10月30日に発効するMetaの新しい商用規約が、波紋を広げている。Nieman Labが10月15日に報じ、Search Engine Journalが整理したところでは、Metaまたはその代理人が、事業者の商品・サービスに紐づくドメインやページから、クローラーなどの自動ツールでコンテンツを収集し、製品の開発・改善・研究・学習に使えるとする条項が入る。対象はFacebookページやInstagramのビジネスアカウントなどを使う事業者で、広告出稿の有無は問わない。
何が変わるのか:広告規約の権限が「商用利用全般」へ
SEJによれば、広告主向けの規約(2025年8月22日付のセルフサーブ広告規約)にはすでに、広告主のドメインやページのクロールを認める同様の権限があり、「研究と学習」への利用も含まれていた。今回の変更で、その許諾が広告を出さず、ページ運用や商品掲載、Meta Business Suiteの利用にとどまる事業者にも及ぶ。規約は、発効後も事業利用を続ければ同意したものとみなす。同意しない場合は、事業目的でのMeta製品の利用をやめるしかない。
また、条項にはMetaが「テスト用認証情報」を作成してページにアクセスできる旨が含まれる。Nieman Labに登場した専門家は、会員登録の壁の内側にもアクセスできる可能性を指摘する。Metaはこの点への回答を拒んでいる。
Metaの反論と、割れる見解
Metaの広報担当者は、Nieman Labの要約を「誤り」と述べ、狙いは広告やコンテンツ推薦のために正確な商品情報を得ることで、「ニュースサイトのスクレイピングではない」と説明した。また、コンテンツ所有者はrobots.txtでアクセスを管理できるとしている。一方で、新しい規約はrobots.txtに触れていない。専門家のなかには、規約がrobots.txtのブロック指示に優先すると主張する根拠になりうるとの見方がある。逆に、AI学習への利用がフェアユースにあたるかは法的に未確定で、直ちに権利侵害が確定するわけでもない。
Metaのクローラーには複数の種類がある。Metaの公開文書によると、Meta-ExternalAgentは基盤AIモデルの学習や製品改善、Meta-WebIndexerはMeta AIの検索結果の改善、Meta-ExternalFetcherはユーザー要求に応じた取得、FacebookExternalHitはリンクプレビューの生成を担う。後者二つは状況によりrobots.txtを回避しうる。
筆者の見立て:日本企業にとっての論点
以下は考察である。日本でもほぼ全ての企業がFacebookページかInstagramのビジネスアカウントを持つ。つまり「広告を出していないから無関係」とは言えない。とくに問題になりうるのは、有料会員向けコンテンツ、価格や在庫を細かく制御しているEC、権利処理が複雑な画像・記事を持つメディアだ。今回の報道は英語圏の規約が起点であり、日本語版の条項の扱いは今回の取材範囲では確認できていない。
実務では次を確認したい。
- 法務・広報で規約を確認する:発効日(10月30日)までに、自社のMeta事業アカウントの棚卸しと、条項の許容範囲を確認する。
- robots.txtの方針を決める:学習用のMeta-ExternalAgentを拒否しつつ、Meta AIでの引用につながるMeta-WebIndexerは許可する、といった切り分けが理論上は可能。ただし規約との関係は不透明な点が残る。
- 会員限定ページの扱いを見直す:認証の内側にあるコンテンツが、規約上どう扱われるかを整理する。
AI時代のコンテンツは「検索に載せるか」だけでなく「誰の学習に使われるか」も同時に設計する段階に入っている。Googleの動きも含め、プラットフォームとのデータの貸し借りは、規約の読み方ひとつで変わる。