2026年10月12日(月)
AI・MarTech

LighthouseがAIエージェント向け「ARD」の採点を開始——ただし最新仕様どおりに実装すると「該当なし」になるねじれ

9月18日公開のLighthouse 13.5に、AIエージェントがサイトの機能(MCPやAPI)を見つけるための仕様「ARD」の監査が加わった。PageSpeed Insightsにも2週間以内に反映される見込みだ。ところが8月の仕様改定でカタログの置き場所がard.jsonに変わったのに、監査は旧パスしか見ていない。GitHubには、仕様どおりのサイトが「該当なし」、仕様上は有効なマニフェストが0点になるという報告も出ている。Agentic Browsingカテゴリの中身、Google検索との関係、自社に導入が必要かの判断基準を整理する。

WebTech Journal 編集部

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PageSpeed Insightsのレポートに、もうすぐ見慣れない採点項目が1つ加わる。AIエージェントがそのサイトの「道具」を見つけられるかを確認する監査だ。ところがこの監査は、仕様の最新版に従って実装したサイトを見つけられない。新しいスコアがクライアント報告に載る前に、何を測っていて何を測っていないのかを整理しておきたい。

Lighthouse 13.5で加わった「ARD」監査

Googleは9月18日、Lighthouse v13.5.0を公開した。新しい監査は「ard-schema」の1つだけ。Chrome 156のDevToolsに載り、PageSpeed Insightsにも2週間以内に反映される見込みだという。

ARD(Agentic Resource Discovery)は、組織が提供するMCPサーバー、A2Aエージェント、APIなどの「呼び出せる機能」を、AIエージェントが探し出せるようにするための仕様だ。Googleは6月17日に開発者ブログで発表した。仕組みは2つの部品でできている。

  • カタログ:自社ドメインのwell-knownパスに置くJSONファイル。提供している機能の一覧を書く
  • レジストリ:カタログを巡回してインデックス化し、エージェントからの問い合わせに答える。いわば「エージェント向けの検索エンジン」

コンテンツを要約してAIに渡すllms.txtとは役割が違う。ARDが案内するのは、読むものではなく「呼び出すもの」だ。

「Agentic Browsing」カテゴリの中身

ARD監査が入るのは、Lighthouse 13.3で新設された「Agentic Browsing」カテゴリだ。DebugBearの解説によると、このカテゴリはアクセシビリティツリーが正しく組まれているか、レイアウトシフト、WebMCPの実装、llms.txtの書式を確認する。13.5ではllms.txt監査とARD監査が「Agent Discoverability」という見出しにまとめられた。

注意したいのは採点の仕方だ。Search Engine Journalによれば、Googleのドキュメントはこのカテゴリについて、エージェント向けWebの標準がまだ固まっていないことを理由に、0〜100のスコアではなく合格数の比率で示すとしている。カタログを置いていないサイトは「該当なし」と表示されるだけで、減点にはならない。DebugBearも、何も実装していないexample.comが満点になると指摘している。

仕様が先に進み、監査が取り残された

問題は、ARDの仕様がこの夏に変わったことだ。8月26日公開のv0.91で、カタログの置き場所は/.well-known/ai-catalog.jsonから/.well-known/ard.jsonに移った。仕様は、読み取る側はard.jsonを必ず取りに行くこととし、旧パスの確認は「任意」に格下げしている。

一方、Lighthouse 13.5が探すのは旧パスと旧リンク名だけだ。9月22日にGitHubへ投稿されたIssue #17251は、投稿者がローカルで再現した結果として次の2点を報告している。

  • ard.jsonだけを置いた、仕様どおりのサイトは「該当なし」と判定される
  • ARDの仕様上は有効なマニフェストでも、ルートに古いcollections配列が残っているとスコア0になる

投稿者によれば、Lighthouseが参照する仕様のバージョンは依存関係の更新の中で2回進んだが、監査のコードはそれに合わせて直されていなかった。本稿執筆時点でこのIssueに担当者は付いていない。

筆者の見方:スコアを追うより、自社に要るかを判断する

この件から読み取れるのは、「エージェント対応」を測る道具が、まだ対象の仕様より遅れて動いているという事実だ。仕様の著者にはGoogle、Microsoft、Hugging Faceの担当者が名を連ねている。それでも、Google自身のツールが最新仕様に追いついていない。

日本のWeb制作・運用の現場では、PageSpeed Insightsのスクリーンショットが提案書や月次報告の定番になっている。新カテゴリが表示され始めれば、「このAgentic Browsingの項目は何ですか」と聞かれる場面が増えるだろう。そのとき「合格にしておきます」と答えるのは、今の段階ではあまり意味がない。

もちろん反対の見方もある。Googleが公式ツールに組み込んだことで、ARDが事実上の標準に近づく可能性はある。早めに対応しておけば、レジストリに見つけてもらいやすくなるかもしれない。ただ、Search Engine Journalが指摘するとおり、リリースノートにはGoogle検索との関係が一切書かれていない。検索順位の要因と考える根拠はない。

実務での判断基準

  1. コンテンツ中心のメディアやコーポレートサイト:ARDは急いで入れなくてよい。呼び出せる機能を公開していないなら、カタログに書くことがない
  2. API、MCPサーバー、予約・在庫照会などの機能を持つSaaSやEC:導入を検討する価値はある。置くなら当面はard.jsonと旧ai-catalog.jsonの両方に置けば、仕様にも現行のLighthouseにも拾われる
  3. クライアントへの報告:Agentic Browsingの結果は、合否よりも「該当なし」の理由を書く。スコアの上下で成果を語らない

本誌は8月のShopifyの記事で、WebMCPが「順位にも引用にも関与しない」ことを確認した。ARDも同じ位置づけにある。エージェント向けの窓口をどこに、どの仕様で開けるかは、スコアではなく自社の事業判断で決めるべき段階だ。

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