2026年10月2日(金)
業界動向

Googleの広告テック事業は「分割回避」でも終わらない——行動是正と、出版社による数億〜十数億ドル規模の損害賠償請求が並走する

米連邦地裁はGoogleの広告テック事業の分割を退け、行動的な是正措置を命じた。一方、別の民事訴訟では出版社の主要な反トラスト請求が略式判決を免れ、専門家による損害額の見積もりは数億〜十数億ドル規模に及ぶ。二つの判断の違いと、広告主・媒体社が見るべき実務への影響を整理する。

WebTech Journal 編集部

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Googleの広告テック事業をめぐる米国の裁判は、「分割は回避」という見出しだけでは読み切れない。同じ9月に、行動是正の命令と民事の損害賠償請求の継続という二つの判断が出た。

判断その1:分割は退け、行動是正を命令

AdExchangerの報道によると、バージニア州の連邦地裁のリオニー・ブリンケマ判事は、Googleが独占を形成していたと認定しつつ、司法省(DOJ)が求めたAdX(広告取引所)、場合によっては広告サーバーDFPの売却は退けた。理由は、分割が無料でGoogle Ad Managerを使う小規模パブリッシャーに悪影響を及ぼしうること、買収先との間で複雑な問題が生じうること、そして売却案は長い控訴で解決が遅れることだとされる。

代わりに命じられた行動是正の主な内容は次のとおり。

  • オープンウェブのディスプレイ広告について、リアルタイムの入札額を競合の広告サーバーにも開示する
  • 統一価格ルール(Unified Pricing Rules)を廃止する
  • パブリッシャーが入札者ごとに異なる最低価格を設定できるようにする
  • 入札額を調整する「ファーストルック」「ラストルック」の特権をやめる

判決への反応は割れている。ある業界関係者は「別の広告サーバーを使いつつ、Googleの買い手需要も得たい媒体はどうすればいいのか」と疑問を示し、競合のPubMaticは公平な競争環境につながると見ているという。

判断その2:出版社の損害賠償請求は前に進む

もう一つは9月30日、ニューヨーク南部地区連邦地裁のP・ケビン・キャステル判事による判断だ。Search Engine Landによれば、同判事はGoogleの略式判決の申立てを退け、出版社側の主要な反トラスト請求を維持し、損害額に関する専門家証言も認めた。

出版社側の専門家による損害額の見積もりは、Gannettが約9億100万ドル、Daily Mailが約6億ドル、出版社のクラスが2024年3月31日までで約17億2,000万ドル。ただし記事が強調するとおり、これは原告側専門家の試算であって、裁判所が認定した賠償額ではない。なお、Gannett/Daily Mailのニューヨーク州法に基づく請求と、Informの連邦反トラスト請求ではGoogleが勝っている。

考察:二つの判断を重ねると見えるもの

ここから筆者の見立てになる。行動是正は「今後の市場のルール」を変え、民事訴訟は「過去の行為の代償」を問う。前者が実際に効くかは、入札情報の開示や価格設定の自由度が、現場の取引でどこまで機能するかにかかっている。後者は、仮に賠償が認められても支払いまで長い時間がかかる。

日本の広告主・媒体社にとって直接の法的効力はない。ただし、Google Ad Managerを使うプログラマティック取引の仕組みは世界共通のため、米国での是正内容がグローバルの機能やポリシー変更として波及する可能性はある。時期や範囲は現時点で不明であり、断定はできない。

実務で見ておくこと

  1. 自社が使うSSP/アドサーバー構成と、Google Ad Managerへの依存度を棚卸しする(媒体社)
  2. プライスフロア設定や入札者別の運用機能に変更が来る可能性を想定し、取引条件を点検する(媒体社)
  3. ディスプレイ配信のサプライパス(どの経路で在庫を買っているか)を代理店に確認する(広告主)
  4. 是正措置の施行時期と、Googleの控訴の動きを継続監視する

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