静かに、しかし不可逆な変更
派手な機能追加の陰で、見落とすと痛い変更が動き出した。Googleのデータ保持ポリシーによれば、2026年6月1日以降、Google広告が収集する時間・日・週単位(1カ月未満の粒度)のレポートデータは37カ月間のみ参照可能になる。月次・四半期・年次のデータは11年間保持されるが、リーチ&フリークエンシー系の指標(ユニークユーザー数、平均接触頻度、7日・30日のフリークエンシー変種、1+〜10+の頻度分布など)はわずか3年間に短縮される。保持期間を過ぎたデータは、管理画面からもAPIからも取得できなくなる。
Search Engine Landの報道とPPC.landの解説は、この変更がデータウェアハウスへの退避を促す圧力になると指摘する。重要なのは、BigQuery Data Transfer ServiceのGoogle広告・Search Ads 360コネクタも、現在から37カ月より前の日付のバックフィル実行ではデータを取り込まなくなる点だ。「あとでBigQueryに入れればいい」という後回しが、そもそも成立しなくなる。
なぜこれが効くのか
長期のトレンド分析、季節性のベンチマーク、メディアミックスモデリング(MMM)は、数年分の粒度の細かい履歴に依存する。週次の細かい変動を3年・4年と遡れることが、施策の因果を切り分ける土台だった。その土台の一部が、6月以降は静かに失われていく。これは新機能ではなく「これまで当たり前にあったもの」が消える変更であり、気づいた時には取り返せない、と筆者は警戒している。
計測領域では別の不安材料も重なる。6月のWebmaster Reportによれば、Search Consoleでは50週分のデータに復旧不能なバグが生じ、リンクレポートの不具合やDiscoverレポートの問題も報告されている。計測基盤が各所で揺れているなかでの保持期間短縮であり、「プラットフォーム任せの計測」のリスクが一段と高まっている。
計測担当の宿題
結論から言えば、やるべきことは明快だ。第一に、6月1日を待たず、参照したい粒度の履歴データをBigQueryなど自社管理の保管先へエクスポートする。とりわけ37カ月より前の古いデータは、コネクタのバックフィルでは取れなくなるため、手作業ででも先に退避させる優先度が高い。第二に、今後のデータを継続的に自社へ蓄積する自動連携を組み、プラットフォームの保持期間に成果分析が左右されない構えをつくる。第三に、MMMやベンチマークで長期履歴に依存している分析を棚卸しし、必要な粒度と期間を定義してから退避範囲を決める。闇雲に全部を抱え込むのではなく、「自社の意思決定に効く粒度」を見極めることが、保管コストと分析価値の両立につながる。