宣伝記事を生成ツールで量産し、複数のAIモデルがそれを推奨リストに載せたと報じられた。AIの学習・参照元を汚すこの手口は「AIポイズニング」と呼ばれ、GEO業者による順位操作の問題として注目された。3月には市場監督管理総局が、引用型・AI生成型の広告を取締りの重点に据えたという。
そして9月9〜14日、中国商務広告協会が5部構成の標準(T/CAACCHINA 001〜005—2026)を発行した。総則・用語、事業者評価、価格・評価・測定、信頼できるコーパス、サービス工程のコンプライアンスの5つだ。「T/」で始まる団体標準であり、法律ではなく任意の規格である。
標準が定める、実務に効くルール
注目したいのは、次のような具体的な規定だ。
- 報告する最小単位(意図・エンジン・日など)ごとに、最低30回の実行を求める。少数回の測定は揺らぎが大きいという考え方に立つ
- 料金は固定部分(制作・コーパス構築・監視)を契約額の30%以上とし、成果報酬は段階制にする
- 「モデル出力の絶対的な支配」「100%の画面独占」のような約束を禁止し、保証できない事項を契約の付録に明記する
- 誤情報が見つかった場合、72時間以内に是正に着手する
割り引いて読むべき点
SEJの記事自身が、留意点を挙げている。起草には業界側の企業が多く参加しており、規則が売り手を守る側面がありうる。30回ルールは起草側の2025年報告書に基づき、独立検証は済んでいない。付録の標準偏差表にも、理論値と合わない箇所が指摘されている。想定市場もDeepSeekなど中国のAIエンジンで、そのまま西側に当てはめることはできない。
筆者が確認できた範囲では、日本に同種の業界標準は見当たらない。一方で、国内でもGEO関連サービスは増えている。たとえばギャプライズは10月21日、無料の「WebサイトAI対応度診断」を開始した。公開ページを外部から100点満点で採点し、発見用ファイル、クローラー許可、構造化データ、ページの明瞭さの4項目を見る。診断は入口としては有用だが、これは自社サイトの技術的な読まれやすさの確認であり、AI上での引用や推奨を保証するものではない。引用の不安定さについては、本誌が先日取り上げたAI検索の引用に関する2本の論文も参考になる。
日本のGEO外注で使える契約チェック5項目(筆者の提案)
中国の標準の考え方を借りて、発注前に次を確認したい。
- 測定は何回実行した平均か。1回の結果で成果を語っていないか
- ブランド名を含むプロンプトを除外して可視性を測っているか
- 保証できないこと(特定AIでの表示順位など)を書面で列挙しているか
- 固定費と成果報酬の比率、モデル更新で指標が変わったときの扱いは決まっているか
- 虚偽や誇張による「ポイズニング」的手法を使わないと明記しているか
AIの回答は、操作されうる。だからこそ、測定と契約の作法を先に固めた事業者が信頼を得る可能性が高い。その基準を業界団体が作るのか、発注側が契約で作るのかは、まだ決まっていない。