Instagramが、最長90分の横型動画を投稿できる新形式「Features」のテストを始めた。さらにBusiness Insiderは、一部のYouTuberに最大50万ドルのオファーが出ていると報じた。短尺動画で伸びてきたInstagramが、いま「長尺」と「テレビ画面」を取りに来ている。
事実:何が発表され、何が報じられたか
The Next Webの報道によれば、Instagramは10月26日、Adam MosseriとTessa Lyonsが最長90分の横型動画「Features」のテストを告知した。対象は米国の少数のクリエイターと一部のブラジルのクリエイターで、ポッドキャスターやコメディアンなどが参加する。Featuresはメインフィードとエクスプローラに表示され、2025年12月に米国のAmazon Fire TVで始まったTVアプリ(その後Google TVとSamsung TVに拡大)で優先表示される。Apple TV対応は近日予定されている。収益化については、現時点でFeaturesの広告収益をクリエイターと分配する予定はない。
その3日後、Business Insiderが10月29日付で、Instagramが選んだYouTubeクリエイターに資金提供のオファーを出していると報じた。Dexertoの転載記事やNet Influencerの記事によれば、オファーは5万ドルからで、数名には6桁(10万ドル以上)が提示され、最高額は50万ドルとされる。金額が動画1本あたりか月額か一括かは不明だ。契約は非独占で、報道では主な条件が「YouTubeに投稿する同じ日にFeaturesにも投稿すること」だという。Metaは直接の資金提供を認めたが、詳細は非公開としている。
考察:狙いは「視聴時間」より「テレビの居間」
ここからは筆者の見立てだ。ポイントは3つある。
第一に、Instagramが「移籍」ではなく「同日の並行公開」を買っている点だ。YouTubeのクリエイターを引き抜くのではなく、コンテンツの二次流通先としてInstagramを確保する設計になっている。これは、既存のクリエイターの負担が小さく、Instagram側も在庫を早く積み上げられる。
第二に、TVアプリでの優先表示だ。90分の横型動画は、スマホのフィードよりテレビ画面と相性が良い。YouTubeがリビングの視聴で強い領域に、Instagramは短尺のReelsを入口にして入り込む構えだ。ReelsからFeaturesの完全版へリンクする機能のテストも報じられている。
第三に、収益分配の不在という弱点だ。YouTubeのパートナープログラムは広告収益の55%をクリエイターに支払うと記事は比較している。Featuresにはそうした長期の仕組みがなく、個別契約でエコシステムを立ち上げている段階だ。Mosseriは既存の成果報酬型の支払いを「ROI negative」と評したと報じられており、当面は個別契約が中心になる可能性が高い。
懐疑的な見方も必要だ。Instagramは2018年に長尺動画アプリ「IGTV」を始め、2022年に終了している。今回も、資金提供で最初の供給を作れても、視聴者が定着するかは別問題だ。Featuresの視聴データや広告の仕様はまだ公表されていない。
日本のマーケターはどう備えるか
日本での提供については、今回確認できた範囲では未定で、テストは米国とブラジルに限られる。過去のInstagramの新機能の傾向から、日本への展開は早くても数か月先と筆者は見るが、これは推測だ。それでも、今のうちにできることはある。
- 長尺の資産を棚卸しする:ウェビナー、対談、イベント録画など、すでに持っている30分以上の動画があれば、再編集で転用できる。
- 短尺は「入口」と割り切る:Reelsから長尺へ誘導する設計は、ブランドの動画施策にも応用できる。
- 計測を決めておく:Featuresの広告枠や計測の仕様は未発表だ。提供開始時に、視聴完了率と指名検索への影響を見る準備をしておく。
- YouTubeとの二重投稿のルールを考える:同日公開の運用は、ライセンスや出演者との契約に影響する。
Instagramの狙いが「文化的に最も関連性の高いプラットフォーム」になることだとするMosseriの発言(The Next Web報道)は、裏返せば、現時点でそうではないという認識でもある。Featuresは、その差を埋めるための大きな賭けだ。