自社のSearch Consoleで、クエリ一覧に「yes」と表示されていたら、何かの計測バグを疑うだろう。だがそれはバグではない。ユーザーがGoogleのAI Modeとの会話の中で打った「相づち」が、あなたのサイトへの検索クエリとして記録されているのだ。
何が見つかったか:「yes」「yes go on」「yes, pricing」
発端は、SEO担当者のAnastasia Kourou氏がLinkedInで報告した奇妙なクエリ群だ。同氏のSearch Consoleの検索パフォーマンスレポートには「yes」「yes go on」「yes, pricing」といったクエリが表示・クリックを記録していた。これに対しGoogleのJohn Mueller氏が返信し、AI Modeに関する公式ヘルプへのリンクを提示した。
そのヘルプにはこうある。「ユーザーがAI Mode内でフォローアップの質問をした場合、それは実質的に新しいクエリの実行にあたる。新しい応答での表示回数・掲載順位・クリックのデータは、すべてこの新しいユーザークエリによるものとして集計される」(筆者訳)。つまり、AI Modeの会話でユーザーが「はい、続けて」「はい、料金は?」と返すたび、その発話がそのままクエリとして、応答内に引用されたサイトのレポートに記録される仕組みだ。8月4日には英国のSEO関係者Ross Tavendale氏も同様の事例をXで共有しており、複数のサイトで観測されている。
問題の本質:公式AIレポートには「ない」データが、通常レポートには「混ざって」いる
奇妙なのは、データの出方の非対称である。Search Consoleには生成AI(AI OverviewsとAI Mode)のパフォーマンスを示す専用レポートが用意されているが、そこにはクエリデータが含まれない。一方、通常の検索パフォーマンスレポートには、AI Mode由来のクエリが——「yes」のような会話の断片まで含めて——ラベルなしで混入している。
これは実務上、2つのことを意味する。第一に、クエリレポートの集計が静かに歪み始めている。会話由来のクエリは従来の検索語と性質がまったく異なるため、「平均CTR」や「平均掲載順位」をクエリ横断で眺める分析は、AI Mode流入が増えるほど解釈が難しくなる。第二に、逆説的だが、これはAI Mode流入を推定できる数少ない手がかりでもある。Googleが公式に開示しないクエリ情報が、事実上ここに漏れ出しているからだ。
実務:会話型クエリを「プロキシ指標」として抽出する
SEOコミュニティでは以前から、不自然に長い会話調のクエリをAI Overviews/AI Mode由来と推定する手法が使われてきた。今回の確認で、この推定の確度は一段上がったと言える。具体的には、検索パフォーマンスレポートのクエリフィルタ(正規表現)で、(1)「yes」「no」「ok」等の応答語で始まる短いクエリ、(2) 疑問詞を含む長文クエリ、を抽出し、その表示・クリックの推移を定点観測する方法が現実的だ。これをAI Mode接触のプロキシ(代理指標)として、通常クエリと分けてトレンドを見る。
ただし限界も明確にしておきたい。これはあくまで推定であり、音声検索やサジェスト経由の会話調クエリとの区別はつかない。Googleがクエリ単位のラベルを提供しない限り、正確な分離は不可能だ。プロキシはプロキシとして扱い、意思決定の唯一の根拠にはしないことが重要である。
「AI流入の計測」は業界全体の未解決問題
本誌は先日、IABがAI検索計測の指針"4つのP"を公開し、MicrosoftがClarityで指名/発見の分解を無料開放したことを報じた。業界が計測の共通言語を作ろうとする一方で、当のGoogleはAI Modeのクエリデータを公式レポートから外し続けている。プライバシーへの配慮という説明は成り立つが、AI面の掲載価値をパブリッシャーが独自に検証しにくい状態が結果的に維持されている、という見方もできるだろう(これは筆者の見立てである)。
確かなのは、検索クエリという概念そのものが「入力された検索語」から「会話の断片」へと拡張され始めたことだ。ダッシュボードの「yes」は、その最初の目に見える兆候である。四半期レポートのクエリ分析を作り直すなら、今がそのタイミングだ。