2026年9月20日(日)
データ分析

Googleが「サイトの広告の重さ」を公開データにした——CrUX新指標4つで、競合の広告実装まで丸見えになる

Chromeが9月15日、CrUXに広告関連の4指標を追加した。ビューポート内の広告数、面積比、通信量、CPU時間。CrUXは公開データなので、自社だけでなく競合サイトの値も見える。Core Web Vitalsではなく閾値もない実験的指標だが、Google自身が「広告主とその周辺サービスに有用」と述べている点に、この指標の行き先が示されている。

WebTech Journal 編集部

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感覚で語られてきたものに、数字がついた

広告が多すぎて読めないサイト、というものがある。誰もが見ればわかるが、数字で言うのは難しかった。

Chromeが9月15日、その数字を用意した。Chrome User Experience Report(CrUX)に、広告体験を記述する4つの指標が追加された。発表はChrome for Developersブログ、著者はAlex Cone氏。

追加されたのは以下の4つだ。

  • Ad Count:ビューポート内の広告数の平均
  • Ad Density:ビューポート面積に占める広告の割合の平均
  • Ad Weight(Network Usage):広告が消費したリソース量(バイト)
  • Ad Weight(CPU Usage):広告が消費したリソース量(ミリ秒)

実ユーザーの環境で計測される、いわゆるフィールドデータだ。既存のWeb Vitalsと同じディメンションで、同じ対象条件に従って集計される。

「Core Web Vitalsではない」と明記されている

ここは誤読されやすいので、正確に書く。

Googleはこの4指標について、Core Web Vitalsに着想を得てはいるがCore Web Vitalsの一部ではない、そして推奨目標値や閾値は設定していない、と明記している。4指標はいずれも experimental(実験的)というラベルが付いており、Googleはコミュニティからのフィードバックを受けて指標を変えていく可能性、追加指標を検討する可能性に言及している。

つまり現時点で、「Ad Densityが何%を超えたらランキングが下がる」という話ではない。そう書いている記事を見かけたら、まず出典を疑ったほうがいい。

利用は今日から開いている。CrUX APIとCrUX History APIで取得でき、サードパーティ広告を掲載しているサイトについてはCrUX Visで可視化して見られる。ただしデータの反映は始まったばかりで、Googleはカバレッジが今後1か月かけて増えていくと述べている。実際、公開直後には一部サイトで値が出ない状態も観測されている。

効き先はランキングではなく、おそらく在庫の値付けだ

では、閾値もランキング要因でもないこの指標は、何に効くのか。

Googleの説明文にヒントがある。Alex Cone氏は、これらの指標がウェブ広告主と、広告出稿を担うサービス事業者にとって特に有用だと期待していると書いている。そしてGoogleは、広告エコシステムの幅広い関係者から、これらの指標が「広告機会の価値を評価する方法」や「広告プロダクトの意思決定」を改善しうるというフィードバックを得た、とも述べている。

ここを普通に読めば、想定されている使われ方は明確だ。買い手側が、在庫の質を測る材料としてこの数字を使う。Ad Densityが極端に高い面、Ad Weight(CPU)が重い面は、同じインプレッションでも価値が違う——という判断が、公開データに基づいてできるようになる。

Core Web Vitalsのときと構造が似ている。あのときも、最初は計測できるようにしただけだった。今回Googleは明示的に「Core Web Vitalsではない」と言っているが、公開データとして測定が始まったという事実のほうが、ラベルより効いてくる可能性がある——というのが筆者の見立てだ。

CrUXは公開データである、という意味

もうひとつ、日本の実務で見落とされやすい点がある。

CrUXは自社サイトの分析ツールではない。公開データセットだ。つまり、競合サイトのAd Count、Ad Density、Ad Weightも、あなたが見られる。

これは2方向に効く。守りとしては、自社が競合より広告を積みすぎていないかが客観的にわかる。攻めとしては、コンテンツの質で勝てない相手が広告実装で重いなら、それは体験上の差別化ポイントとして提案材料になる。メディア運営、アフィリエイト、比較サイト——広告収益が主要KPIの事業では、この可視性の変化は小さくない。

ただし、過剰反応は不要だ

慎重に扱うべき理由も並べておく。

第一に、experimentalである。指標定義が変わる可能性をGoogle自身が明言している。今この数字を根拠に大きな意思決定をするのは早い。

第二に、閾値がない。何が良くて何が悪いかの基準がないまま、数字だけが公開されている状態だ。相対比較はできるが、絶対評価はできない。

第三に、データが揃っていない。カバレッジが上がるまで1か月程度かかるとされており、特に中小規模サイトでは値が出ない期間が続く。

したがって当面の正しい姿勢は、「数字を見て慌てて広告を減らす」ではなく、「自社と主要競合のベースラインを今のうちに記録しておく」だ。指標が育ったとき、比較できる過去データを持っているかどうかが差になる。

今週やること

  1. CrUX Vis(cruxvis.withgoogle.com)で自社ドメインを開き、4指標が表示されるか確認する
  2. 表示されるなら、主要競合3〜5社の値を取って並べる
  3. Ad Weight(CPU)が高い場合、どの広告タグが重いかをブラウザの開発者ツールで切り分ける——これは体感速度に直結するため、閾値の有無と関係なく改善価値がある
  4. CrUX History APIで時系列を取り、広告実装を変更したタイミングと突き合わせる

本誌は9月13日にGoogleアナリティクスに「ダッシュボード」が来たで、GA4側の可視化強化を扱った。計測できる範囲が広がるとき、先に動くのは常に「見方を決めた側」だ。広告の重さについても、基準が固まる前に自社の数字を持っているほうが強い。

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