2026年11月7日(土)
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Googleが欧州で「無料の商品枠」を2日で消した——DMA対応が示す、オーガニック商品流入の壊れ方

GoogleがEEAの検索結果から無料商品リスティングと「人気商品」カルーセルを撤去した。ドイツ、フランス、ベルギー、スウェーデン、オランダで約90〜100%減。空いた枠は比較ショッピングサービスへ流れ、有料Shopping広告は無傷だった。アルゴリズムではなく法律で枠が消えるとき、SEOでは取り戻せない。日本のスマホ新法との違いと、EC担当者が今週確認すべき3点を整理する。

WebTech Journal 編集部

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ドイツ、フランス、ベルギー、スウェーデン、オランダ。この5カ国で、Google検索の「人気商品」カルーセルが2日間でほぼ消えた。減少率は約90〜100%。アルゴリズム変動ではない。法律が枠を消した。

何が起きたか

Googleは9月中旬、欧州経済領域(EEA)の検索結果から無料商品リスティングと商品カルーセル形式を削除した。デジタル市場法(DMA)への対応である。Google Ads LiaisonのGinny Marvin氏が、DMAを理由とする措置だとコメントで確認している。

減少幅を実測したのはProductriseのHugo Huijer氏だ。同氏はLinkedInで、十分なデータがあるドイツ、フランス、ベルギー、スウェーデン、オランダにおいて約90〜100%の減少が2日間で起きたと報告した。Semrushの「popular products」の表示率データも同じ傾向を示している。

空いた枠はどこへ行ったか。比較ショッピングサービス(CSS、別名VSS=垂直型ショッピングサービス)である。EEAの検索結果には「Comparison Sites」とラベルされたユニットが表示され、複数の比較サービスがそれぞれ展開可能な行として並び、うち1社がデフォルトで展開された状態になる。

そして重要な点。有料のShopping広告は一切影響を受けていない。

Google自身はこの一連のEEA向け変更を、29年の歴史で最大の検索品質の低下と表現している。

「アルゴリズムで負けた」のではない

EC担当者にとってこの出来事が特異なのは、失われ方だ。

コアアップデートで順位を落としたなら、コンテンツを直し、構造化データを整え、被リンクを取り、半年後にもう一度勝負できる。だが枠そのものが規制によって撤去された場合、SEOの努力で取り戻せるものは何もない。残された経路は、CSS経由で出す(CSSパートナーに手数料を払う)か、有料のShopping広告を買うかの二択になった。

無料枠が担っていた売上は、そのまま有料の予算要求に変換される。これが今回の構造変化の本質だと筆者は見る。本誌が9月18日に報じた米国のアドテク是正命令が分割を回避して行動是正に落ち着いたのに対し、欧州のDMAは表示枠そのものを消した。規制手法としてはDMAの方がはるかに直接的で、事業者に与える影響も速い。

DMAの立法目的はGoogleの自社優遇を是正し比較サービスに公平な機会を与えることだったが、直接的な受益者はCSS事業者であり、直接的な負担者は無料流入に依存していたEC事業者である。

日本には、すでに同じ条文がある

日本にDMAはない。だが「検索結果における自社優遇の禁止」という条文は、すでに存在する。

スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律(令和6年法律第58号、通称スマホソフトウェア競争促進法)が2025年12月に全面施行された。同法が対象とする「特定ソフトウェア」は、基本動作ソフトウェア、アプリストア、ブラウザ、そして検索エンジンの4つ。検索結果の表示において自社の商品・役務を競争上優位にすることは、禁止行為として定められている。

さらに遡れば、公正取引委員会は2021年2月にデジタル広告分野の実態調査最終報告を公表し、プラットフォーム事業者が広告仲介事業者と掲載媒体の役割を兼ねる構造が独占禁止法違反のおそれを生むと指摘している。

つまり、日本にも法的な道具立ては揃っている。

ただし、欧州と同じことが日本で起きるとは限らない

ここは慎重に見るべきだ。DMAはゲートキーパー指定に紐づく強い事前規制で、特定の表示形式の撤去まで踏み込める。日本のスマホ新法は自社優遇という「行為」を禁じる規制であり、枠の撤去を命じる構成にはなっていない。規制の型が違う。

加えて、Google自身がこの変更を「検索品質の低下」と位置づけている以上、EEA域外に自発的に展開する動機はない。日本のEC事業者が明日から無料商品リスティングを失う、という話ではない。

それでも注視する理由はある。欧州で実装された表示パターン(Comparison Sitesユニット)は、Googleにとって「規制対応の既製品」になった。日本で同種の要請が出た場合、ゼロから設計する必要はもうない。

EC担当者が今週やるべき3つのこと

  1. 無料商品リスティング由来のセッションと売上を、分離して把握できているか確認する。 Merchant Centerの無料商品掲載とShopping広告を合算した「Google経由」でしか見えていないなら、枠が消えたときに何が起きるかがわからない。分けて見えていない指標は、失っても気づけない。

  2. 欧州向けに販売しているなら、CSS経由の出稿を検討対象に入れる。 空いた枠はそこに流れている。日本からEEA向けに越境ECを展開している事業者は、今月の流入減の原因がこれである可能性が高い。

  3. フィード仕様の変更通知が、実際の担当者に届いているか確認する。 同時期にGoogleはeコマースフィードでアダルト商品のラベル付けを必須化し、Merchant Center APIが商品レビューに対応した。フィード周りの仕様変更が短期間に連続している。フィード管理を外部ベンダーに委託している場合、通知の宛先が退職者のメールアドレスのままになっていないか。

「無料だから、なくなっても損はしない」——この発想が一番危うい。無料枠は多くの場合、売上の数割を静かに担う「気づかれない流入源」になっている。欧州のEC事業者は、それを2日で失った。失ってから測り始めても、比較対象がない。

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