2026年9月21日(月)
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Pinterestが月800億件の「見る検索」を入札枠に変えた——ビジュアル検索広告と、「検索広告」という一語が壊れていく話

Pinterestが9月17日、検索結果とピン拡大表示に新設する「ビジュアル検索広告」を発表した。月間800億件超の検索の大半がビジュアル検索で、半数以上が購買意図を持つという。ChatGPTのSponsored Agents、GoogleのAI Mode広告と並べると、クエリの入力形式そのものが分岐し始めていることが見えてくる。日本での適性が高いカテゴリと低いカテゴリ、そして今から準備できる3点。

WebTech Journal 編集部

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この1週間で、検索広告の「器」が3つの別々の場所で壊れた。OpenAIは会話の中に広告エージェントを置き、GoogleはAI Modeに広告を流し、そしてPinterestは画像そのものをクエリにした入札枠を作った。テキストのクエリにテキストの広告を返す、という20年続いた形式が、同時多発的に分岐している。

Pinterestが発表したもの

Pinterestは2026年9月17日(現地時間)、年次広告主イベント「Pinterest Presents」で新しいパフォーマンス広告「Visual Search Ads(ビジュアル検索広告)」を発表した。

掲載面は2つ。Pinterest検索結果と、ピンの拡大表示である。広告主は入札によって画面最上部の掲載枠を獲得し、ユーザーが商品を絞り込んでいる段階から直接サイトへ誘導できる。キーワードの関連性と新しい広告フォーマットを組み合わせる設計だ。

Pinterestが根拠として示した数字はこうだ。ユーザーの月間検索は800億件超、その大半がビジュアル検索であり、半数以上が購買意図を持つ。

技術的な裏側には画像理解技術「Pinterest Intelligence」がある。画像、商品、好み、意図を処理し、そのシグナルを画像検索の文脈で広告主が使えるようにする。

提供形態は、AI搭載パフォーマンス広告スイート「Pinterest Performance+」への対応として、数週間以内にPinterest広告が展開されている全市場で対象広告主向けにベータ提供される予定。同時に、特定商品を優先配信できる「優先商品」機能と、セルフサービスのA/Bテストも追加される。

「発見はされるが買われない」問題への回答

Pinterestは長く、発見プラットフォームとしては評価されるがコンバージョンに弱い、と言われてきた。今回の発表は、その評価に対する同社なりの回答になっている。

購買意図が半数以上という主張が正しいなら、問題は意図の不足ではなかったことになる。不足していたのは、意図と決済のあいだの距離だ。最上部の入札枠は、その距離を縮めるための設計である。

そして本誌が9月17日に報じたChatGPT広告の「Sponsored Agents」と並べると、構造が見えてくる。OpenAIは会話の中で検討を完結させようとし、Pinterestは画像比較の中で検討を完結させようとしている。どちらも「クリックの前に意思決定が終わる」面に広告を置く点で共通する。GoogleのAI Mode広告も同じ系譜にある。

違うのは入力形式だ。会話、画像、テキスト。クエリの形が分岐し、それに応じて広告在庫の単位も分岐し始めた。「検索広告」という一語で括れる時代が終わりつつある。

ただし、この数字はPinterest自身のものだ

800億件超の検索、半数以上が購買意図——これは同社が自社の広告在庫を売る文脈で発表した数字であり、独立した検証はない。プラットフォームが示す「購買意図」の定義は、一般に広めに取られる。保存(ピン)やクリックスルーを意図の代理指標にしている可能性は高く、実際の購入率とは別の話である。

もう一つの留保。最上部を入札制にすれば、オーガニックのピン流入は相対的に押し下げられる。Pinterest経由の自然流入に依存してきたブランドにとっては、Google検索で長年起きてきたことの縮小版が起きうる。無料で取れていた最上部が有料になる、という古典的な移行である。

日本のマーケターへの示唆

Pinterestは日本でも、情報流通プラットフォーム対処法の大規模事業者として総務省に指定される程度には使われている(指定はPinterest Europe Limited、2025年6月)。ただし国内のデジタル広告予算配分では、依然としてGoogle、Meta、LINEヤフーが中心であり、Pinterestは「試したことはあるが主力ではない」という位置づけの企業が多いはずだ。

ベータは「数週間以内に全市場」とされており、日本も含まれる見込みである。試す価値があるのはカテゴリで決まる。

適性が高い:インテリア、アパレル、コスメ、ブライダル、住宅、ヘアスタイル。画像を並べて比較し、言語化しにくい好みで決めるカテゴリ。ここではビジュアル検索そのものが購買プロセスの中心にある。

適性が低い:型番で選ぶ家電、日用品の詰め替え、BtoBのソフトウェア。画像で差がつかない商材では、ビジュアル検索の優位性は出にくい。テキスト検索の方が速い。

実務の次の一手

  1. Pinterest Analyticsで、自社商品のピンがどんな検索から辿られているかを確認する。 ビジュアル検索広告のキーワード設計は、ここから逆算するのが最短である。すでに画像で拾われている文脈が、そのまま入札対象になる。

  2. 商品画像を「検索対象」として作り直す。 背景の情報量、構図、複数商品の同時写り込み。これらは画像理解の精度に直結する。従来の「きれいな商品写真」と「機械に正しく解釈される商品写真」は同じではない。

  3. Pinterest Businessアカウントの担当者情報を更新する。 ベータ開放の案内は対象広告主に届く。宛先が古いままなら、機会そのものが来ない。

新しい広告面が開いたとき、最初に試した企業が有利になるのは、CPMが安いからではない。競合が少ない状態で、自社商材とその面の相性を先に知れるからだ。Pinterestのビジュアル検索広告は、相性がはっきり分かれるタイプの面である。合うかどうかを早く知ること自体に、予算を割く価値がある。

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