PageSpeed Insightsのレポートに、もうすぐ見慣れない採点項目が1つ加わる。AIエージェントがそのサイトの「道具」を見つけられるかを確認する監査だ。ところがこの監査は、仕様の最新版に従って実装したサイトを見つけられない。新しいスコアがクライアント報告に載る前に、何を測っていて何を測っていないのかを整理しておきたい。
Lighthouse 13.5で加わった「ARD」監査
Googleは9月18日、Lighthouse v13.5.0を公開した。新しい監査は「ard-schema」の1つだけ。Chrome 156のDevToolsに載り、PageSpeed Insightsにも2週間以内に反映される見込みだという。
ARD(Agentic Resource Discovery)は、組織が提供するMCPサーバー、A2Aエージェント、APIなどの「呼び出せる機能」を、AIエージェントが探し出せるようにするための仕様だ。Googleは6月17日に開発者ブログで発表した。仕組みは2つの部品でできている。
- カタログ:自社ドメインのwell-knownパスに置くJSONファイル。提供している機能の一覧を書く
- レジストリ:カタログを巡回してインデックス化し、エージェントからの問い合わせに答える。いわば「エージェント向けの検索エンジン」
コンテンツを要約してAIに渡すllms.txtとは役割が違う。ARDが案内するのは、読むものではなく「呼び出すもの」だ。
「Agentic Browsing」カテゴリの中身
ARD監査が入るのは、Lighthouse 13.3で新設された「Agentic Browsing」カテゴリだ。DebugBearの解説によると、このカテゴリはアクセシビリティツリーが正しく組まれているか、レイアウトシフト、WebMCPの実装、llms.txtの書式を確認する。13.5ではllms.txt監査とARD監査が「Agent Discoverability」という見出しにまとめられた。
注意したいのは採点の仕方だ。Search Engine Journalによれば、Googleのドキュメントはこのカテゴリについて、エージェント向けWebの標準がまだ固まっていないことを理由に、0〜100のスコアではなく合格数の比率で示すとしている。カタログを置いていないサイトは「該当なし」と表示されるだけで、減点にはならない。DebugBearも、何も実装していないexample.comが満点になると指摘している。
仕様が先に進み、監査が取り残された
問題は、ARDの仕様がこの夏に変わったことだ。8月26日公開のv0.91で、カタログの置き場所は/.well-known/ai-catalog.jsonから/.well-known/ard.jsonに移った。仕様は、読み取る側はard.jsonを必ず取りに行くこととし、旧パスの確認は「任意」に格下げしている。
一方、Lighthouse 13.5が探すのは旧パスと旧リンク名だけだ。9月22日にGitHubへ投稿されたIssue #17251は、投稿者がローカルで再現した結果として次の2点を報告している。
ard.jsonだけを置いた、仕様どおりのサイトは「該当なし」と判定される- ARDの仕様上は有効なマニフェストでも、ルートに古い
collections配列が残っているとスコア0になる
投稿者によれば、Lighthouseが参照する仕様のバージョンは依存関係の更新の中で2回進んだが、監査のコードはそれに合わせて直されていなかった。本稿執筆時点でこのIssueに担当者は付いていない。
筆者の見方:スコアを追うより、自社に要るかを判断する
この件から読み取れるのは、「エージェント対応」を測る道具が、まだ対象の仕様より遅れて動いているという事実だ。仕様の著者にはGoogle、Microsoft、Hugging Faceの担当者が名を連ねている。それでも、Google自身のツールが最新仕様に追いついていない。
日本のWeb制作・運用の現場では、PageSpeed Insightsのスクリーンショットが提案書や月次報告の定番になっている。新カテゴリが表示され始めれば、「このAgentic Browsingの項目は何ですか」と聞かれる場面が増えるだろう。そのとき「合格にしておきます」と答えるのは、今の段階ではあまり意味がない。
もちろん反対の見方もある。Googleが公式ツールに組み込んだことで、ARDが事実上の標準に近づく可能性はある。早めに対応しておけば、レジストリに見つけてもらいやすくなるかもしれない。ただ、Search Engine Journalが指摘するとおり、リリースノートにはGoogle検索との関係が一切書かれていない。検索順位の要因と考える根拠はない。
実務での判断基準
- コンテンツ中心のメディアやコーポレートサイト:ARDは急いで入れなくてよい。呼び出せる機能を公開していないなら、カタログに書くことがない
- API、MCPサーバー、予約・在庫照会などの機能を持つSaaSやEC:導入を検討する価値はある。置くなら当面は
ard.jsonと旧ai-catalog.jsonの両方に置けば、仕様にも現行のLighthouseにも拾われる - クライアントへの報告:Agentic Browsingの結果は、合否よりも「該当なし」の理由を書く。スコアの上下で成果を語らない
本誌は8月のShopifyの記事で、WebMCPが「順位にも引用にも関与しない」ことを確認した。ARDも同じ位置づけにある。エージェント向けの窓口をどこに、どの仕様で開けるかは、スコアではなく自社の事業判断で決めるべき段階だ。
出典
- GitHub: Lighthouse Release v13.5.0
- GitHub Issue #17251: ard-schema not updated for ARD v0.91
- Google Developers Blog: Announcing the Agentic Resource Discovery specification
- Search Engine Journal: Google Lighthouse Adds Audit For AI Agent Resource Discovery
- DebugBear: Google Lighthouse Has A New Agentic Browsing Category