「順位が急落」の報告を出す前に
2026年9月下旬から10月にかけて、クライアントに順位急落を報告しようとした担当者は少なくないはずだ。順位計測会社Nozzleが10月10日に公開した調査は、その一部が実際の変動ではなく計測側の見え方の問題だった可能性を示している。
Nozzleの発表では、2026年9月13日から10月9日に収集したSERPのうち判定対象の1,780万件で、8.0%が「汚染」状態だった。汚染とは、キーワードごとの通常の上位サイトの半分未満しか現れないSERPを指す。基準期間(8月20日〜9月9日)は0.17%だったので、約47倍だ。9月27〜29日には全体の約4分の1に達し、10月以降も1日あたり約5〜11%で推移した。顧客サイトが通常上位に来るキーワードでは、汚染SERPの58.6%で上位10位から外れていた(通常は2.7%)。
見た目は正常、中身だけ違う
厄介なのは、ページ自体はエラーもCAPTCHAもなく完全に見える点だ。Nozzleによれば、汚染の80%は1回限りで、通常サイトは中央値2日で戻る。ただ、1日だけの比較をすると「前日も汚染されていた」ケースを取り逃がす。構成にも偏りがあり、RedditやFacebookなどSNS・フォーラムが増え、AI Overviewの表示率は54.2%から34.9%へ低下した。
Nozzleは原因を、GoogleによるAIスクレイピング対策の副作用と推測している。ただしこれは同社の解釈で、Googleのコメントは確認できず、収集経路によっても1〜7%から9〜30%まで幅がある。一社のサンプルとして読むのが妥当だ。
同じ月に起きた、もう一つの「計測の穴」
Search Engine Journalのまとめは、これを今月の計測トラブルの連続として整理している。本誌が報じたChatGPT流入「4割減」の正体もその一つだ。Adobeのセドリック・ヒュースラー氏はLinkedInで、OpenAIが10月14日に既知のバグを認め、10月15日に修正を展開し始めたと投稿した(影響期間は10月8〜15日との見立て)。ただしOpenAIのリリースノートには記載がなく、確認はまだ二次情報にとどまる。
Bing Webmaster Toolsに加わったTopics Portfolioも、Microsoft自身が「方向性として扱う」よう求める範囲表示だ。つまりAI関連の指標は、現状どれも精密な絶対値ではない。
筆者の見立て:必要なのは「疑う手順」の標準化
考察になるが、問題は個別ツールの精度より、報告フローに「疑う工程」がないことだと考える。一方で、過剰反応への注意も必要だ。今回のNozzleのデータだけで、すべての順位計測を信用できないと結論づけるのは早い。
実務では、次の3つを習慣にしたい。
- 順位は単日で判断しない:数週間分の通常上位サイトと比較し、数日以内に戻る変動は報告から切り分ける。
- Search Consoleと必ず突き合わせる:同じクエリ・ページの表示回数とクリックが維持されていれば、サイト側の変化は小さい可能性が高い。
- AI流入は期間を注記する:ChatGPT由来のセッションはGA4の「Direct」も併せて見て、タグ欠落期間をレポートに明記する。
日本でもAI検索経由の流入をKPIに入れる企業が増えるほど、こうした注記の有無が報告の信頼性を分ける。