2026年10月12日(月)
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「審査は通っているのに出ない」——Google広告の制限付き配信が全プロダクトへ、2028年まで段階展開

広告は承認済み、アカウントも停止されていない。それでもインプレッションが半減する。Googleの「制限付き配信(Limited ad serving)」は2023年に検索とYouTubeで始まり、2026年6月に検索での適用シナリオが拡大、8月の改定で対象が全Google広告に広がった。公式ヘルプは「実装は段階的に進み、2028年までに完了する」と明記している。米国の代理店が公開した実例では、正規販売代理店のアカウントが月80万から35万インプレッションに落ち、解除まで7か月かかった。判定材料は7項目が公開されているが、しきい値は非公開だ。

WebTech Journal 編集部

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「承認済み」と「配信されている」は、もう同じ意味ではない

広告は承認されている。アカウントも停止されていない。ポリシー違反の通知も来ていない。それなのに、ある朝からインプレッションが半分になる。

Googleの「制限付き配信(Limited ad serving)」は、そういう挙動をする仕組みだ。広告単位の不承認でも、アカウントの停止でもない。アカウント単位で「参加できるオークション」を絞る。技術的には入札資格があるオークションに、入れなくなる。

2023年に導入されたこの仕組みは、2026年6月の変更で検索での適用シナリオが拡大し、続く8月の改定で対象が「all Google Ads」に広がった。Googleは公式ヘルプにこう書いている——「実装は段階的に開始し、2028年までに完了する」。

裏を返せば、まだ自分のアカウントに来ていないだけ、という状態が2年以上続く。

判定材料は7つ公開されている。しきい値は公開されていない

公式ヘルプが挙げる「適格な広告主(qualified advertiser)」の判定要素は次の7つだ。

  • アカウントの属性
  • ユーザーの行動と報告
  • アカウントの成熟度(運用歴)
  • 広告フォーマットの利用状況
  • ポリシー遵守の履歴
  • 広告主の業種
  • 広告主確認(Advertiser Verification)のステータス

そして「適格な広告主であれば、このポリシーによってインプレッションが制限されることはない」と明記される。

注目すべきは2番目だ。Googleは「ユーザーからの報告を特に重視する」とし、「ユーザーが継続的かつ不釣り合いなほど、その広告主のコンテンツ・商品・行動が期待に沿わないと報告した場合、不適格とみなしてインプレッションを制限することがある」と書いている。つまり、広告の品質スコアでも入札単価でもなく、ユーザー側の申告が配信量を左右する経路が公式に存在する。

どれだけの報告で、どの程度絞られるのか。その数値は公開されていない。

月80万→35万、解除まで7か月という実例

Search Engine Landが9月4日に公開した実務者の記録は、この仕組みの実害を具体的に示している。

複数の大手ブランドの正規販売代理店であるクライアントは、ブランド側と書面契約を結び、「正規販売店」のロゴとブランド名をランディングページ(一部は広告文)に使用していた。ある日、予告なくGoogleから制限の通知が届く。

月平均80万だったインプレッションは35万に落ちた。しかもその35万は、入札を大幅に引き上げてCPCとCPAの悪化を受け入れた結果、かろうじて確保できた数字だという。契約書を添えた異議申し立ては即座に却下された。Googleの担当チームと数え切れない通話とメールを重ね、ディレクター級までエスカレーションして、ようやく解除されるまで7か月。解除後、インプレッションは即座に元の水準へ戻った。

引っかかりやすい業種として挙げられているのは、アフィリエイト、保険、消費者向けサービス(通信・電話等)、第三者リード獲得、旅行、フランチャイズ。いずれも「他社のブランド名をキーワードにする」構造を抱えやすい業態だ。競合指名の運用でフラグが立った例もあるという。

日本のアカウントで、今週確認できること

Googleが公式に推奨する対策と、実務者の観察はいくつかの点で食い違っている。切り分けて読む価値がある。

公式の推奨として確度が高いもの

  • 広告主確認(Advertiser Verification)を先に済ませる。判定7要素に明記されており、異議申し立ての際にも要求される
  • 不承認アセットをゼロに保つ。なお、Googleは停止中のアセットもクロールする。何年も配信していない広告が突然不承認になることがある
  • 自社のロゴ・社名をランディングページのヘッダーとフッターに使う。提携先のロゴをサイトロゴとして使わない。提携先の名称をドメイン名に含めない
  • 広告文に自社ブランド名を入れる。他社ブランドを避けるだけでは足りず、「汎用的(generic)」と判断されると制限対象になり得る

Googleは推奨するが、効果が確認されていないもの

  • 見出し1へのドメイン名のピン留め。Googleのベストプラクティスにも通知メールにも書かれ、サポート担当者もこれを案内する。だが前掲記事の筆者は「効いた例を見たことがなく、すでに制限で苦しんでいるアカウントではCTRを下げるのを見た」と書いている。試すなら、CTRの変化を観測しながらにすべきだ

そして、制限されているかどうかを確実に知る方法は、アカウント内の通知を消してしまった場合、Googleサポートに問い合わせる以外にない。メール通知は保証されていない。

「品質」ではなく「身元」で配信量が決まる方向

この変更を単体で見ると、詐欺広告やブランド詐称への対策強化に見える。実際、Googleの説明もそう読める。

だが本誌が8月31日に報じたP-MAXのチャネル優先度スライダーと並べると、別の輪郭が浮かぶ。Googleは運用者に「どこにいくら出すか」の細かい制御を返さない一方で、「誰が出しているか」の証明を要求する方向に、プラットフォームの設計を寄せている。入札と配信面はAIに委ね、その代わりアカウントの適格性を人間側の責任として切り出す構図だ。

この構図が正しいとすれば、代理店・比較サイト・保険代理店・フランチャイズ本部と加盟店といった、「自社ブランド以外を扱う」ビジネスモデルほど、運用テクニックではなく事業体としての可視性がパフォーマンスを決めることになる。

もっとも、この読みには反論もある。制限付き配信の適用は依然として段階的で、大多数のアカウントは今日も影響を受けていない。予告どおり2028年に完了する保証もない。過剰に身構えるよりは、広告主確認と不承認アセットの棚卸しという、どちらにせよ損のない2点を先に片付けておくのが現実的だろう。

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