「10月30日から、AIが勝手に直した広告の責任は広告主が負う」。そう読める条項を含むMetaの新規約は、いったん11月20日へ延期された。ただし、条文はほぼそのままだ。
何が決まっていて、何が延期されたのか
Metaの改定版Commercial TermsとSelf-Serve Ad Termsは当初10月30日の施行予定だった。Reuters(10月23日)の報道によると、Metaは施行を11月20日に延期した。理由は、コンテンツの利用権をめぐる出版社・広告主の懸念とEU・英国当局への申立てだ。Metaは「パートナーへの説明の時間を確保する」と述べ、無制限の権利を得るとの見方は否定している。
一方、PPC Landの検証では、削除されたのは学習(train)に触れた一文などごく一部で、AI機能の責任条項とクロール条項は残っている。延期は現時点で声明ベースの動きであり、条文の修正までは確認できていない。
「AI Features」条項の核心
Adweekが報じた新条項は、Metaが生成・変更した内容について広告主が「solely responsible」(単独で責任を負う)とし、AI機能が誤りを含み得ることも認めている。従来は広告主がAIツールを選んで使った場合に限られていたが、新条項ではMeta側で有効化された機能も含むと読まれている。署名は不要で、施行後の継続利用が同意とみなされる。
現場ではすでに摩擦が出ている。Adweekによれば、書店のBookshop.orgは人が作った広告にAI生成のイラストが加えられ、AI広告機能を全停止した。代理店Exverusは、有効化していない広告にもサイトリンク追加、コピー翻訳、画像・カルーセル生成が入ったとして、配信中の広告を取り下げた。Metaは「既存の生成AI規約を本体規約に統合する整理」と説明し、Advantage+の個別機能は広告マネージャでオフにできるとしている。ただし、有効化していない機能の責任をどう扱うかには直接答えていない。
規約だけでなく、10月28日の「商品閲覧」にも注意
PPC Landによれば、既存のFacebook・Instagram広告に商品閲覧機能を加える変更は、オプトアウトしない限り10月28日にオンになるとされ、延期は報じられていない。クロール条項も論点だ。関連サイトのクロールやテスト用認証情報の作成を認める内容で、robots.txtを尊重する約束はないと報じられている。本誌が先に整理した通り、robots.txtは「入口の札」にすぎず、拒否の意思表示が効く範囲は限られる。
筆者の見立て:問題は規約より「見えない変更」
筆者はここに構造的な問題を見る。広告主が責任を負うなら、何がいつ変更されたかを把握できなければ管理のしようがない。AdweekでExverusが指摘したように、強化オプションは折りたたみメニューに隠れ、個別にチェックを外さない限り適用されるという。責任だけが移り、可視性が追いつかない状態だ。他方で、Meta側には「規約はAI機能の統合整理にすぎない」という説明もあり、実際の運用がどうなるかは11月20日以降に見えてくる。
なお、日本のアカウントへの適用日や条文は、今回確認できた報道では触れられていない。Metaが10月8日にTikTok関連広告を日本でも禁止した件と同様、日本の運用者は自社アカウントに表示される規約のバージョンと日付を直接確認すべきだ。
年末商戦前に運用者がやっておくこと
- 広告マネージャで全キャンペーンのAdvantage+関連の自動強化を棚卸しし、不要なものを個別にオフにする。
- 配信中クリエイティブを定期的に実画面で確認し、翻訳・画像生成・サイトリンクの自動追加がないか見る。
- ブランドガイドラインに「AI改変を許容する範囲」を明記し、代理店とも合意する。
- 規約確認の担当と期限を決める(11月20日の前に法務へ回付)。
- 商品閲覧のオン・オフを、ECの場合は遷移先と合わせて確認する。
Metaを使わないという選択は現実的でない広告主が大半だろう。だからこそ、同意するかどうかではなく、変更を検知して止められる体制を先に作ることが、実務上の防御線になる。