2026年9月2日(水)
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LINEヤフーが9月1日に出した2つの発表——「自分で送る」は高くなり、「AIが選ぶ面」は買えるようになった

10月1日からLINE公式アカウントの追加メッセージが20万通まで1通3円・超過分2.5円の新体系になる。同じ9月1日、LINEヤフーはAIエージェント「Agent i」への広告配信拡大と課金開始を発表した。公式の試算例で突き合わせると、月20万通のアカウントは55万円から60万円へ。オウンドのプッシュ配信が確実に高くなる一方、代わりに現れた面は広告主が指名できない。10月までに手を打つべき4点をまとめる。

WebTech Journal 編集部

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月に20万通を配信しているLINE公式アカウントの追加メッセージ費用は、10月1日から55万円から60万円になる。約9%の上昇である。この数字は推計ではなく、LINEヤフー自身が公開している現行の試算例と新料金表を突き合わせれば出る。

同じ9月1日、LINEヤフーはもう一つ発表をしている。AIエージェント「Agent i」で、AIとの対話の文脈に応じた広告配信を拡大し、広告主向けの課金を開始した、という内容だ。

2本のリリースは無関係に見える。だが並べると、日本のデジタルマーケティングの重心がどこへ動こうとしているかが、かなりはっきり見える。

事実1:追加メッセージの「配信するほど安くなる」が終わる

新料金はシンプルだ。月20万通までは1通3円、20万通を超えた分は1通2.5円(いずれも税別)。公式のユースケースでは、20万通で60万円、50万通で135万円、300万通で760万円、1000万通で2510万円となる。

現行はこれと構造が違う。LINEヤフーの料金ページには「配信すればするほどお得な単価」と明記され、実際の計算例として20万通配信=(5万通×3円)+(5万通×2.8円)+(10万通×2.6円)=55万円が示されている。段階的に単価が下がる逓減型である。

つまり10月の改定は、逓減の階段を撤去して2段階に均す変更だ。20万通ちょうどの地点で55万円→60万円。そして逓減が続いていた大量配信帯では、新体系の下限が2.5円で止まる以上、現行の実効単価が2.5円を下回っていた事業者ほど上げ幅は大きくなる。値上げの正確な倍率は各社の配信規模次第だが、方向は一つしかない。

上限設定にも変更が入る。上限引き上げ申請が承認された場合の最大値は359万通となり、現在359万通を超える設定を使っているアカウントは10月に引き下げられる。加えてLINEヤフーは「追加メッセージ数の上限目安を設定する機能も10月以降は新料金で換算するため、同じ通数設定でも利用料金の上限額が変更前より高くなる可能性がある」と注意喚起している。通数で上限を切っているつもりが、金額の上限は勝手に上がるということだ。適用は日本国内のみ。

事実2:Agent iの面は買えるが、指名できない

もう一方の発表。Agent iに配信される「検索連動型ショッピング広告」は、8月31日から一部ユーザー限定だった配信を拡大し、広告主向け課金を開始した。「ディスプレイ広告(運用型)」は現在も一部ユーザー対象で、課金自体は7月23日から始まっている。

ここに一文がある。「広告主が『Agent i』を配信先として個別に指定することはできません」。出稿条件を満たしていれば広告主は限定されないが、逆に言えばAgent iだけを狙うことも、Agent iを外すこともできない。

交差して見えるもの

ここからは筆者の見立てである。

同じ日に、自分でコントロールできるチャネル(オウンドのプッシュ配信)の限界費用が上がり、コントロールできないチャネル(AI文脈連動の広告面)が課金対象として開いた。これは偶然の並びだとしても、事業者にとっての意味は同じだ。「友だちに一斉配信して売る」という日本特有の勝ちパターンのコスト構造が変わり、その隣に「AIが文脈で選んだときだけ出る」面が置かれた。

そしてこの「面を指定できない」という設計は、いま世界中の広告プラットフォームが同じ方向に進んでいる。本誌が報じたP-MAXのチャネル優先度スライダーは制御ではなく重み付けを返すものだったし、Metaは配置除外オプションそのものを撤廃した。Microsoftも「AI Max」で新規キャンペーン既定オンを選んだ。LINEヤフーの実装は、この潮流の日本版として素直すぎるほど素直である。

ただし一つ違いがある。GoogleやMetaが奪っているのは「広告の配信面の選択権」だが、LINEヤフーの場合、値上げされる側は広告ではなくオウンドチャネルだ。自社で持っている友だちリストへの到達コストが上がり、代わりにプラットフォームの判断に委ねる経路が増える——この非対称のほうが、実は効いてくると考える。

反論も置く

楽観的な読み方もできる。追加メッセージの逓減単価は、そもそも「大量に一斉配信するほど得」というインセンティブを作っていた。一斉配信のコストが上がることは、セグメント配信への移行を促す圧力として働く。LINEヤフー自身、改定の背景として「ユーザーひとりひとりの興味や関心に合ったメッセージ」への機能強化を挙げている。実際、配信数を絞って開封率とCVRが上がった、という結果に着地する事業者は出るだろう。

Agent i側も、指名できないことは必ずしもマイナスではない。検索連動型ショッピング広告とディスプレイ広告(運用型)に既に出稿していれば、追加の作業なしに新しい接点が増える。テスト配信で「ユーザーの情報探索に寄与する結果が確認できた」という同社の説明が正しければ、対話の文脈に沿った出面は既存のバナー面より質が高い可能性がある。

10月までにやること

  1. 直近6か月の月間配信通数を実測で洗い出し、新旧料金で両方計算する。 「だいたい何十万通」ではなく実測値で。20万通の前後にいるアカウントは、影響が読みやすい。

  2. 上限目安設定を必ず開き直す。 通数ベースで設定している場合、金額の上限が意図せず上がる。359万通超の設定をしているアカウントは10月に強制的に引き下げられるので、事前に運用を組み替える。

  3. 一斉配信の何割をセグメント配信に振り替えられるか、10月前に試す。 値上げ後に慌てて絞ると、絞り方の巧拙を検証する余裕がない。9月中に配信数を意図的に落とした週を作り、売上への影響を測っておく。

  4. Agent i経由の流入を「見えない前提」で計測設計する。 広告主側から配信先を指定できない以上、レポート上でAgent i分を切り分けられる保証はない。指名検索やサイト直接流入の変化を、この時期の観測点として先に押さえておく。

10月1日まで1か月を切っている。数字の棚卸しは今週やってしまうのが早い。

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