2026年9月2日(水)
SEO

Googleが「読者に指名させるボタン」をサイト側へ配った——優先ソースは3か月半で20万→60万件、AI Overviewsの内側に席を作る導線ができた

Googleが8月20日、パブリッシャーがページに埋め込める「Preferred Source(優先ソース)」ボタンを公開した。読者がクリックするとその場でサイトが優先ソースに登録され、読んでいた位置に戻る。登録された媒体はトップニュースだけでなくAI OverviewsとAI Modeでも見つけやすくなる。Googleによれば優先ソースに設定された後のクリック率は2倍、選ばれたサイトは5月時点の20万件超から60万件超へ。同時にDiscoverは会話でフィードを調整できるようになった。この変化の受益者と、置き去りにされる側を整理する。

WebTech Journal 編集部

編集・執筆

|
|
4分で読める

Googleが「うちを指名してください」ボタンを配りはじめた

8月20日、Google Search Ecosystem のゼネラルマネージャーである Mrinalini Loew 氏の署名記事で、Googleは新しい Preferred Sources ボタンを発表した。

仕組みは驚くほど素朴だ。パブリッシャーが自分のページに埋め込みコードを置く。読者がそのボタンを押す。すると、そのサイトがGoogleの「優先ソース」に追加され、読者は読んでいた位置にそのまま戻る。検索画面へ飛ばされることもない。コードは Google Search Central のドキュメントで配布されている。

優先ソース機能そのものは新しくない。日本語を含む全言語への展開は2026年5月1日だった。トップニュースの横にある星型アイコンをタップして、優先表示したい媒体をリストに入れる——あの機能である。

新しいのは、登録の導線がGoogleの画面からパブリッシャーの画面へ移ったことだ。

20万件が60万件になった3か月半

数字で追うと変化がはっきりする。

Googleの日本語版ブログは5月1日時点で「20万件以上の多種多様なサイトがユーザーによって選択されている」と書いていた。8月20日の英語版発表では 600,000 unique sources となっている。3か月半で約3倍だ。

そして5月の発表にはもう一つ重要な数字がある。特定のサイトを優先ソースに設定した読者が、そのサイトをクリックしてアクセスする割合は2倍になる(Google公表値)。

Googleの説明によれば、優先ソースに登録された媒体は「トップニュース、AI Overviews、AI Mode」で読者に見つけてもらいやすくなる。ここが今回の発表で最も重い一文だと筆者は考える。

AI Overviews と AI Mode は、パブリッシャーにとってこの2年でトラフィックを最も削った機能である。その内側に、読者の指名という形で優先枠が開いた。

権限は委譲された。ただし、すでに読者がいる媒体にだけ

これは「Googleが順位を決める」から「読者が指名する」への部分的な権限委譲だ。歓迎する声が出るのは当然だろう。

ただ、委譲された権限を行使できるのは、すでに読者との接点を持っている媒体だけである。ボタンは、そのページに人が来て、内容を読み、もう一度読みたいと思って初めて押される。検索経由の一見客が大半を占めるサイトでは、設置しても押されない。

つまりこの機能は、常連読者を持つ媒体には救命ボートだが、検索流入だけで成り立っていた媒体には何も渡さない。AI検索によるトラフィック減の打撃は後者のほうが大きいので、格差は開く方向に働く。5月のGoogleブログにコメントを寄せていたのがダウ・ジョーンズだったのは象徴的だ。ボタンが効くのは、そういう媒体である。

Discoverは「見たいもの」より「見たくないもの」を減らす

同じ発表で、Discoverのカスタマイズも変わる。フィードの三点メニューから、自然文でGoogleに希望を伝えられるようになる。Googleが挙げた例は「エコフレンドリーなキッチンリフォームのアイデアが見たい」「週末のロードトリップ動画、ただしキャンプは除く」。フィードは即座に調整され、その指示を記憶する。近日中にGoogleアプリで展開される。

日本のメディアにとってDiscoverは、検索と並ぶかそれ以上の流入源だ。だから神経を使って読むべきなのだが、ここには読み筋が二つある。

楽観側は「関心の合う読者に届きやすくなる」。悲観側は、自然文の指示は『増やす』より『減らす』に使われやすいという点だ。人は好きなものを言語化するのが下手で、嫌いなものを言語化するのは得意である。「キャンプは除く」のような除外指示が積み上がったフィードは、既存の関心を強化し、偶然の出会いを減らす。Discoverの価値の相当部分は、その偶然だった。ここは今後の流入データで検証すべき仮説であって、現時点で確定した話ではない。

Google Newsの音声ブリーフィング(Android)もトピック指定でカスタマイズできるようになり、出典表示と本文へのリンクが付く。Googleは「news AI pilot program」に参加するパブリッシャーのおかげで主要ニュースを深く扱えるとしている。

今週の実務

やることは短い。

  • Preferred Source ボタンを設置する。 Search Centralにコードがある。設置コストは低く、押されれば当該読者のクリック率は2倍(Google公表値)、しかもAI Overviews / AI Modeでの露出につながる。今のところ、AI検索の内側に自社の席を確保する数少ない公式手段だ。
  • 置き場所を考える。 グローバルナビよりも、記事を読み終えた直後が効く。押すのは「もう一度読みたい」と思った瞬間の読者だけである。
  • Discoverのカスタマイズが効き始めたあとの流入変化を、記事カテゴリ別に見る。 全体PVで見ると変化が均される。減るカテゴリと増えるカテゴリに分かれるはずだ。

本誌が報じたAIクローラーはJSで挿したリンクを1本も辿らなかったという話と同じで、AI検索まわりの実装は「置いてあるか」で結果が決まる場面が増えている。ボタンも同じだ。設置していないサイトは、読者が指名したくても指名できない。

関連記事

SEO

落ちたのは「AIで書いた記事」ではなく「AIで量産した運用」——8月スパムアップデートで上位10位の16.71%が101位以下へ

Googleの8月2026スパムアップデートで、上位10位に入っていたURLの16.71%が同じキーワードで101位圏外に落ちた。アップデートのない7月の同期間は9.2%。SE Rankingの20業種10万キーワード調査が示す1.8倍の落差の裏側で、日本のSEO実務者は「全自動で立ち上げたサイトだけが飛んでいる」と観測している。Googleが公開したS-CTS論文と重ねると、見られているのは生成の手段ではなく量産の構造である可能性が浮かぶ。

SEO

「もっと見る」を押す前に、答えは全部出ている——AI Overviewの既定展開で、10本の青リンクはどこまで沈むのか

8月27日、AI Overviewが「もっと見る」を経ずに全文展開し、AIモードの入力欄まで既定で開く挙動が確認された。Googleは「一部のクエリで動的に展開する」と公式に認めている。同じ週、AIモードではサインイン要求のテストとホテル予約機能の投入も進んだ。3つの動きを重ねると、Googleが検索を「回答・対話・取引」の一体型に組み替えつつあることが見える。計測側で何が壊れるかも含めて整理する。

SEO

Googleが「パラサイトSEOの罰」をEEAだけ無効化する——8月30日から、同じページの順位が地域で分岐する

Googleが8月28日、サイト評判ポリシー(パラサイトSEO対策)の運用変更を発表した。8月30日以降、手動対策はEEA外の検索結果にのみ効き、EEA内では影響しない。代わりに該当セクションを本体から分離し、独立して評価する方式へ移行する。同時に判定因子4つと具体例も公開された。日本はEEA外だが、越境サイトの順位が地域で割れる問題と、4因子が編集タイアップの設計図として使える点を整理する。