2日間で、国内の効果測定に関する発表が3件続いた。手法はバラバラだが、目指す先は同じ。Cookieや個人IDをつなぎ合わせなくても、広告の成果を語れる状態だ。
事実:3社の発表内容
楽天(10月1日)は、運用型ディスプレイ広告「RMP - Unified Ads」に、楽天ポイントカード導入企業を対象としたオフライン購買転換率の計測機能を追加した。広告に接触したユーザーが実店舗で楽天ポイントカードを使って決済したデータを、日次で管理画面に可視化する。従来はキャンペーン終了後のレポートを待つ必要があった。対象は導入企業のみで、データ反映には一部タイムラグがある。
NetflixとAJA(9月30日)は、データクリーンルーム(DCR)を使ったコンバージョン計測ソリューションのβ版を共同開発した。データを暗号化したまま照合し、Netflixの広告視聴後のサイト訪問やアプリインストールを可視化する。AJAはサイバーエージェントの子会社だ。正式提供時期は記事に記載がない。
ビデオリサーチ(10月1日)は、テレビ視聴率パネルをもとにAIで生成した合成データと、動画配信の利用データなどを統合する「バーチャルパネル」化技術を発表した。ID連携を不要としつつ、テレビCMとデジタル広告の接触状況を仮想的にシングルソースで分析できるという。第1弾の実証実験は完了済みで、特許出願中だ。
3件とも企業発表を報じたもので、効果の改善幅など検証可能な数値は公表されていない。
考察:3つの手法は「何を犠牲にしているか」が違う
ここからは筆者の分析だ。
- 楽天型(自社の閉じたデータ):精度は高いが、見えるのは楽天ポイントカードの経済圏の内側だけ
- DCR型(企業同士の暗号化照合):個人を特定せずに照合できる反面、組むパートナーごとに個別の設定が必要になり、横断比較が難しい
- バーチャルパネル型(合成データ):媒体横断で俯瞰できるが、実測ではなく統計的な推定であり、個別施策の因果までは語りにくい
つまりID不要の測定は一つの正解に収束するのではなく、精度・範囲・手間のトレードオフの異なる複数の道具に分かれていく可能性がある。本誌が先に報じたGeminiのリンクにUTMが付き始めた件も、ID不要・パラメータ頼みの計測が現場で重要になっていることを示す一例だ。
反対に、懐疑的な見方もできる。3件はいずれもベンダーの発表で、第三者による検証結果はない。合成データの推定誤差や、DCR計測と広告主側計測の差異は、実際に使ってみて初めて分かる。
実務者の次の一手
- 自社の計測で「ID前提の指標」がどれだけ占めるかを棚卸しする
- 楽天ポイントカードなど、自社が導入している会員基盤の計測機能を確認する
- CTV・動画広告を使う場合、プラットフォームのDCR対応状況をヒアリングする
- 各社の数値は実測か推定かを明記して社内レポートに載せる。混ぜると意思決定を誤る
新しい測定手法の価値は、発表時点では決まらない。比較できる形で数字が出てきたときに、初めて評価できる。